ついに決まった。米大統領選でオバマ氏が勝利した。事前の予想が、どんなに優勢を伝えても、やはり開けてみないと分からない。なんといっても歴史的な選択だからだ。
米国は景気が落ち込み、社会に閉塞(へいそく)感があふれている。八年間のブッシュ・共和党政権も不人気だ。民主党にとっては政権奪還のまたとない機会となった。それでもオバマ氏には幾多の壁が立ちはだかった。
昨年末までは、民主党の大統領候補はヒラリー氏が大本命だった。オバマ氏にとっては最大の壁であり、年明けからの予備選では五カ月にわたるデッドヒートを制した。その後も経験不足といった批判、予備選で生じた民主党内の亀裂修復などの課題が浮上した。
証券大手の破たんなど深刻化した金融危機が後押しする格好にはなったが、最後に指摘されたのが人種問題の壁だ。黒人への偏見が根強く残るとされる。しかし、大差のついた結果をみると見事に乗り越えたようだ。
オバマ氏は「変革」とともに「米国の結束」も訴えてきた。人種や党派の対立を超え、貧困や性別の差を克服した「一つの米国」の実現だ。人々を分断するさまざまな壁を打ち破らなければならない。
自ら壁を越えてきたオバマ氏だが、これから立ち向かう壁はさらに高く厚いものとなろう。新たな挑戦が始まる。