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2008年11月4日

◎金沢港大水深岸壁 投資に見合う経済波及効果を

 金沢港大浜地区で大水深岸壁を擁する多目的国際ターミナルが供用を開始した。整備さ れた水深十二メートルの岸壁は「国際港」の一つの目安とされ、金沢港は名実ともに日本海側の物流拠点港としてのスタート地点に立ったといえる。

 大水深岸壁は言うまでもなく、活用されて初めて価値が生まれる施設である。使いこな すには金沢港に荷物を集めて航路を拡充し、さらに荷物を増やすという好循環を引き出す必要があり、港湾活用型企業の誘致や金沢港を「地元港」とする荷主を増やすことが大きな課題となる。大型投資に見合う経済波及効果を引き出し、地域全体に広げていきたい。

 世界的に貨物船の大型化が進む中、金沢港は三万トン級の入港が可能となり、物流機能 は飛躍的に高まった。とりわけ北米、中東などへの長距離輸送では一度に大量の荷物が運べることによって輸送コストの低減も期待できるだろう。

 大水深岸壁の整備に合わせ、コマツは大浜地区で操業を開始し、隣接地区では第二工場 も来年夏に稼働する。県は東部工業用地を新たに造成するなど金沢港を産業活動の最前線とする動きが本格化してきた。雇用拡大や税収増にもつながる産業集積は、港湾整備と同時に行政が取り組む最重点課題である。陸送コストの削減は企業にとっても競争力強化のかぎを握る。県は追い風を無駄にせず、企業誘致に全力を挙げてほしい。

 コマツは北陸のメーカーと調整し、共同出荷の可能性も探っている。コマツがこれから 活用する中東、東南アジア便が定期化すれば新たな基幹航路となり、日本海側における金沢港の地位は相対的に高まることになる。太平洋側の港に流れている荷物を取り戻すまさに好機であり、行政も一体となって取り組む必要がある。

 多目的国際ターミナルは国直轄事業として約百七十億円を投じ、二〇一五年度には水深 十三メートル岸壁が完成する。県に求められるのは港の管理にとどまらず、「港湾経営」の意識である。利用する個々の企業のみならず、港の機能強化の恩恵を幅広く地域全体に行き渡らせる戦略を描いてほしい。

◎新型インフル対策 次は食の安全をテーマに

 新型インフルエンザ対策で、日中韓が共同行動計画に合意し、情報共有の必要性を認め 合ったことは、望ましい一歩だ。情報が秘匿されたり、検疫や隔離などの対策がバラバラでは、大混乱が起きるのは目に見えている。新型肝炎(SARS)流行時の失敗を繰り返してはならない。

 ただ、日韓をはじめ、アジア諸国が直面している保健・衛生面での最大の脅威は、「食 の安全」である。今回の日中韓の共同行動計画は、情報の共有と言いながら、現実的には中国側の情報開示を促すところに主眼がある。次回会合では「食の安全」がテーマになる見通しであり、新型インフルエンザ対策に続く共同行動の具体案をまとめて欲しい。

 中国産の加工食品を大量に輸入している日韓両国にとって、中国側の情報開示の重要性 は高まるばかりだが、中国側の対応は後手に回っている印象がある。中国政府は食の安全の問題が、国際社会の信頼を大きく損ない、国内経済に大きな影響を与えている現実を直視してほしい。

 有害物質メラミン混入など中国の食の安全は、世界規模の問題だが、食料輸入の多くを 中国に頼る日本や韓国、台湾などにとっては、より深刻な問題といえる。中国と台湾による「中台対話」で、食品検査体制の強化が主要議題となるほど、中国製食品を見るアジアの目は厳しい。日本が同じ不安を抱える韓国とともに、中国との話し合いのテーブルに着き、アジアの声、ひいては世界の消費者の声を伝える意味は大きい。

 日本で開催される次回会合は、情報を出し合い、ともに考え、行動していくために何が 必要かを話し合う重要な場になる。中国製の加工食品や野菜などを大量に輸入している日韓は、何か問題が生じた場合、迅速に連絡を取り合って被害を最小限に食い止め、原因を特定していくために欠かせないパートナーになれるだろう。

 その場合、まず重要なのは、日中韓で取り組む新型インフルエンザ対策と同様、情報の 共有であり、速やかに情報開示を行う仕組みづくりに取り組んでもらいたい。


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