日医の緊急調査、中医協に提出へ
今年4月の診療報酬改定で、再診時に5分程度の診察時間を必要とする要件が加わった「外来管理加算」が医療機関の経営を悪化させているとの日本医師会の主張をめぐり、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は11月5日の総会で、日医の「2008年度緊急レセプト調査」のデータ提出を受け付けることを了承したが、「5分要件」の見直しに向けた検証を要求する日医の主張は退けた。また、遠藤会長は「調査の内容をご披露いただくが、それをどのように扱うかは、今後の課題」と述べるにとどめた。
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この日の総会で、日医常任理事の藤原淳委員は「2008年度改定で外来管理加算の見直しが行われ、いわゆる5分ルールが導入されたが、医療現場では当初想定していた以上に算定が困難となり、大幅な減収を強いられているとの話を聞いている」と訴え、外来管理加算の見直しに向けた審議をあらためて求めた。
これに対し、支払側の対馬忠明委員(健保連専務理事)は、再診料の引き下げをめぐる議論の中で同加算の見直しが決定されたことを強調し、「(今回の改定で)わたしども(支払側)は、再診料の引き下げを主張したが、2号(診療)側は難しいと言ったので、最終的には公益委員の裁定で決まった」と指摘した。
その上で、「外来管理加算の(5分)要件の設定が最善ではなく、問題含みの中で決断せざるを得なかった。それなのに、『問題あるんだ、問題あるんだ』と再三おっしゃる。それならば、『再診料の議論をもう一回しましょうか』となりかねない」と、日医の姿勢を痛烈に批判した。
対馬委員は、初・再診料、外来管理加算、入院基本料など「基本診療料」に関する検証の中で取り上げることには賛成したものの、外来管理加算を単独で検証することに反対した。
■調査データの提出は了承
日医の「緊急レセプト調査」によると、外来管理加算の5分要件の導入などによる診療所の減収額が800億円を超えるという。中川俊男委員(日医常任理事)は「外来管理加算によって現場は非常に混乱しているので、議論の場を早めにつくってほしい」と求めるとともに、調査データを中医協で公表することを提案したが、他の委員から批判が続出した。
松浦稔明委員(香川県坂出市長)は「議論して、次の改定までにどうとか、こうとかするのか。そんなことできないでしょ。わたしは議論することには反対。あれだけエネルギーをかけた」と反発。大島伸一専門委員(国立長寿医療センター総長)も、「(現場で)とんでもないことが起こっているとか、このままだとむちゃくちゃになってしまうから議論するという話なのか。パイの分捕り合戦で、あっちが少ない、こっちが多いという話を蒸し返すのか。よく分からない」と疑問を呈した。
一方、邉見公雄委員(全国公立病院連盟会長)は「資料を一応出してもらい、後は皆さんのご判断、あるいは議論をするということでいいのではないか」と提案。小林麻理委員(早大大学院教授)も、「適切な医療の提供、患者の視点といった診療報酬改定全体を議論するというポジションを前提にした上で、いろいろデータを提供していただき、問題点を議論するのはいい」と、条件付きで賛成した。
これらの意見を踏まえ、遠藤会長は「調査データを出してもらって参考にすることについては、(多くの委員は)『よろしいのではないか』という意見だろう。対馬委員が指摘したように『基本診療料の在り方を考えなければならない』というミッションがあるので、その中で、(日医の)緊急調査の内容をご披露いただくが、それをどのように扱うかは、今後の課題とさせていただきたいが、よろしいか」と提案し、了承された。
■救急医療の検証を
この日の総会で、邉見委員は「先程、大島委員が『とんでもないことが起こっているなら議論する』と述べた。今、ものすごく問題になっているのは救急医療だ」と指摘。救急医療について検証することを提案した。
邉見委員は「江戸のど真ん中で、妊産婦が収容困難だという。これをぜひ、2年後(の改定)と言わずに、検証していただきたい。(今回の改定で)三次救急にはかなり点数が付いたが、二次救急をやっている病院が大変な状況になっている。一晩に10人近い人を配置して、(患者が)来なければ完全な持ち出し。来ても持ち出し。このようなシステムを検証してほしい」と強く要望した。
遠藤会長は「重く受け止めさせていただく。事務局(厚生労働省)と話をして、どういう扱いにするか、また皆さんにお諮りしたい」と答えた。
更新:2008/11/05 19:23 キャリアブレイン
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