本紙備後版に七月から毎週日曜日付で圓鍔記念館(尾道市御調町高尾)の宮迫卓督館長の寄稿で、収蔵品を紹介する企画を掲載している。作品にまつわるエピソードや制作の背景など、毎回興味深い。
記念館は、同市御調町出身の文化勲章受章彫刻家・圓鍔勝三氏(一九〇五―二〇〇三年)の功績をたたえ、一九九三年に設けられた。
企画のスタートは、夏祭りのシーズンということで「みあがりおどり」、終戦記念日に近い時には小説をモチーフにした少女像「ガラスのうさぎ」といったように、タイムリー感を持たせるよう工夫している。
印象に残っているのは、九月に掲載した「千年桜」「早春の調べ」。圓鍔氏が八十六歳、八十七歳の時の作品。敬老の日にちなんで内容をまとめているが、福山、井原に関係の深い平櫛田中氏、長崎の平和祈念像を制作した北村西望氏、そして圓鍔氏はいずれも百歳を超えるか、それに近い長寿だったことを指摘。「どこからあの気力と発想が生まれてくるのか、芸術家(彫刻家)だからといってしまえばそれまでですが、不思議なエネルギーのある人たちです」と感心している。
圓鍔氏は長寿の秘訣(ひけつ)を聞かれ、「豊かな想像力」「細かい手仕事の連続」を挙げ、加えて宮迫館長は作品が醸し出す「色気」を失わないことが大切と記す。
彫刻が発するメッセージをそれぞれの感性で楽しむ「芸術の秋」。備後地方での紅葉見物も兼ねて記念館を訪れてみてはいかがでしょう。
(福山支社・鳥越聖寿)