銭湯銭湯は、使用料金を支払い入浴する公衆浴場のことです。銭湯の発祥は古代ローマのカラカラ浴場に見ることの出来る、世界最古からの公共施設であると言っても過言ではないでしょう。現在では家庭用風呂の普及に押されて年々減少傾向にあるものの、「町の社交場」として根強く息づいています。そんな銭湯について、解説してきましょう。 |
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日本における銭湯の歴史日本において、入浴の大切さを伝えたのは聖徳太子によるものといわれています。6世紀に伝来した仏教では、沐浴(身体を洗い清めること)の功徳が説かれており聖徳太子によって日本に普及した仏教は、当時の人々に沐浴を習慣とさせたのです。当時の寺院には、沐浴のための施設である湯屋や浴堂が常設されていたといいます。その後、平安時代に現在の銭湯のはしりとなる湯屋が生まれ、仏教のための沐浴から生活習慣としての入浴へと 変化していくことになります。江戸時代に入ると、伊勢与一という男性が江戸城近くの銭瓶橋付近に銭湯を建て、銭湯が全国に普及していくほどの大ヒットとなります。この頃の銭湯は一種の蒸し風呂で、男女混浴が当たり前だったと伝えられています。現在の湯船につかるスタイルが確立したのは慶長年間の終わり(17世紀頃)のことで、当時はすい(水)が転じて「すえ風呂」と呼ばれていたそうです。江戸時代の銭湯の二階は一種の社交場として開放されており、将棋や囲碁に興じる人もいれば横になってうたた寝する人もいるという寛ぎの場所であったといいます。明治時代に入ると、法令で「7歳以上の男女の混浴を禁ずる」と定められ、銭湯における混浴は完全に消滅することになります。これが、日本における銭湯の歴史であります。 スポンサードリンク
日本銭湯の様式銭湯という言葉から、私たちはどのようなものをイメージするでしょうか? ケロリンの桶やペンキ絵の富士山、一面タイル張りの浴室、類を見ない番台システム…そういった、銭湯の特徴にスポットを当ててみましょう。 ケロリンの桶銭湯にいけば必ずといって良いほどピラミッド型に並べて置いてある「ケロリン」という黄色いプラスティックの桶はいったいなんなのでしょう? このケロリン桶は、1963年(昭和38年)に、衛生上の問題から銭湯をはじめとする公衆浴場で使われる湯桶が木製から合成樹脂製に切り替わることになり、「ケロリン」の発売元である内外薬品が、広告のために東京温泉という銭湯に卸したのがその始まりです。「風呂桶を使った広告は、多くの人の目に止まる」という趣旨から作られたこの桶は、瞬く間に全国に広まったのでした。現在でも年に4〜5万個を納入する、銭湯文化を代表する物の一つになっています。また、その丈夫さは腰掛として使っても割れないほどであることでも重宝されています。 ペンキ絵浴室に入ってすぐ目に入るのは、雄大な富士山を描いたペンキ絵。銭湯のゆったり感を演出する一助を担うこのペンキ絵の発祥は大正元年に遡るといわれています。東京都神田の猿楽町にあった「キカイ湯」のご主人が、画家である川越広四郎氏に男湯に富士山の壁画を描いてくれるよう依頼したのがその始まりであるといわれています。その後、富士山のペンキ絵は富士山の見える東日本を中心にして広まり、「銭湯=富士山のペンキ絵」という固定観念にまで昇華されたのです。しかし、昨今の後継者不足による廃業やスーパー銭湯への鞍替えなどでペンキ絵の需要は減少しつつあり、ペンキ絵の職人も関東でわずか5名のみという状況下にあります。ちなみに、ペンキ絵にはタブーとされる題材が幾つかあります。「(景気が)落ちる」に通じる「夕日」、「(客が)去る」に通じる「猿」、「散り行く」に通じる「紅葉」などがタブーとされています。 番台銭湯の代名詞にして、男の子たちの憧れの一つ、それが番台です。本来、番台の役割は男湯・女湯に入場してくるお客さんから入浴料を徴収し、籠に入れられた衣服などが盗まれないよう目を光らせる防犯の役目、つまり「見張り番の台」だったわけです。しかし、コインロッカーの普及などで、番台を廃止して受付型にする銭湯も増えているそうです。番台は脱衣所をすみずみまで見渡せて、かつお客さんとお金のやり取りをするのに困らない高さで、長時間でも疲れないよう足を伸ばせるようになっています。また、後ろにはお客さんが買うシャンプーなどの洗面用具を並べた棚がおいてある所もあります。 タイルユニットバス全盛になった今の家庭用風呂ではなかなか無いのが、この全面タイル張りの浴室です。明治時代までの銭湯は、浴槽を含めた浴室が総板張りになっていてそれはそれで風情があったのですが、木の性質上水を吸って膨らんだり腐ってしまったりと衛生的に宜しいものであったとは言い切れなかったわけです。大正時代に入ると、衛生面やタイル自体の酸化・アルカリ化し辛い化学的安定性や耐熱・耐水性といった機能性、欠けた場所だけを取り替えることの出来る利便性などが衛生面から評価され、浴室に使われるようになっていきました。中には、上記の富士山の壁画をタイルで描いた銭湯もあったそうです。現在では、銭湯や温泉などの公衆浴場のほとんどにタイルが使われています。 スーパー銭湯近年増加している新形式の銭湯、それが「スーパー銭湯」です。健康ランドのような一大リラクゼーション施設でありながら、銭湯のリーズナブルな利用料金を併せ持つスーパー銭湯は、1994年に名古屋で第一号が開業しそのブームが全国に波及していきました。健康ランドと大きく違うところは、「入浴料が安い」ことが筆頭に上げられますが、その分健康ランドで行われているサービスが別料金で提供されているなどのデメリットもあります。また、健康ランドが仮の宿泊施設として利用できることがあるのに対しスーパー銭湯ではそういった利用法を目的としていないところがほとんどです。しかし、銭湯と違い露天風呂やサウナやジャグジー、打たせ湯といった充実した設備を備えているため、年々人気は上々傾向にあります。 銭湯の基本的マナー「温泉に行ったことはあるけど銭湯に行ったことがない」、そんな人も多いのではないでしょうか? 銭湯でも温泉でも、大事なマナーがいくつもあります。ここではそれを説明して行きたいと思います。 湯船に浸かる前に身体を洗おう!前述の通り、入浴は身体を洗い清める「沐浴」から生まれた習慣です。汗をかいたままの身体で湯船につかるのは不衛生ですし、何よりお湯が汚れて他の人に迷惑をかけてしまいます。湯船に入る前に、よく泡立てた石鹸で身体を洗い流しましょう。身体を洗ってから湯船に浸かると新陳代謝が活発になってより垢を落としやすくなります。 シャワーやお湯をかけ流す時は周りに注意しよう!銭湯は公衆浴場ですから、他のお客さんも居るわけです。もしあなたが誰かの後ろを通ったときにお湯がかかったらどうでしょう? あまり良い気持ちはしないのではないでしょうか? お湯をかけ流すときは勢いを付けず肩から下へゆっくりとかけましょう。シャワーの場合も、いきなり蛇口を全開にせず、適当なところで抑えて頭などを洗い流すようにしましょう。 湯船にタオルを入れない!よく、頭に畳んだタオルを乗せるために湯船にタオルを沈めて絞る人を見かけますが、これはマナー違反です。人によってはタオルを、身体を洗うのに使っていることもあるのですから、あまり気持ちのいい行為とはいえないでしょう。タオルを頭に乗せたいのなら、湯船の外でお湯に漬けて絞ればいいのです。また、「人に自分の身体を見られたくない」からといって、テレビの温泉番組のようにタオルを巻いてくる人も居ますがこれもマナー違反です。いくらタオルを清潔にしているつもりでも、湯船はタオルを入れる場所ではないことを肝に銘じておいてください。 水を出しっぱなしにしない!よく見かけるのが、必要以上に水を出しっぱなしにするお客さんです。連れてきた子供が水で遊んでいても注意しない親御さんもたびたび見受けられます。「銭湯の水道料金は、入浴料で銭湯が支払っているのだから何も問題ないだろう」と思っては居ませんか? ご存知の通り、昨今は原油値上がりの影響を受けて燃料費引き上げのために銭湯の入浴料を値上げせざるを得ないのです。そこに、お客さんの水の無駄遣いで水道料金が嵩むと銭湯は廃業せざるを得なくなるかもしれないのです。 脱衣場ではすぐに身体を拭こう!お風呂から上がって、一息つく前にまずは身体を拭きましょう。濡れたままでは風邪を引きやすくなりますし、飛び散った水滴で誰かが足を滑らせてしまうかもしれません。それにすぐに身体を拭くと、お風呂の温熱効果でポカポカしてきてとってもリラックスできるのです。 銭湯・温泉でのマナーは、みんなが気持ちよく入浴するための最低限の礼儀です。皆さんもこのマナーを正しく守って、快適な銭湯を楽しんでください! |
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