2004年09月11日

郵政労組 特定郵便局を簡易郵便局にしては?

4b8d035e.JPG 今日、全日本郵政労組の宮下彰と日本郵政公社労組の菰田義憲が二人並んで記者会見を行った。郵政民営化を小泉内閣が党内手続きを経ないまま強引に閣議決定したことを批判するためのものである。郵政労組側の言い分は多種多様に渡るものの、とりわけ強調しているのが、日本全国津々浦々、一律の平等なサービスを提供できる体制=ユニバーサルサービスが崩れるという点である。たしかに現実に過疎地や離島などで金融機関が郵便局以外に存在しないという地域はまだかなりある。郵便局が担ってきた機能のうち特に郵便の業務については主権者たる国民はだれでも最低限度のサービスを受ける権利がある。これが崩れることは極めて問題である。

 私は小泉純一郎らの郵政民営化の理屈に賛成しない。だが、それ以上に郵政族議員、総務省、職員労組などの理屈には賛成できない。彼らは元々完全な国営維持を要求していたのである。以前のコラムでも書いたが、特定郵便局は自民党郵政族議員の極めて堅固な集票マシーンとして政治的に盤石の結束を固めてきた。局長の世襲制、渡切費、選挙違反の続発など独占事業の特権的地位の上に胡座をかいてやりたい放題をやってきた次第であった。特定郵便局とはつまり、選挙動員装置であった。決して全国津々浦々の国民のために無私の奉仕をすべく全力を傾けてきたなどとは言うことはできない。

 今まで郵政労組や郵政族議員らは一度たりとも

 「特定郵便局を全て簡易郵便局に転換して特権を廃し、逆に郵便局の数は増やしてユニバーサルサービスを向上させよう!

 などと提言したことはない。また、郵便貯金の膨大な金が財政投融資として公共事業資金に大規模に投入され、莫大な財政の悪化、公共事業のゆがみ、特殊法人の膨張を生んでいることを知らなかったとはいわせない。

 「郵貯の財政投融資を抑制して、公共事業や特殊法人改革を行おう!」
 
 などといったこともない。今まで散々、主権者たる国民を阻害した私益獲得に狂奔してきたくせに、今になって過疎地や離島がかわいそうだなどとよく言えたものである。40年前にいってほしかったものである。
 
 ただ、注意すべきは小泉純一郎を初めとした郵政民営化の議員は、「大蔵族」といわれる連中であることである。世界最大の金融機関、郵便貯金が民営化されれば既存の民間金融機関にとってはこれ以上ない追い風になる。民業を大きく圧迫しているのが郵貯だからである。だから、大蔵族議員は郵貯の民営化に力を入れる。

 大蔵族、それはメガバンクやノンバンク、証券業界などから多額の政治献金を受け取り彼ら金融業界に深く根を下ろしている政治家集団ということができる。また、小泉は菅直人の直後に厚生大臣を務めたように、橋本龍太郎ほどではないが厚生族としての一面も持っている。だから、小泉政権では厳しい金融改革や医療改革は決して出来ないのである。坂口力という日本医師会の代弁者を厚生労働相に登用し、独占禁止法の規制とは全く逆方向の持株会社解禁をどしどし推進したことからもそれはわかろう。

 金融界に甘いという小泉の傾向は今の閣僚の面々を眺めればすぐわかる。竹中平蔵、石原伸晃、谷垣禎一など名うての新自由主義経済学メンバーがずらり揃っている。本来ならば金融業界の経営陣の相当多数が刑事法上の訴追を受けたり、経営上の責任を問われて民事損害賠償を払わされて当然の立場にあるが、決して小泉や竹中、石原らはそうした主張をしない。市場法としてのリーガルマインドの資質が全然ないのである。
 
 それが証拠に、違法な犯罪集団そのものというヤミ金、マチ金がまともな対策もとられずに野放し状態。暴力団の資金源にすらなっているというのに、銀行からの潤沢な資金がノンバンクを通じてこうしたヤミ金融に流れている。ヤミ金融問題に精通している宇都宮健児弁護士らは10年も前からこうした実態を告発し、刑罰金利の引き上げを提言してきている。

 数年前に悪名を轟かせた商工ローンのロプロ(旧日栄、松田一男)やSFCG(旧商工ファンド、大島健伸)らにしても、あれほどの違法を重ねながらちゃっかり社名だけは変えて今もおとがめもなしに営業を続けている。社長自ら盗聴で逮捕された武富士はそのどす黒い経営実態が珍しく明るみに出たケースだったが、アコム、レイク、プロミスら同業他社が健全な企業だということでは決してない。こうした許し難い金融不公正のオンパレードはまともな金融行政を断行できる人材が舵を取って入れば決して引き起こされなかったことであろう。

 郵政の労組幹部の方々に申し上げたい。いかにも自分たちは甘い汁を一切吸わずに国民全体のためにご奉仕したいのですと言わんばかりのPRをするならば、明日にでも「全ての特定郵便局を簡易郵便局にしましょう。」と提案なさってはどうですか?特権こそありませんが、安上がりで小規模で機動的なサービスが展開出来る簡易郵便局で郵政サービス上、困ることは何もないのですから。そうすればあなた方の言い分は十分な説得力を持つでしょう。

mediaterrace at 01:59 │Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ! 政治 

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