ドクターヘリ運航開始から9ヵ月 福島県

出動要請から数分で飛び立つことができるドクターヘリ
 東北で初めて導入された福島県のドクターヘリが地域医療の現場で活躍している。運航を始めた1月末以来、出動は161回(10月26日時点)に上る。県内どこにでも40分以内に急行できる機動性を生かし、救急車での搬送では助からなかったとみられる命を救った例もある。一方で、どんな状況で出動を要請するかは消防本部によって判断にばらつきが見られるなど、課題も浮かぶ。

<搬送で救命例も>
 ドクターヘリの基地は県立医大病院(福島市)にある。出動要請を受けてから数分で同病院の救急救命センターの医師、看護師らが乗り込み、飛び立てる体制が整っている。

 ヘリは6人乗りで、最大2人の患者を搬送できる。機内には人工呼吸器や超音波診断装置を備え、現場での応急処置が可能だ。県立医大病院の田勢長一郎救命救急センター部長は「浜通り地方の交通事故で重体に陥った男性を医大に搬送したケースなど、ヘリがなければ救命できなかった例も多い」とヘリの威力を説く。

 ただ、山間部が多い県内では計器飛行に頼る夜間運航は難しく、運航は原則午前8時半から午後5時までに限られる。出動範囲も原則、県内のみで「他県との連携が今後の課題」(県医療看護課)となっている。

 最大の問題は出動要請の判断基準が定まっていないことだ。緊急度がほぼ同じ事例でも、出動を要請する消防もあれば、救急車での搬送でも救命できると判断して要請しない消防もある。県内の救急関係者らを集めて県が9月末に開いた運航調整委員会でも、消防関係者から「出動を要請するかどうか、ちゅうちょすることがあった」との報告があった。

 田勢医師は「もう少し呼んでほしいというのが正直な気持ち。119番が入った時点で、少しでも危険な状態なら要請してほしい。結果として出動の必要がなかったケースが出ても構わない」と初動の重要性を訴える。

 県医療看護課は「当初は消防本部ごとの温度差があったが、徐々に慣れてきた。まず1年間は様子を見たい」と話す。

<降雪の影響心配>
 冬が近づき、降雪などが出動にどれだけ影響を及ぼすかも未知数だ。雨や濃霧で有視界飛行ができない日が多かった8月は出動回数がわずか9回にとどまっており、冬場はさらに出動可能日が減る恐れがある。

 離着陸できる場所の確保も課題だ。現在は県内約400カ所を離着陸可能な場所として想定するが、県は今後、1000カ所程度に増やしたい考え。県医療看護課は「高速道路の車道への離着陸が可能になれば、事故などにも迅速に対応できるようになる」と期待している。
2008年11月06日木曜日

福島

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