医療介護CBニュース -キャリアブレインが送る最新の医療・介護ニュース-

CBネット |  医療介護CBニュース

医療一般


控訴審判決にあらためて批判

  「中原医師が全国の小児科を憂い、残してくれた遺書の一字一句を、裁判所が読み取れなかった事実に、多くの小児科医が落胆した」−。当直回数が最大で月8回、月平均5.7回と一般の小児科医の平均の1.7倍に上るなど、過重な業務によって過労自殺した小児科医中原利郎さん(当時44歳)の民事訴訟で、遺族ら原告が求めた病院側の「安全配慮義務違反」を認めず、訴えを棄却した10月22日の東京高裁判決に、医師や過労死の遺族らからの批判と抗議が相次いでいる。一方、妻のり子さんら原告が11月4日、最高裁に「上告受理」を申し立てたことに対し、「司法が正しい判断を示すべき」と支援の輪が広がっている。

【関連記事】
医師「過労死裁判」で遺族ら上告
医師の過重労働に「緊急停止ボタン」を
医師の7割超が仲間の過労死など経験
心身共に限界−疲れ果てる小児科医(前)
当直は過重労働−疲れ果てる小児科医(後)

 のり子さんら遺族を支援してきた「小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会」(以下、「支援する会」)の会長で、船橋二和病院(千葉県船橋市)心臓血管外科部長の守月理さんは、昨年3月の行政訴訟判決で労災認定され、民事訴訟の控訴審判決でも業務の過重性と中原さんのうつ病発症との因果関係を明確に認めながら、病院側の「安全配慮義務違反」を認めなかったことに対して、「控訴審判決は、全国の病院で常態化している労働基準法、労働安全衛生法違反を追認するばかりか、(医師の労働)環境改善を怠る病院や国に格好の免罪符を与えることになりかねない」と厳しく批判し、原告への支援を呼び掛けている。

 中原さんと同じ小児科医として、埼玉県済生会栗橋病院副院長で小児科部長の白髪宏司さんは、中原さんの遺書にも触れ、「日本の小児医療の在り方を学べなくてどうする。医療スタッフの労働環境や心身の健康に留意する姿勢は病院経営の根幹であり、よい医療提供の必須条件。今後の正しい判決により、行政への指導改革を含め病院経営の在り方を再考しなければ、同じことが繰り返される」などと警告している。

 また、「過労死・自死相談センター」名誉会員で、「全国過労死を考える家族の会」元代表の馬淵郁子さんは、控訴審判決について、「『うつ病の治療をすれば自死しないで済んだはず』と主張するが、業務の過重性と過密な仕事内容を分析し、治療する時間があったかどうかの重要な個所には言及していない」と疑問を呈した上で、「病院側が過重な業務を課しながら、うつ病を予見できなかったこと、司法が下した判断、その問題の大きさに怒りが込み上げる。『安全配慮義務違反』の黙認で、過労死が増産される」などと抗議している。

 さらに、小児科医を志している現役の医大生(4年)は、「裁判で、法的に病院が医師を支えてくれないと分かり、卒業後に研修病院に配属される時、何の支えもないまま医療の世界に飛び込まなくてはならないことに、背筋が凍る思い。判決が小児科を志す学生に影を落とさないこと、子どもを助けようと懸命に働く小児科医が傷つかない世界になることを願う」との意見を「支援する会」に寄せている。

 控訴審判決への意見などは既に40件を超えており、「支援する会」では今後、司法に正しい判断を求めるとして、http://kat.cc/0462a0で支援の声などを募集している。


更新:2008/11/04 21:08   キャリアブレイン

この記事をスクラップブックに貼る


注目の情報

PR

新機能のお知らせ

ログイン-会員登録がお済みの方はこちら-

CBニュース会員登録メリット

気になるワードの記事お知らせ機能やスクラップブックなど会員限定サービスが使えます。

一緒に登録!CBネットで希望通りの転職を

プロがあなたの転職をサポートする転職支援サービスや専用ツールで病院からスカウトされる機能を使って転職を成功させませんか?

キャリアブレインの転職支援サービスが選ばれる理由

【第35回】川合秀治さん(全国老人保健施設協会会長) 介護報酬改定の議論が白熱する中、全国老人保健施設協会(全老健)会長で、社会保障審議会介護給付費分科会の委員も務める川合秀治さんは、「2−3%上げても意味がない。減額される前の水準に戻してから議論すべき」と主張する。そのためには、予算を大胆に組み替 ...

記事全文を読む

 日原診療所(島根県津和野町)の須山信夫院長は、大学病院から中小病院、診療所と、これまで3つのステージで医療に携わってきた。高齢者が多かったり、大学病院時代に診療した経験のない小児科の患者がやってきたりと、地域医療に携わり始めた当初は大学病院との違いに戸惑ったというが、今では地域ならではの面白さも感 ...

記事全文を読む

病院の印象を劇的に変化!
「インプレッショントレーニング」

もし、病院の印象を劇的に変えることができるとしたら。今回は、そんな夢のようなことを現実にしてしまう「インプレッショントレーニング」をご紹介します。

>>医療番組はこちら


会社概要 |  プライバシーポリシー |  著作権について |  メルマガ登録・解除 |  スタッフ募集 |  広告に関するお問い合わせ