来年度の大学医学部の定員を今年度より約700人増やし、これまでで最も多い8486人にすると文部科学省が4日発表した。政府の方針を受け、文科省は地方の医療機関や産科、小児科で働くことを条件に、特例措置として増員を認める通知を出していた。ただ、地方や特定の診療科に医師が定着するかは不透明だ。
医学部定員は、81〜84年度が8280人と最多だったが、段階的に減らされ、07年度は7625人だった。しかし、医師不足が問題となり、政府は「緊急医師確保対策」を決め、今年度は168人増えた。また今年6月の政府の「骨太の方針」で、定員を過去最大程度まで増やす方針が決まった。
文科省は8月、地域医療に貢献することを条件に、79の国公私立大学長に定員増の通知を送ったところ、73大学が計画を提出。有識者で作る計画評価委員会が審査した結果、国立199人、公立49人、私立256人の計504人分が定員増となり、もともとの緊急対策による人数と合わせて693人分が今年度より増えることになった。
地域医療への貢献策として、47大学が、県内出身者や地元に残る意思を示す学生を募る「地域枠」を設け、62大学が卒業後の一定期間に地域で働くことを前提に奨学金を出す。このほか、すべての学生が地域医療を学び、地域で実習する▽学部段階から産科・小児科の教育を強化する、などの対策にも取り組む。
具体策として、ホームステイ型研修など地域住民とのふれあいを重視(福島県立医科大)、高校生の地域医療体験で目的意識を持たせて地域枠も設ける(旭川医科大)、4年生に産科、小児科、救急、外科で専修コースを設け大学と地域病院で専門医研修まで一貫した教育をする(山形大)などもあがっている。