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ヒトES細胞から脳組織作成に成功 理研

2008年11月6日

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写真ヒトES細胞から作り出された直径2ミリほどの脳組織の一部。胎児と同じ4層の大脳皮質が確認されたという=理研提供図    

 万能細胞とされるヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から、立体構造を持つ大脳皮質の組織を作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹グループディレクターらのチームが成功した。4層構造で、胎児の脳組織にそっくりだという。6日付で米専門誌セル・ステムセル電子版に掲載される。

 これまで、ES細胞から心臓や神経の細胞はできていたが、複雑な立体構造と役割を持つ「組織」ができたのは世界でも初めて。脳ができる仕組みの解明や再生医療、新薬開発の研究につながると期待される。

 ES細胞の塊をバラバラにして皿の中で培養液に浮かせ、特殊な薬を入れると神経細胞ができる。1〜2日かけて、神経細胞の塊になるが、成功率は3割程度と低かった。笹井さんらは、成功率を上げるため、バラバラのES細胞が集まりやすいよう、小さなカップに小分けにして入れたところ、2〜3時間で塊になったという。成功率は7割に上がった。

 約6週間で直径約2ミリのマッシュルームのような形になり、断面をみると層構造ができていた。神経細胞が自動的に複雑な大脳の皮質を形作っていたことが分かった。

 大脳皮質は運動、思考をつかさどる脳の最高中枢。ヒトの大人では6層だが、胎児では4層の時期がある。作り出した組織には4層の皮質があり、胎児の組織とよく似ていた。

 笹井さんは「小さいカップで培養したことで、実際に胎児の脳組織ができる環境に似た状態になり、本物と同じような脳組織ができたようだ。」と話す。(木村俊介)

    ◇

 〈ES細胞〉 人では不妊治療の際に必要がなくなった受精卵を利用して作られる「万能細胞」。増殖し続け、ほぼすべての種類の細胞になることができる。万能細胞として、人工多能性幹細胞(iPS細胞)のお手本となる存在。iPS細胞に比べ、研究が進んでいるため、実験技術の蓄積がある。一方で、受精卵から作るため、研究の推進に倫理的なハードルがある。

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