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脳をだます!ラクラク最新筋トレ術

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2008年10月29日放送

今回の番組について

前回放送した「生死を分ける!健康体操ホントの効用」では、機敏な身のこなしの大切さを紹介しました。しかし、もうひとつ大切なものがあります。それは「筋肉」です。

つまずいた時、体勢を立て直すことができても、筋肉がないと体を支えられず、結局は転んでしまいます。年を取るに従って筋肉が減少する「加齢性筋萎縮症」は、誰も避けられません。

それを食い止める唯一の手段が「筋トレ」です。ウォーキングや普通の水泳には、筋肉を増やす効果はあまりありません。そこで今回のガッテンでは、ラクラクできて効果もバッチリという新しいトレーニング法を紹介します。それに取り組んだ人々は、「10年間使っていたツエがいらなくなった」、「1年間で13キロやせた」など、驚きの成果をあげています。

本来「筋トレ」とは…

「筋トレ」とは、実は「脳にある“スイッチ”を押して、筋肉を太くする“あるホルモン”を出させること」です。本来、重い負荷がかかるキツイ運動をしないと、この脳の“スイッチ”は押せません。しかし、今日紹介する方法では、もっとラクにこの“スイッチ”を押すことができるのです。

オープニングクイズ

  • 問題:「ダンベル(Dumbbell=鳴らない鐘、の意味)の名前の由来は?
    答え:鐘がトレーニングのおもり代わりだった
    ※この答えが最有力の説ですが、ほかの説もあります。
  • 問題:埼玉県三郷市のシルバー元気塾で行われている「転倒防止トレーニング」は、どんなことをする?
    答え:つま先の上げ下げ
  • 問題:次のうち、乳酸が最もたまる競技は?
    100メートル走/400メートル走/1500メートル走/マラソン
    答え:400メートル走

「こんな成果がでてマッスル」

三重県四日市市のある運動教室では、秘密のトレーニングを指導していて、この運動に取り組んだ人々には驚きの成果が現れています。

「10年間使っていたツエがいらなくなった」「1年で13キロやせた」「歩いて北海道1周にチャレンジできるほど、足腰が強くなった」「1年で内臓脂肪が60%減った」……などなど。

秘密のトレーニングに取り組んだ人たちの中で、70歳以上の方の体を調べると、1年で太ももの筋肉の厚みが5%増加し、内臓脂肪と皮下脂肪の厚みが16%減少したのです。

「秘密のトレーニングの効果を科学的に実証」

この秘密のトレーニングの効果を科学的に実証するため、ある研究者が実験を行いました。使用したのは、足の筋肉を鍛える筋トレマシンです。一方は最大負荷の80%という重い負荷、もう一方は50%という軽い負荷をかけます。

週2回、3ヶ月間運動を続けた結果、重い負荷では太ももの筋肉の断面積が4.3%増加しましたが、軽い負荷では0.7%の増加でした。しかし、負荷が軽くても“ある工夫(くふう)”を加えると、重い負荷に匹敵する5.4%の増加が見られたのです。

グラフ【筋肉の変化」

(最大筋力とは、足や腕の筋肉が出せる最大の力のことです。これを100%として、筋肉を太くするためには、通常、65%以上の負荷をかける必要があるとされています。)

実験の際に“あるホルモン”の分泌量を調べると、重い負荷では多く、軽い負荷では少なくなっていました。しかし軽い負荷でも“ある工夫”を加えると、重い負荷に匹敵するほど多くなりました。そのホルモンとは、「成長ホルモン」です。成長ホルモンは、筋肉などを成長させるホルモンです。

“ある工夫”の正体は“ゆっくりな動き”

“ある工夫”とは、“ゆっくりな動き”でした。四日市の教室で行われていた秘密のトレーニングも、腕立て伏せ、腹筋、スクワットをゆっくりな動きで行っていました。軽い負荷でも動きをゆっくりにすれば、脳のスイッチを押すことができ、成長ホルモンが出て、筋肉を太くすることができるのです。

ゆっくりとした動きで筋トレをすることを「スロートレーニング」と言います。

通常の筋トレの仕組み

通常の筋トレなど、重い負荷の激しい運動をした場合、筋肉の中には乳酸がたまります。筋肉内の乳酸が増えると、浸透圧の関係で、筋肉が水分を取り込み、腫れます。すると脳に信号が送られ、脳のスイッチが押されて成長ホルモンが分泌され、筋肉が太くなります。

「スローだと筋肉は力を出し続ける」

通常のスクワットとスローのスクワットの筋肉の力の出し方を、筋電図という装置を使って調べました。通常のスクワットでは、筋肉はとぎれとぎれに力を出していました。しかしスローのスクワットでは、筋肉は途切れることなくずーっと力を出し続けていたのです。

なぜスロートレーニングは、脳のスイッチを押せるのか?

筋肉が力を出し続けている状態では、筋肉内の血管が圧迫され続け、血行不良の状態が続きます。血行不良になると、筋肉では酸素が不足します。酸素が不足すると、筋肉は無酸素運動(負荷の大きな運動。酸素を使わず乳酸がたまる運動)によく似た状態になります。このため乳酸が蓄積し、筋肉は腫れ、脳へ信号が送られます。これによって、脳のスイッチが押され、成長ホルモンが分泌されます。その結果、筋肉は太くなります。

なぜ「血行不良→酸素不足」で、乳酸が蓄積するのか?

筋肉の細胞には「遅筋」と「速筋」の2種類があります。運動する場合、まず最初に働くのが遅筋です。負荷が大きくなると遅筋だけでは対処しきれなくなるため、速筋も働くようになります。

遅筋は、酸素を使って運動し、乳酸をあまり発生させない筋細胞です。これに対し、速筋は酸素を使わずに運動し、乳酸を発生させる筋細胞です。(無酸素運動とは負荷の大きな激しい運動の際の筋肉の運動で、遅筋に加え、速筋も働いている状態で乳酸が発生する運動です。)

酸素が不足すると、酸素を必要とする遅筋が本来の力を発揮できなくなるため、軽い負荷であっても速筋も働くことになります。このために乳酸が発生します。

「スローで筋肉が腫れる」

スローのスクワットを行ったときの太もも周りの変化を見てみると、被験者の太ももは2センチ前後太くなっていました。筋肉に乳酸が蓄積され、水分が入り込んで腫れるのです。これが脳のスイッチを押します。

研究者の話

スローで筋トレを行うと、筋肉が太くなる効果が高まることは、昔から経験的に知られていました。最近の研究で、スロートレーニングの効果を科学的に実証し、またそのメカニズムをつきとめました。

スロートレーニングは、負荷が小さくて済むトレーニングなので、高齢者にはもちろん、腰痛やヒザが痛い人にも行いやすいものです。血圧があがりやすく通常の筋トレに不向きとされてきた高血圧や、動脈硬化の進んだ人にも同様です。

成長ホルモンには、組織を成長させ、新しくする効果があるため、体を動かすために大切な腱やじん帯、骨を丈夫にする効果もあります。骨粗しょう症の予防にもなります。また、新陳代謝を高める効果もあるとも言われています。

※スロートレーニングは、通常の筋トレと比較すると負荷が軽くて行いやすいトレーニング方法ですが、腰痛、ヒザ痛、高血圧など、不安がある方は、医師やトレーナーに相談してから行ってください。

「筋トレで脂肪もトレーるニング」

スロートレーニングを行っている教室には、「1年で13キロやせた」「1年で内臓脂肪が60%おちた」など、トレーニングのおかげでやせたと言う人たちがいました。

スロートレーニングのダイエット効果については、現在、研究中でまだはっきりした結論は出ていません。しかし、通常の筋トレのダイエットについては、去年「筋トレに有酸素運動を組み合わせると、ダイエットの効率が高まる」という報告がなされました。

この研究では、筋トレを行った後に自転車こぎ(有酸素運動)を行い、その時、体内で燃えている糖と脂肪の割合を調べました。自転車こぎのみを行った場合、体内で燃えるのは、糖80%に対し、脂肪20%でした。しかし筋トレ後の自転車こぎでは、その燃焼割合が30〜50%程度まで高くなったのです。

なぜ筋トレ後の有酸素運動で、脂肪燃焼が高まるのか?

筋トレをすると、成長ホルモンが出ます。それを追いかけるように、血液中に遊離脂肪酸が増えてきます。成長ホルモンが持つ高い脂肪分解作用によって脂肪が分解され、遊離脂肪酸になるのです。

脂肪は、遊離脂肪酸の状態になると燃えやすくなります。このタイミングで有酸素運動をすると、脂肪が効率的に燃えると考えられています。

また、「筋トレ→自転車こぎ」の順番を入れ替えて、自転車こぎを先に行うと、筋トレで出るはずの成長ホルモンが大幅に減少してしまいました。つまり、「有酸素運動後の筋トレ」は、成長ホルモンが出にくくなるため、筋肉が太くなる効果が薄まってしまうのです。

《有酸素運動で効率よく脂肪を燃焼させる》《筋トレで成長ホルモンをより多く出させる》という2点から考えると、「筋トレ→有酸素運動」の順番がお薦めです。

運動上の注意

  • いきなりの筋トレはケガの原因です。必ず準備運動を行ってください。
  • 筋トレ後、3時間以内の有酸素運動が、脂肪燃焼を効率よく燃やすために効果的です。
  • ウォーキング、ストレッチ、ラクに自転車をこぐ程度の軽い運動で、かつ30分以内であれば、その後の筋トレ時の成長ホルモンの分泌に影響はありません。
  • 有酸素運動とは、ウォーキング、水泳、自転車など、軽い負荷の持続的な運動のことです。脂肪を燃焼させるのに効果的です。

※たとえば、ケガ防止のためのウォーミングアップとして有酸素運動を先に行うことをすすめている指導員もいます。何を重視してプログラムを組むかについてはさまざまな考え方があり、番組はそれを否定してはいません。

「1ヶ月チャレンジ!スロートレーニング」

愛知県大府市健康福祉部の職員3名(40〜50代男性)が1ヶ月間、スロートレーニングに挑戦しました。トレーニングの内容は、スローのスクワット、腕立て伏せ、腹筋の3つで、1種目につき15回を2セット行いました。これを毎日続けました。

1か月後、太ももの筋肉の厚みは、2.2〜4.6ミリ増えました。肝臓の前の内臓脂肪の厚みは、1.0〜2.9ミリ減りました。3人は毎日スロートレーニングを行い、また食事にもある程度は気を遣ったため、このような大きな変化が起こったと考えられます。

実習コーナー「スロートレーニングに挑戦」

1. スロー腕立て伏せ

写真「スロー腕立て伏せ」

  1. 体で四角をつくるように両手両ひざを床につく。
  2. 両手を底辺とした三角形を作るようにタオルなどを置く。
  3. タオルを目指してゆっくり体を沈めていき、4〜5秒ほどかけてあごをぎりぎりまで近づける。
  4. 「1、2、3、ハイッ」のかけ声とともに、ゆっくりと体を持ち上げる。
    ※このとき、ひじを伸ばしきって力を抜いてしまわないように。少し曲げた状態で常に力を入れ続ける。
    ※かけ声を出すことで呼吸を確保する。

★1日に10回×2セットを目安にやってみよう!

2. スロー腹筋

写真「スロー腹筋」

  1. あおむけに寝て、ひざを立てる。
  2. 手のひらを開いて、太ももの上にのせる。
  3. 「1、2、3、ハイッ」のかけ声とともに、ゆっくりと上半身を持ち上げる。
    ※中指がひざ頭につくくらいまで。目線は天井の一点を見たまま動かさない。
  4. 肩が床につかないようにしながら、4〜5秒ほどかけてゆっくりと上半身を元に戻す。

★1日に10回×2セットを目安にやってみよう!

3. スロースクワット

写真「スロースクワット」

  1. 足は肩幅程度、つま先はやや外向きにして立ち、腰に手をあてて、そのまま4〜5秒ほどかけてゆっくりとおしりを下ろしていく。
    ※できれば、ももが床と平行になるくらいまで下ろす。
    ※顔はしっかり前を向いたままで。
    ※ひざがつま先よりも前に出ないように、できるだけおしりを後ろにひく。
  2. 「1、2、3、ハイッ」のかけ声とともに、ゆっくりと立ち上がる。
    ※ひざは伸ばしきらず、少し曲げた状態で止める。

★1日に10回×2セットを目安にやってみよう!

注意

  • 必ず声を出して数を数えてください。呼吸を確保するため、また、動作が速くならないために大切です。
  • 無理をしすぎないように注意してください。
  • ひざ痛、腰痛、高血圧など、不安のある方は事前に医師やトレーナーに相談してください。

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