一時代を築き、絶大な人気を誇った小室哲哉容疑者(49)。「まさか」「おごりがあったのか」。ファンにも衝撃が走った。
神戸市長田区の清掃業、新田真矢(しんや)さん(48)は「デビュー当時から20年以上ファンだった。それだけに、人を欺き、お金をだまし取るまで落ちぶれてしまったのかと思うとショックだ。周囲が金づるとして利用したのかもしれないが、今後、芸能界という表舞台から姿を消してしまうかもしれないと思うと、さみしい」と話した。
JR大阪駅前でバスを待っていた奈良県の大学4年、西川真奈美さん(21)は「朝、ニュースを見て、『まさか』とびっくりした。ゲレンデに行けば、いまだにglobeなど小室さんの曲がよく流れているけど、本人は最近バラエティー番組にも出ていて、人生いろいろあるなと思っていた。地道に頑張っていたのに。時代の流れを感じる」と言葉少なだった。
京都市中京区で通勤途中の同市伏見区、会社員、森本祥子さん(31)は「中高生のころ安室ちゃんやglobeが絶頂期で、私たちの世代といえば小室さん。自分の曲に泥を塗ってしまった。今でもよくカラオケで歌うけど、これからは歌うたびに残念な気持ちになりそう。フィーバーの後も派手な暮らしをし過ぎたのでは」と残念そうに話していた。
大阪市城東区の会社員、堀剛さん(40)は「学生時代、TM NETWORKのサウンドに新しさを感じてよく聞いていた。すごい人だとは思うが、人気なんて一時のものだから、もっと謙虚になるべきだったのに、おごりがあったのだと思う。自分の器をわきまえず、手広くやりすぎたのでは」と語った。
東京都港区の小室哲哉容疑者の自宅兼音楽関連会社にも4日午前8時5分ごろ、大阪地検の係官が捜索に入った。約50人の報道陣が詰めかける中、ボストンバッグを携えた係官約10人が、自宅の入るマンションに到着。住宅地のマンション周辺は一時騒然とした。【宮地佳那子】
小室容疑者がメンバーのglobeが所属するレコード会社「エイベックス・グループ・ホールディングス」(東京都港区)は4日、逮捕を受け、「大変遺憾。今後の捜査の行方を注意深く見守りたい」とのコメントを発表した。26日と来月17日に発売予定だったglobeのシングルCD2枚は発売を中止し、インターネットで行っているglobeの楽曲配信も停止するという。【前谷宏】
小室容疑者を巡っては、関連の会社が、1日のサッカー・ヤマザキナビスコ杯で初優勝したサッカーJ1の「大分トリニータ」のスポンサーとなりながら、スポンサー料を滞納していた。
小室容疑者は妻の歌手、KEIKOさん(36)が大分県出身という縁でトリニータを応援。04年にスポンサーとなった。だが、05年に7000万円の滞納が発覚。これをきっかけに当時、経営が苦しかったトリニータは、大分県に運転資金を求めた。県は05年9月、県文化スポーツ振興財団を通じ、チームを運営する大分フットボールクラブに2億円を緊急融資。同クラブは、07年4月から6年計画で月277万7000円ずつ返済している。
同クラブの古沢進二広報部長によると、滞納問題発覚後、小室容疑者側と協議し、滞納分は毎月、分割で支払われることになった。その後も滞りなく支払われているという。古沢部長は「メーンスポンサーになってくれた時はありがたかった。それがなかったらトリニータもなかったかもしれない。今後、スポンサー料が支払われるか心配。お互い夢を提供する立場、そういう面でも逮捕は残念」と話した。【梅山崇、中島京】
最近は借金があり、かなり金に困っているという話は聞いていた。以前ほど音楽活動は活発ではなかったが、印税収入などはあったはず。金を増やそうと無理をしたのでは。あせりがあったのかもしれない。TM NETWORKのデビュー当時はコンピューターを使った音楽が非常に新鮮だった。多数のヒット曲を飛ばし、その時代には受けたが、何十年も歌い継がれるスタンダードな曲にはなりにくいという印象だった。ただ、一時代を築いた才能あるプロデューサーだけに、(事件は)そこまで行ってしまったのかと驚いている。
著作権の二重譲渡を防ぐために文化庁の登録制度があるが、手続きが煩雑で十分に利用されていないうえ、専門家が取引に介在しないケースも多い。今回は、著作権譲渡がビジネスとして洗練されていないために起きた事件だ。投資目的の著作権譲渡は近年、増えてきているが、作品は人と人のつながりの中で生まれ、流通していくもの。著作権だけが流通してどんどん金を生み出すというほど簡単ではない。かかわる人が正しい知識を身につけることと、専門家の育成、登録制度の早急な改善が求められる。
毎日新聞 2008年11月4日 大阪夕刊