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「脱処方せん」への道を

 「これからの薬局は、処方せんだけではない」と話すのは、茨城県坂東市で「つむぎ薬局」を経営する斎藤陽介さん。株式会社メディカルキャビネットの代表取締役社長として、処方せんに百パーセント頼らない薬局経営「脱処方せんへの道」を提唱している。
 今年3月には、「薬局の便利な利用法―知って得する4つの知恵―」を出版。「患者と向き合う薬局」を目指す先進的な取り組みが話題を呼び、薬局の開業を準備している人が見学に訪れるという。
 斎藤さんは「医療業界が激動の変化を続け、薬局数が年々増加している今、求められているのはマニュアル通りの対応ではなく、人間味あふれる接客や接遇」と力を込める。国の医療費抑制策の中で揺れる薬局経営―。今年4月の診療報酬改定の影響や、来年4月にスタートする登録販売者制度など、薬局経営をめぐる課題を聞いた。

■国の本当の狙いは、「患者の自己負担を増やす」

―今回の診療報酬改定の影響をお聞かせください。

 後発医薬品の使用を促進するために処方せん様式の見直しが行われた影響で、後発品の使用が多くなりました。後発品を選ぶ患者さんは全体の3割ぐらいでしょうか。売り上げはどうかといいますと、現在のところ「若干下がっている」という感じです。先発品の方が薬価が高いので、先発品を選んでくれた方が売り上げはいいのですが、利益の面では違います。「先発品から後発品に変える」という提案料が技術料として収入になるものの、売り上げ自体は下がり、利益も下がっている状況です。

―4月以降、積極的に後発品を薦める薬局が増えているとの声を聞きます。
 4月の改定で、調剤薬局向けに「後発医薬品調剤体制加算」が新設され、後発品の調剤率が30%以上の場合に4点の加算が設けられました。この影響はとても大きいですね。技術料を1点でも2点でも増やさないと、利益にはつながりません。売り上げや利益が下がっているので、このような点数に誘導される薬局は多いと思います。

―後発医薬品の使用を促進することで、医療費を抑制するのが国の狙いですね。
 確かに、先発品よりも後発品の価格の方が安いので、後発品を多く使用すれば医療費が削減できるかもしれません。先程申し上げたように、収益上は下がっています。
 しかし、国の本当の狙いは「患者さんの自己負担を増やしたい」ということではないでしょうか。例えば、コンビニエンスストアでもOTC(一般用医薬品)が購入できる「登録販売者制度」が来年から始まります。この制度は、「医療費抑制」という流れの中で出てきました。OTCは100%自費ですから、これを「登録販売者」にどんどん売らせよう、OTCが買えるところをどんどん増やしていこうということでしょう。つまり、医療機関をなるべく受診しないように仕向けているように感じます。そのような政策に対して、医療機関や薬局は今後どうしたらいいかが問題になるわけです。

■選ばれる薬局づくりを

―これからの薬局には、どのような役割や機能が求められているのでしょうか。
 やはり、患者さんから選ばれる薬局になれるかどうかでしょう。例えば、ドラッグストアには、勤続年数が長くて給料が高い薬剤師がいます。
 登録販売者制度が始まると、若い人材が多く入ってきて、そこに競争が生まれる。薬剤師の資格はないけれど、やる気やガッツがある「登録販売者」にあおられ、ふるいに掛けられる中で、質の高い薬剤師が残るようになるでしょう。
 “できる薬剤師”や“看板になる薬剤師”の存在こそが、選ばれる薬局づくりには欠かせないのです。

―薬剤師の質が問題になるわけですね。
 
そうです。患者さんと密に接することができる資質やコミュニケーション能力などが重要です。ただ、調剤薬局の場合は、待合室に次の患者さんが控えているので、どうしても次の患者さんを意識してしまいます。このため、患者さんと密に接する時間を十分に取ることができない場合があります。
 一方、ドラッグストアの場合は、お客さんが少ない時なら、ゆっくりと話をすることができます。従って、調剤薬局では患者さんとのコミュニケーションをいかに取るかが重要になるわけです。特に、大きな病院の近くにある「門前薬局」では、お薬の説明を形式的に、機械的に済ませてしまうことがあると聞きます。待合室にいる大勢の患者さんを見ると、すごいプレッシャーになりますから、「その言葉に心がない」という状況になりがちです。

―病院の外来で待たされ、さらに薬局で待たされ、いらいらしてしまうことがあります。
 病院の場合は、診察室の中で何をしているのかが見えませんので、「待てる」というところがあります。ところが、調剤薬局の場合は、スタッフが何をしているのか、患者さんにはある程度分かります。ですから、「待つ」ということが苦にならないように、待合室にテレビを置く薬局もあるようです。
 しかし、つむぎ薬局には、あえてテレビを置きませんでした。そして、調剤室と待合室を対面にして、患者さんとスタッフがコミュニケーションを取れるようにしました。そうすることで、患者さんのニーズを詳しく聞くことができます。病気の時は、誰でも弱くなるものです。そういう時こそ、患者さんとしっかり向き合うことが基本だと思います。その先に、地域の方々とのお付き合いが継続的にできると考えます。

―継続的に患者さんと向き合える。これは調剤薬局の大きな魅力です。
 つむぎ薬局では、病気にならないための知恵や健康増進の方法など、季節に合わせたタイムリーな情報を「つむぎ通信」でお伝えしています。また、つむぎ薬局に来てくれたお子様が描いた塗り絵を「つむぎの森美術展」と称して薬局内に掲示するなど、地域の皆さんとの触れ合いを大切にしています。スタッフの提案で、「ゴミなくし隊」というごみ拾い活動も実施しています。
 今年の3月には、「薬局の便利な利用法―知って得する4つの知恵―」という本を発行しました。「お薬を受け取る時の前準備」「お薬と上手に付き合う3つの法則」など、薬局の便利な活用の方法を詳しく解説しています。お客様から、「こんな利用法もあったのか」「今まで勘違いしていた」、また、同業者からは「新人教育に使わせてもらう」「この表現は服薬指導で使える」といった、大変ありがたいご意見を多数頂きました。

―薬局で提供するのは、薬だけではない。まさに、「脱処方せん」ですね。
 そうです。薬の安全性に関する情報を提供することはもちろん、それだけではなく、患者さんの日ごろの心配事に耳を傾けたり、健康づくりのお手伝いをしたり、地域の薬局が果たす役割は幅広くあります。もちろん、薬局の基本的な役割は利便性です。急性の患者さんであれば、薬をもらったら自宅に帰ってすぐに寝たい。このような患者さんに対しては、利便性が重要です。しかし、家に帰っても誰もいない、周囲に話し相手がいないお年寄りもいますので、利便性だけではないと考えています。
 例えば、メタボリック対策として、医療食のカタログや薬局が推薦する健康食品を紹介するなど、「つむぎ薬局に行けば、今必要な情報や品物が手に入る」という薬局を目指しています。それが、結果として収益につながれば、「脱処方せん」と言えるのではないでしょうか。薬局経営は処方せんだけではありません。つむぎ薬局は、今後も患者さんの声をキャッチしながら、それに応えられるような事業を展開していきたいと思います。


更新:2008/11/04 11:50   キャリアブレイン

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