米海軍が日本に初配備した原子力空母「ジョージ・ワシントン」の中枢部を取材しました。
アメリカ海軍が日本に初めて配備した原子力空母「ジョージ・ワシントン」の中枢部を取材し、作戦能力や極東展開の意味を検証しました。
9月25日、神奈川・横須賀港に入港したアメリカ海軍の原子力空母「ジョージ・ワシントン」。
これからは、横須賀港が事実上の母港となるが、原子力空母の日本配備は史上初のこと。
シーファー駐日大使は「(本艦は)日本の安全保障を高めるために、そしてまた、アメリカの安全保障を高めることになるのです」と話した。
全長330メートル、乗員およそ5,000人、70機の艦載機が搭載可能という巨大さで、甲板の「F/A-18F」戦闘攻撃機は、この空母の攻撃力を担う。
敵のレーダーを妨害するなど電子戦を担当する「EA-6B」に、円形のレーダードームが特徴の早期警戒機「E-2C」は、展開地域の地上や空域を広範囲に監視する。
入港に先立ち、一部のメディアには、事前に空母内部の取材が許されていた。
早朝、東京湾上の空母に降りたFNNの取材陣は、空母の中枢部へと入った。
実際に戦闘態勢時に指揮を行う戦闘指揮所で、取材陣は、新たに導入されたというシステムについて質問した。
担当士官は「(CEC導入の効果は?)詳細は言えないが、能力の向上はできているよ! (CECの端末はここに?)ここにはない。見せたいのだが、見せられないものもある」と話した。
作戦担当士官が搭載を認めたのは、「CEC(共同交戦能力)」と呼ばれるシステムで、これは、弾道ミサイルを迎撃するイージス艦の弱点を補うシステム。
通常、イージス艦は、広範囲で強力な防空能力を持つ。
しかし、弾道ミサイルを追う場合、レーダーを集中させるため、自らの防空機能は低下する。
このときCEC搭載空母は、中継機を介し、味方艦船の現状データをネットワーク化し、防御力を振り分けるなど弱点をカバーできるという。
軍事評論家の岡部 いさく氏は「『ジョージ・ワシントン』のCECとともに、アメリカ海軍は、もう1つ、新しい攻撃能力も日本に持ってきているようですよ」と話した。
その攻撃能力は、極東全域に及ぶものだという。
米軍が日本で運用するLSRS(沿岸捜索レーダー)は、海上の艦船や沿岸の自走ミサイル発射機など大型トレーラーを発見し、攻撃目標として識別できる。
そして「ジョージ・ワシントン」は、このレーダーのデータを受け取ったF/A-18に、攻撃を指示することもできる。
甲板下の格納甲板には、「ジョージ・ワシントン」の攻撃力が搭載兵器とともにあった。
GPS誘導での滑空爆弾「AGM-154JSOW」、そして「AGM84K SLAM-ER」は、280kmという長い射程を持つという。
岡部氏は「原子力空母であるということ、それと、LSRSによって沿岸や洋上への精密な攻撃が可能になるかもしれないということ、これが注目ですよね。原子力空母は、長時間高速で航行できる。つまり、作戦範囲と攻撃力が大きく強化されているわけです。そうすると、周辺国家の中には、これを脅威と見る国もあるかもしれませんよね」と話した。
岡部氏の指摘通り、極東では今、不穏な動きが見られるという。
10月、日本近海には、中国海軍の最新型フリゲートと大型ミサイル駆逐艦が、艦隊をなして出現した。
この中国軍の動きには、伏線があった。
アメリカ国防総省は10月上旬、65億ドルもの高度な武器を台湾に売却する計画を議会に通告した。
中国側はこれに反発し、今、アメリカと中国の間には、ひそかな緊張感が漂っている。
岡部氏は「台湾への武器売却については、中国も神経をとがらせるでしょう。しかも、『ジョージ・ワシントン』とLSRSが一緒になるとすれば、中国軍としてはもっと神経をとがらせるかもしれません。ここのところ、日本の周りで中国海軍の動きが活発になっているというのは、これは単なる偶然なんでしょうかね」と話した。
極東全域に広がる作戦能力を手に入れたとされる「ジョージ・ワシントン」の存在は、極東に何をもたらすのか。
(11/04 00:46)