白いブラウスに紺のスカート。清楚(せいそ)な学生服姿で現れた彼女は、あどけない普通の高校生にしか見えなかった。女性将棋界の新星として「出雲のイナズマ」と呼ばれる強さとは、何ともギャップが大きい。
島根県出雲市に住む高校二年生の里見香奈女流二段(16)だ。六日からの「大山名人杯倉敷藤花戦」で、初タイトルに挑む。別の対局で訪れた東京・将棋会館で、話を聞く機会を得た。
学校生活との両立は悩ましい。宿題をなるべく学校で済ませ、帰宅して三、四時間、詰め将棋や棋譜並べ、インターネット対局をこなす。倉敷藤花戦にかかる期末テストの分を補うため、先の中間テストでは勉強に力を入れたという。
東京での対局には、出雲から夜行バスをよく利用する。十一時間半もかかるため、体力的な影響が懸念されるが、「いつもぐっすり寝られる」と本人は気にとめない。
小さなころから負けず嫌い。付き添う母親の治美さんも「負けると帰りのバスで機嫌が悪く、なぐさめても口をきかない」と明かす。このこだわりが、秘められた強さの一端なのだろう。
倉敷藤花戦では、第一人者の清水市代さんに挑む。倉敷を「心の古里」と言う清水さんがタイトルを守るか、里見さんが新たな時代の到来を告げるか。いやが上にも盛り上がる大一番だ。