２２歳ホスト逮捕「死んでしまうことぐらい分かってた」…大阪３キロ引きずり

　大阪・梅田で会社員の鈴木源太郎さん（３０）が車にはねられ、約３キロ引きずられて死亡したひき逃げ事件で、曽根崎署捜査本部は５日、殺人と自動車運転過失傷害、道交法違反（無免許）の疑いで、ホストクラブ従業員・吉田圭吾容疑者（２２）を逮捕した。事件から約２週間、勤めていた建築会社から犯行直後に姿を消した吉田容疑者は、大阪・ミナミの歓楽街にホストとなって姿を隠していた。５日未明、ミナミの人気ラーメン店そばの路上で府警の捜査員に取り押さえられた。

　５日午前３時５０分ごろ、大阪・ミナミの人気ラーメン店そばの路上。目撃した従業員によると、食事を終えたホスト風の若い男２人が店を出た。顔写真を確認した捜査員約１０人が駆け寄ると、１人が逃げだした。「もう逃げられないぞ」捜査員の大きな声が響き、路地に追い込むと、男性は転倒。事件から１５日、容疑者は逮捕された。

　調べに対し、吉田容疑者は事件当時、飲酒し無免許だったとし、「警察に捕まると困るので、必死に逃げた。タイヤで人を踏んだ感触があった。車の底で引きずり、逃げて殺してしまった」と供述。捜査本部は殺意があったと判断した。

　交差点で信号待ち後、発進させた乗用車を目の前の人にぶつけて転倒させ、乗り上げるのが分かったが、停止せずにアクセルを踏んだという。「人を引きずったまま走れば死んでしまうことぐらい分かっていたが、とにかくその場から逃げたかった」と供述している。

　勤務先だった大阪市此花区の建築会社社長によると、吉田容疑者は事件当日の１０月２１日午前７時前に出勤予定だった。仕事に来ないため携帯に電話をかけると、呼び出し音は鳴るが出なかった。夕方に電話をかけ直したが着信拒否。ポストを確認すると「前から辞めたかった。違う仕事を探します」との手紙が入っていた。吉田容疑者の住まいを訪れると、既にがらんとしていたという。

　２６日には手紙と車の鍵が投函（とうかん）され、便せん１枚に「勝手なことをしてすみません」と走り書きがあった。約３年前からとび職見習として働き始め、技術は向上していたが、会社から月給の約１・５倍を前借りし、朝寝坊の癖も直らなかった。

　犯行に使用されたトヨタ「イプサム」は、倉庫からの荷出しに使う業務用。鍵は７、８本あり、吉田容疑者が１本所持し、社員の中で最も多く使用していた。吉田容疑者は２０日が休み。私用での使用は禁じられていた車で出掛け、帰宅途中に事件を起こしたとみられる。

　吉田容疑者は過去にも酒気帯びや無免許運転をしたとして摘発されていた。４月には１年間の免許取り消し処分を受けていたが、その後も運転していた。

　捜査本部はこの日、押収車両を公開。車体底部の後方数か所で血痕が、前方と中央に鈴木さんが着ていたのと同じ、こげ茶色のスーツなどの繊維が見つかったという。また、鈴木さんのズボンのすそに残っていたタイヤあとが、車体底部に備え付けられた予備のタイヤの溝と一致した。