ドクターヘリ運航開始から9ヵ月 福島県
<搬送で救命例も> ドクターヘリの基地は県立医大病院(福島市)にある。出動要請を受けてから数分で同病院の救急救命センターの医師、看護師らが乗り込み、飛び立てる体制が整っている。 ヘリは6人乗りで、最大2人の患者を搬送できる。機内には人工呼吸器や超音波診断装置を備え、現場での応急処置が可能だ。県立医大病院の田勢長一郎救命救急センター部長は「浜通り地方の交通事故で重体に陥った男性を医大に搬送したケースなど、ヘリがなければ救命できなかった例も多い」とヘリの威力を説く。 ただ、山間部が多い県内では計器飛行に頼る夜間運航は難しく、運航は原則午前8時半から午後5時までに限られる。出動範囲も原則、県内のみで「他県との連携が今後の課題」(県医療看護課)となっている。 最大の問題は出動要請の判断基準が定まっていないことだ。緊急度がほぼ同じ事例でも、出動を要請する消防もあれば、救急車での搬送でも救命できると判断して要請しない消防もある。県内の救急関係者らを集めて県が9月末に開いた運航調整委員会でも、消防関係者から「出動を要請するかどうか、ちゅうちょすることがあった」との報告があった。 田勢医師は「もう少し呼んでほしいというのが正直な気持ち。119番が入った時点で、少しでも危険な状態なら要請してほしい。結果として出動の必要がなかったケースが出ても構わない」と初動の重要性を訴える。 県医療看護課は「当初は消防本部ごとの温度差があったが、徐々に慣れてきた。まず1年間は様子を見たい」と話す。 <降雪の影響心配> 冬が近づき、降雪などが出動にどれだけ影響を及ぼすかも未知数だ。雨や濃霧で有視界飛行ができない日が多かった8月は出動回数がわずか9回にとどまっており、冬場はさらに出動可能日が減る恐れがある。 離着陸できる場所の確保も課題だ。現在は県内約400カ所を離着陸可能な場所として想定するが、県は今後、1000カ所程度に増やしたい考え。県医療看護課は「高速道路の車道への離着陸が可能になれば、事故などにも迅速に対応できるようになる」と期待している。
2008年11月06日木曜日
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