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死因究明をめぐる溝は埋まったのか

 「毎回そうやって溝は埋まっていると言う。だからみんな駄目になっている」―。日本救急医学会の堤晴彦理事は10月31日、「死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)で、前田座長の「大きな溝があるように見えて、ほとんど溝がないように思う」との発言を痛烈に批判した。また、「(医療事故の原因を調査する第三者機関)医療事故調査委員会が設置された場合に協力する意思はあるか」との委員からの問いには、「納得するものなら必死でやる。しかし、納得しない形になったときに、協力しろと言われても、力は入らない」と述べた。堤氏は、「『医』と『法』の対立ではなく、対話を求める」として、対話の場の設置を厚生労働省などに求めている。

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同検討会の15回目となるこの日の会合では、医療事故調査委員会の設置に異論を唱える3学会からのヒアリングが行われた。

 堤氏はヒアリングの冒頭、「(第三者機関の設置を柱とする)大綱案に関して対立構造にあるかのようにいわれているが、本質的に意見の違いはない」と断った上で、賛成派と反対派に分かれる理由について、賛成派は「性善説」に立ち、反対派は「性悪説」に立っていると指摘。「賛成派は、大綱案がこの検討会で議論された精神通りに運用されれば、うまくいくと期待していると思うが、反対派は、法律というのはいったんできてしまえば、どのように運用されるか分からず、悪意を持つ人がいれば何とでも変えられたり、解釈したりできると疑っている。わたしたちもそのような立場に立っている。反対派ではなく慎重派と呼んでいただきたい」と語った。
 また、検討会にオブザーバーとして参加している警察、検察について、「現状を見る限り、警察はその他の犯罪捜査で手いっぱいで、医療事故の捜査まで手が回らないというのが本音で、事故調ができるのを静かに待っている。検察も無罪判決が続いて事故調が報告書を作ってくれるのを歓迎している。文字通りオブザーバーの立場で高みの見物をしている」と皮肉った。さらに、医療事故の被害者の弁護士にとっても得する話で、反対する理由はないとした上で、「医療事故調査委員会の設置に関し、反対派が少数に見えるのは、警察も、検察も、患者側の弁護士も物を言わない、そういう意味での反対が少ないということではないか」と指摘した。

 ヒアリング後の委員らの意見交換で、前田座長は「話を聞くと、大きな溝があるように見えて、ほとんど溝がないように思う。同じ制度をどう評価するかについて、性善説と性悪説のどちら側から見るかで全く色が違って見えることがあろうかと思う」と述べた。
 これに対し、堤氏は「毎回同じことを言っている。それが(会合が15回)続いた原因だと思う」と指摘。その上で、「座長は刑法学者であり、医療事故の刑事責任はどうなのか、など自分の本職できっちりやることが仕事だと思う。もし、この医療事故調査委員会が将来に向けた医療安全をやるのならば、座長を降りて医療側が座長に座るべき」などと批判を繰り広げた。
 前田座長は「いろいろな見方があり、わたしは(溝が)埋まってきていると思うし、新聞などでも埋まってきていると評価されていると思う」とした上で、「勝手に警察にやられては困るという気持ちはよく分かる。ただ、警察側も医師の協力なしには立件できない。主として医療が主導して、法律家の意見も入れて、『法』と『医』の現場を踏まえた対話の場をつくっていこうというのが偽らざる気持ち」と述べた。

 座長批判を繰り広げた堤氏は、委員からの「医療事故調査委員会がもしできたら、協力するのか」との質問に対して、「いかなるものかで変わってくる。納得するものなら必死でやる。しかし、納得しない形になったときに、協力しろと言われても、力は入らない。どんな事故調になるかで決まると思っている」と答えた。

 また、日本救急医学会が求めている「医療事故における業務上過失致死罪の明確化」などについて、「何が業務上過失致死になるのかということをあいまいにしたままでは、いかなる調査委員会をつくっても、うまく機能するとは全く思えない」と強調。明確化に向けて「『医』と『法』の対立ではなく、対話を求める」として、対話の場の設置を厚労省に求めた。


更新:2008/11/04 22:54   キャリアブレイン

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