社説
米軍地位協定/イラク政策を見直してこそ
十四万人の米兵がイラクに駐留する根拠である国連安保理決議が、この年末で失効する。そうなれば、米軍は基地から一歩も出られなくなる可能性もある。
米国とイラクは安保理決議に代わる地位協定の締結を急いでいるが、合意のめどがなかなか立たない。イラク国民や議会の反発が根強いのだ。
協定の草案には、イラクに駐留する米軍戦闘部隊が二〇〇九年六月までに都市部から撤収し、一一年末までに全面撤退することが盛り込まれていると伝えられる。
ただ、主権にかかわる米兵の免責特権などをめぐってイラク議会の同意が得られず、政府は米側に修正案を示した。イスラム教シーア派の反米指導者サドル氏派が、締結拒否を呼びかけて大規模なデモを行うなどの動きも出ている。
修正案には、米軍がイラク領内から周辺国に攻撃することを禁ずる項目も含まれる。シリアへの越境攻撃で民間人の犠牲者が出たことに配慮したようだ。
協定交渉がもつれる背景には、いくつかの理由が指摘できる。
まず、イラクで来年一月に地方選が予定されていることだ。米軍に対し「弱腰」と判断されれば、選挙に挑むサドル氏派に勝てない。そんな観測が与党内で強まり、妥協が許されなくなっている。
もっと重大なのは、治安や暮らしが一向に好転しないため、イラク国民自身が米軍駐留に反発を強めていることだろう。
自爆テロや戦闘は沈静化してきたが、失業率は最高で四割に達する。人口の二割に当たる五百万人が難民化していることが、イラクの厳しさを物語っている。
米国の次期大統領を決める選挙が迫っている。優勢が伝えられる民主党のオバマ候補は、就任後十六カ月以内の戦闘部隊撤退を掲げる。対する共和党のマケイン候補は、早期撤退に否定的だ。大統領選の結果次第で、米国のイラク政策に大きな違いが出てくるのは間違いない。
米国に求められるのは、イラク再建の展望を描き直すことだ。治安を回復して暮らしの安定を実現する。併せて、米軍の撤退時期も示す。イラク戦争を始めたブッシュ政権はそんな大事な仕事を積み残した。
米イラク地位協定の締結は、米国がその役目を果たすための法整備にすぎない。当面、暫定協定を結ぶなどして新政権の誕生に備え、イラク政策を練り直す方向に転換すべきだ。
(11/3 09:08)
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