知的生産とパソコンについて論じる。(前項と違って、IME 以外の面で。)
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前項では、IME についてのみ述べた。そこで、「知的生産とパソコン」というタイトルに対して、「羊頭狗肉だ」という批判が来るかもしれない。済みません。 (^^);
そこで、他にどんな情報があるかと思って、ネットを検索してみた。
「知的生産 パソコン」
という検索語で。すると、興味深い本が二つ見つかった。
(1) 「超」知的生産とパソコン …… 野口悠紀雄
http://www.sam.hi-ho.ne.jp/s_suzuki/book_chochiteki.html
IT関係者ならばすでに知っていることが多いし、また、著者以外には便利そうでないところも多い。
悪い本ではないが、金を払う価値があるかどうかは、微妙。とりあえず買っておいて、暇つぶしに読むのなら、悪くないかも。
ただ、全体としては、賞味期限切れという感じだ。十年前(1998/11)に出た本だし、当時は興味深いとしても、今ではちょっと古色蒼然で、歳月を感じさせる。
(2) 「効率が10倍アップする新・知的生産術」 …… 勝間和代
http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/51256358.html
テレビでは売れっ子だが、まともな経済学者には悪評さくさくの、勝間和代の本。
馬鹿にしながら、内容紹介を読んだが、意表を突かれた。これは案外、まともな本である。いや、立派に評価するに足りる。お勧めできそう。
ここに書いてあることをすべて実行する必要はない。知的生産のバイブルではない。しかし、情報がたっぷりある。取捨選択するとして、3割を得るだけでも、十分に価値がある。
しかも、そのこと自体、この本に書いてあるのだ。
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勝間の本を契機に、ちょっと論じてみよう。
一般に、本というものは、どんどん買っていいのだ。そのなかに少しでも宝があれば、本をどんどん買う価値はある。
凡人の発想 「千円の本を十冊買って、価値ある本が1冊だけならば、9千円が無駄だ。利口な人間は、価値ある本を1冊だけ買う。そうすれば、コストパフォーマンスが最大化する」
勝間の発想 「千円の本を十冊買って、価値ある本が1冊だけだとしても、その千円の本から得られる知識が百万円分であれば、差し引きして大幅な利得になる。残りの9千円が無駄になっても問題ない。利口な人間は、無駄を承知で、たくさんの本を買う。本代を惜しめば、かえって損する」
この勝間の発想は、私が子供のころから実施していたことだ。子供にでもわかることだから、とりたてて独創的なことでもない。
しかしながら、この基本を理解していない人が非常に多い。「凡人の発想」(むしろケチの発想)を取る人の方が、圧倒的に多い。
その証拠が昨今の、「本の売上げの減少」であり、「読書時間の減少」だ。「ネットで無料の情報を得る方がずっと得だ」と思う人が圧倒的に多い。そのせいで、結局は、現代の人々は白痴化していく。読書をまともにやる人(本を買う人)は、今では50代以上がほとんどであり、30代以下では本を買うことが少なくなってきている。新聞についても同様だ。そして、こういう関係に比例して、30代以下はどんどん白痴化していく。
若い世代は、「情報を得ることが大事だ」と考えばかりで、「他人の情報を得る」ことには熱心だ。だが、「自分の頭で考える」ことはほったらかし。そして彼らは、「自分の頭で考える」ことなしに、「他人の情報を得る」ことを、「知的生産」だと見なしている。
はっきり言っておこう。「知的生産」とは、情報を調べることや整理することではなく、情報を自ら生み出すことだ。それが主であり、パソコンによる情報整理などは従である。
主であること(情報を自ら生み出すこと)のためには、機械を操作することなしに、黙って自分の頭で考えている時間が必要だ。考えもなしに、ただ機械を操作しても、無駄な情報が生み出されるだけだ。
自分の頭で考えることこそ、何よりも大切である。ただし、自分の頭で考えるにしても、いきなり無から独創的な発想を生み出すことはできない。自分の頭で考える前に、他人の考えを知る必要がある。そして、そのためには、本を買って読む必要がある。無料の情報にはまともなものが少ないが、有料の情報には価値あるものが見つかるからだ。
そして、ここでは、無料の情報と有料の情報は、対比されない。なすべきことは、「無料の情報と有料の情報の双方を得る」ということだ。(しかるに、ここに気づかない凡人は、「無料の情報だけの方がコストパフォーマンスが高い」と信じて、情報代を節約する。そして、浮いた金で酒を飲み、馬鹿になりながら、「おれは利口だなあ」と自惚れる。)
ともあれ、自分の頭で考えるためには、他人の情報を十分に得るべきだ。その際には、情報の対価を払うべきだ。身銭を切るべきだ。そうしてこそ、まともな情報を得ることができるし、得た情報が身につくし、自分なりの独創的な発想をなすこともできるようになる。
( ※ ついでだが、「情報には対価を払う」という発想は、非常に重要だ。対価を払うから、価値ある情報を得ることができる。逆に、「対価を払いたくない」と思うと、クズ情報ばかりを得ることになる。……その典型が、池田信夫だ。彼はしきりに「著作権料なんか払いたくない」という論議を繰り出す。よほど著作権というものが嫌いらしい。そういう発想を取るから、彼の本は、金を払って買うような「価値のある情報」が皆無になる。かくて、彼の本は「価値なし」となって、売れなくなる。仕方なしに、ネット上で無料情報を発するしかなくなる。彼はすごく読者がいて、とても有名で、自分でも威張っているのだが、いくら読者がいても、彼の情報に金を払う気のある読者は少ない。「情報には対価を払う」という発想がなければ、その人もまた、「情報によって対価を得る」ということができなくなる。つまり、価値のない安物情報しか発することができなくなる。)
( ※ ま、それでも彼は、Amazon アフィリエイトでけっこう金儲けをしているようだ。しかし、情けないですね。私のブログには、Amazon アフィリエイトなんかないし、「金儲けが目的じゃない」という方針を貫いている。しかし池田信夫のブログは、Amazon アフィリエイト満載で、「金儲けが目的」という方針を取る。それでいて、著作で儲けることができない。……その点では、「著作で儲ける」という野口悠紀雄や勝間和代の方が、はるかに利口であろう。たとえ彼らの情報が額面どおりの価値はないとしても、とにかく金を払う読者がいるのだから。。)(ま、タイトルの付け方が上手で、羊頭狗肉名のかもしれないが、それはそれでまた金儲けが上手ということだ。)
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話を戻そう。
勝間の本は、結構お勧めである。その内容は、私にとってすべてが賛同できるものとは言えないのだが、私が日ごろ考えていることと、見事に一致する点も多い。「金を払って本をたくさん買う」という点も、その一つだ。
これほどにも、私の方針と一致する本は、他には見たことがない。その意味で、結構お勧めだと思う。
いや、それ以上だ。この本には、私の知らなかったことも、結構書いてある。その理由の一つは、彼女の方が私よりもずっとお金持ちだ(投資資金がある)、ということだ。彼女は、あれやこれやとIT商品を買って試している。だから私よりもいろいろと詳しい点がある。
その意味で、私がハードやソフトの本を書くよりも、彼女が書いたこの本の方が、ユーザーには役立つだろう。「いかにITのハードやソフトを使いこなすか」というような技術なら、私よりも詳しい人がいくらでもいるはずだ。
そして、そういう人の書いた本の中でも、勝間の本は特筆するべき価値がある。彼女自身は、経済学の面でとりたてて独創的な業績をなしたわけではないのだが、そういう独創性のない人でも、情報をうまく活用することで、有名になって金儲けをすることができる。……そのためのコツを、この本は見事に明かしてくれているようだ。
あなたが「自分は天才だ」と思うのであれば、この本を読む必要はない。だが、あなたが「自分はちょっと頭のいい秀才にすぎない」と思いながら、「独創性はないけれど、業績だけは上げたい」と思うのであれば、この本はお勧めである。この本は「ちょっと頭のいい秀才が業績を上げるための方法」という感じで読めば、けっこう役立ちそうだ。
ま、払った金の価値があるかどうかは、人それぞれだろう。しかし、「もともとはずれたって構わない」というくらいの気持ちで読めば、「ちょっとでも有益な情報が見つかったなら、儲けもの」と思うだろう。値段も大したことはないし。
たかが千五百円ぐらいの金を払うのを惜しむかどうかで、あなたの人生はけっこう変わるのだ。(ただし、その千五百円は、この本を買う金とは限らない。今後しばしばめぐりあう「ちょっとぐらい有益な本」すべてに払う金だ。)
( ※ 蛇足だが、勝間の本を勧めるからといって、Amazon へのリンクは付けません。Amazon へのリンクをつければ、私の金儲けになることはわかっているが、私は池田信夫や、どこかの有名ブロガーとは違うので。……したがってまた、私が金儲けする気もなくお勧めしているという点からして、私のお勧めは結構信じられる、とわかるだろう。……とはいえ、別に、勝間の本を買う必要はありませんよ。それはあなたの勝手だ。あなたが買おうが買うまいが、私には全然関係ない。本項はあくまで、私の読者サービスとして書かれている。私の金儲けが目的じゃありません。アフィリエイトの手数料が入るわけでもないし。)
結論。
知的生産について、「いかに発想するか?」という基本は、なかなか表現しがたいところがある。しかし、その一部は、IME の利用で向上できる。(前項。)
一方、IME 以外の面で、知的生産とパソコンについての情報を知りたければ、私の話を聞くより、勝間の本を読む方がいいだろう。私はハードやソフトの調査をやり尽くした業界人じゃないので。
こういう細かな表層的なこと(商品知識など)を知っているのは、お金をかけて試した人だけだ。私のような貧乏人の語るべきことじゃない。
私が語るのは、「その知識はここにある」と示すことだけだ。その知識自体は、私よりももっと適任者にお任せする。
( ※ 一般に、私がやることは、物事の基本原理のみ。細かな技術的なことは、他人にお任せする。特に、調査費用のかかることは、私には不向きだ。理由は、言わずもがな。 (^^); )
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本文の最後に、ちょっと、お役立ち情報。
知的生産のためのソフトは、何がいいか? 実は、私は、知的生産のためのソフトを紹介することはしないが、知的生産のためのソフトを開発することやる。
下記に、私の開発したソフトがある。好評。(素人には高機能すぎるが。大量に執筆する人向け。)
→ ワープロ機能拡張セット
→ 知の道具箱 (表紙ページ)
※ このソフトは MS-Word95 〜 MS-Word2003 の上で働きます。
( MS-Word2007 の上で働かせるのは、ちょっと難儀。
インターフェース・操作系が、うまくできないので。
機能そのものは大丈夫だが、たやすく使えないわけ。)
※ 上記の表紙ページには、他のソフトもいくつかあります。
JIS文字の字体変更を調査する「字体チェックマクロ」など。
※ 以下は、細かな話。上記についての留保のような解説。
[ 付記1 ]
ついでに言っておこう。たとえ勝間の本を買ったとしても、頭ごなしに受け入れるべきではない。
第1に、自分に合わせて、情報を取捨選択する必要がある。各人ごとに、役立つものものあるし、役立たないものもある。人それぞれなのだ。(私が思うに、大半は役立たないと思う。それでも、ところどころに大切な情報があれば、それで十分なはずだ。)
第2に、単に読むだけでなく、読みながら考えるべきだ。ここでは「受け入れること」ではなく、「考えること」が大切となる。読書の大切さは、そこにある。単に高速に情報を受け入れることが大切なのではない。情報を受け入れながら、自分の頭で考えることが大切なのだ。つまり、「批判的に読む」ことが大切なのだ。……そして、その意味では、「私はものすごく高速に読書できます」というような方針は、正しくない。ご注意あれ。
( ※ その方針は、勝間の方針。一カ月で 100冊以上読むそうだ。だから彼女の発想は、独創性がないのかも。情報を受け入れることはできるが、情報を自ら生み出すことができない。)
[ 付記2 ]
勝間和代とはどういう人か? 本人のブログに行って、いろいろと調べてみた。すると、図式的に、次のことがわかった。
池田信夫 < 野口悠紀雄 < 勝間和代
つまり、三人とも同じレベルにいるのだが、勝間和代が一番成功している。(つまり売れている。)この意味では、野口悠紀雄よりも上だ。
一方、学問的な業績はゼロという意味では、クルーグマンとはまったく別のレベルにいる。座標軸が異なっている、とも言える。
だから、勝間和代をクルーグマンと比較するのはナンセンスだし、学問的な業績の有無で比較するのもナンセンスだ。勝間和代は自分の利益が目的なのだし、クルーグマンは世界の利益(つまり真実)が目的だ。比べようがない。
ただ、普通の人にとっては、勝間和代の方がずっと役立つ。普通の人は、クルーグマンの真似など、したくてもできない。真似をしようとすれば、カエルが牛の真似をするようなもので、破裂するだけだ。一方、勝間和代の真似なら、凡人にも可能である。彼女は優秀な凡人であるがゆえに、ただの凡人が彼女の真似をすることも可能なのだ。そして、失敗することなく、いくらかは成功するだろう。
比喩的に言おう。あなたがアインシュタインの真似をして、相対性原理のようなものを発見しようとしても、人生の無駄である。しかし、あなたが実業界の成功者の真似をしようとしたら、いくらかは有益な点もあるだろう。そのすべてを実行できないとしても、いくつかは真似できる点をも見つけるだろう。そして、そのために払うコストが 1500円程度であれば、決して無駄ではない。
仮に勝間和代が、「これで儲かりますよ」と称して、文書の表紙だけを見せながら百万円を取るのであれば、詐欺師になる。しかし、あらかじめ立ち読みを許した上で、 1500円程度しか受け取らないのであれば、詐欺師にはならない。そしてまた、それを読んだ人が、「読んだけど、相対性理論のようなすごい業績を生み出せないぞ」と文句を言うべきでもない。
本というものには、過剰な期待をするべきではない。彼女の本に書いてあることは、多くが常識的なことだが、そういう常識的なことを整理して呈示するだけでも、多くの素人にとっては役立つものだ。
そもそも、本というものは、一冊のうちのところどころに、小さな砂金がいくらか見出せるだけだ。せいぜいその程度のものにすぎない。そして、そうわきまえておけば、過剰な期待をしないで、「ふーん、おもしろかったな」と感想を述べることもできそうだ。
ま、もともと独創性のある人だと、「こんなこといちいち聞くまでもない」と思うだろう。だが、世の中の大多数は方法論のことなど考えない凡人なのだから、他人の実体験などを聞いてみるのは、それなりに役立つものだ。(自分が金をかけてトライするリスクを減らすこともできる。)
とにかく、読書については「過剰な期待をしない」ということが大切だ。そう理解している人々だけが、大量の有料情報をつかむことができるし、そのあとで、ところどころに砂金を見出すこともできる。……そして、そういう小さな差の蓄積が、結果的には大きな差となって現れる。
勝間勝代はまさしく経済的に成功しているのだ。たとえその内容には学問的な成果がないとしても。……そして、そういうふうに、「無能でも儲ける」ということこそ、たいていの人にとって有益な知識となるはずだ。
( ※ あなたもそう思っているでしょ? 「自分は凡庸だが、うんと成功したい」と? だからこそ、本項を読んだんでしょ? そして、そういう人のために上手に本を書くのが、勝間和代だ。彼女は決して、ただの凡人ではない。そのことは保証できる。あと、性格的に言えば、彼女は悪い人じゃないと思いますよ。少なくとも、池田信夫に比べれば、お友達になれます。お友達になると、御利益で、少し儲かります。 (^^); )
( ※ ただし、勝間の本については、否定的な評価もある。ネット上では、悪評もチラホラと窺える。だから、私が彼女をちょっと褒めているからといって、「ああ、素敵な女性だな」と思って、惚れたりしない方がいいでしょう。……もともとそんな心配ない? (^^); )
[ 付記3 ]
私が勝間和代の話を読んで感じたのは、次のことだ。
「自分のやった体験に基づいて語っている。失敗も成功も体験して、その体験に基づいて語っている。ただの抽象論ではない」
これは大切なことだ。なるほど、大きなことは述べていないが、そのかわり、自分で体験したことに基づいて、エッセンスを語っている。
ひるがえって、他の経済学者(誰とは名を上げませんが …… あ、もう名を上げちゃったか。 (^^); )は、そうではない。彼らは自分がやったわけでもない抽象論に基づいて、マクロ的な経済論議をしている。
その点、勝間和代は、「こうすれば成功しますよ」ということを、自らの失敗に基づいて語っている。(こういう失敗をしました、とは書かないようだが、その失敗があることは、私には透けて見える。)
彼女は十分に失敗体験を積んでいる。決して若くして成功したわけではなく、中年になってようやく成功しただけだ。若い時代にはさんざん失敗を積んできたはずだ。とすれば、失敗体験を踏まえた上で得た、彼女の方法論は、結構役立つはずだ。少なくとも、あなたの失敗を減らすために役立つ。
ただし、あなたが何もトライしないのであれば、彼女の方法論は何も役立たないだろう。彼女の方法論はあくまで、何かをトライする人のためにある。
( ※ ちなみに、「何もトライしないで、寝転んでいるだけで、自動的に金儲けしたい」と思う人は、野口悠紀雄の「金融工学の勧め」という話を聞いていればいい。……ただしそのあと、大損するが。 (^^); )
[ 付記4 ]
オマケとして、お金儲けの方法を、私なりに示しておこう。それは、次の二点だ。
・ 謙虚であること
・ 他人の悪口を言わないこと
これが処世術というものだ。 (^^);
私は? ダメですねえ。謙虚でもなく、悪口ばっかり。だから、儲からない。 (^^);
ただし、である。金儲けがすばらしいかどうかは、それもまた問題となる。たとえば、次のサイト。
http://diamond.jp/feature/katsumakogai/10005/ (対談)
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50983605.html (当事者のブログ)
勝間と別人が、ブログの宣伝効果でいかに儲けたかを吹聴している。アフィリエイトの効果の大きさも宣伝している。Google のすばらしさも示している。本人は大得意のようだ。
しかしねえ。本人は気づいていないようだが、自分たちが「儲けた、儲けた」と吹聴すればするほど、人間が卑しく見えるんですよ。この人たちに才能があるのは認める。しかし、その才能を、ブログで金儲けをすることに使ってばかりいて、それを自慢している。
ちなみに、私のサイトだって、結構ページビューがあるから、アフィリエイトを掲載すれば、結構儲かるはずだ。しかし、アフィリエイトは掲載していない。(自著の紹介はあるけど、そのくらいは仕方ない。)
彼らには確かに才能があるようだ。だが、才能があるならば、その才能を、金儲け以外のことに費やしてもいいだろう。別に、「社会奉仕だけをしろ」とは言わない。しかし、Google のことを論じるのであれば、公正に論じるべきだ。たとえば、Google のストリートビューがわれわれの権利の侵害をしているのであれば、そのことにはっきりと警鐘を鳴らすべきだ。
しかし、彼らはそういうことは、決してやらない。なぜなら、Google が権利侵害をしても、それで損するのは世間の人々であり、自分だけではないからだ。また、そういう警鐘を鳴らしても、損をするばかりだからだ。(労力の損。また、「自分をGoogle化する」というような自著が売れなくなる損。)
彼らはとことん、「金儲けをするにはどうすればいいか」ということを論じる。ま、そういう人も、いてもいい。そのことを「悪い」と非難するつもりもない。彼らの生き方を批判するつもりもない。しかし、それは私の生き方とは違う。
私の生き方は、真実を訴えることだ。Google が危険ならば、その危険性をはっきりと指摘することだ。たとえそれが金儲けにならなくとも。
( ※ 勝間和代は「あなたが Google 化すると、あなたは儲かりますよ」という話を書いて、自分が儲ける。私は、「社会が Google 化すると、社会が損しますよ」と書いて、自分が損する。……どっちが賢明か? たぶん、勝間和代の方でしょう。……要するに、詐欺師が賢明で、警告者は馬鹿だ、というのが、この世のならいだ。)
( ※ ただし、私がそんなことを言っても、彼らは屁にも引っかけないだろう。「負け犬の遠吠えだね」「金儲けの敗残者のたわごとだね」と言って。 (^^); )
[ 付記5 ]
ついでだが、ちょっと興味深い本を見つけたので、紹介する。
「Web2.0が殺すもの」(宮脇睦・著)
この本は、Google などを徹底的に批判する。物事の本質を突くというよりは、悪口の羅列らしいが、下手な悪口も数打ちゃ、いくつかは相手の痛いところを突く。読者評も悪くはないので、買ってもいいだろう。
( ※ ただし、Amazon へのリンクは付けません。もちろん。)
この本の美点は、内容が妥当であるかどうかよりも、悪口だ。読者は、Google への悪口を聞くことで、Google への賛美を中和できる。そういう中和剤の効果がある。というのも、現実には、
「IT振興で景気拡大」
というお馬鹿なことを言う政治家や経済学者が多すぎるからだ。典型は小泉や竹中などだ。ただ、クルーグマンですら似たようなことを言ったらしい。
しかし実は、「IT振興で景気拡大」なんてありえない(どちらかと言えば生産性向上にともなう解雇で失業が増える)。
また、むしろ、逆の懸念がある。それは、
「IT振興で社会悪の拡大」
だ。たとえば、ストリートビューのような。簡単に言えば、
「IT振興で警官戒が強力になります。世の中バラ色です」
という声が上がっても、現実には、
「IT振興で泥棒が強力になります。世の中暗黒です」
ということも成立しうる。
つまり、ITばかりで浮かれるべきではないのだ。そういう発想が必要だ。
実際、ITの進捗した90年代以降、日本の状況はどれだけ改善されたことか。いや、どれだけ悪化したことか。「ITはすばらしい、バラ色だ」なんて浮かれているようでは、物事の本質は見えないのである。
そして、物事の本質を見るには、パソコンを上手に駆使するよりも、パソコンを離れて、沈思黙考するべきなのだ。その時間こそが豊かな創造性をもたらす。
( ※ つまり、真に独創的であるためには、自分を Google 化しないことが大切となる。野口悠紀雄や勝間和代のいいう分とは反対に。)
( ※ ただい、真に独創的であれば、儲からない。アインシュタインとゲイツのどっちが儲けたかを見れば、一目瞭然。 (^^); )
[ 付記6 ]
最後に、私なりに、知的生産の方法を示す。知的生産の技術として、決定的とも言える、すばらしい方法だ。それは、こうだ。
「思考の途中での文章のプリントアウト」
パソコンで、あれこれとメモふうの思考を書く。そのとき、それを画面上で修正するだけでなく、プリントアウトするといい。画面で文字や画像を見るだけでなく、印刷して紙にして見るといい。その紙に対して、鉛筆や赤ペンで修正する。矢印や丸囲みを使うこともある。
このように紙を使うことで、思考の展開を補助することができる。紙は、ある点では画面よりも、圧倒的に便利なのだ。(便利というよりは、質がいい。)
勝間和代は、似たことを画面上でできるようなソフトを、推奨している。ま、その気持ちはわかる。確かに、ただの文字よりは、矢印や丸囲みを使うと思考が発展する。ただし、そういうことなら、画面よりは紙でやる方がいい。
知的生産でパソコンを使いこなすというと、何でもかんでもパソコン上でやりたがる人が多い。しかし、本当は、パソコンを利用しながらパソコンを離れることで、能率は最大化するのだ。
この言葉を玩味してほしい。じっくり自分の頭で考えてほしい。教わることでなく、考えることが、あなたの思考を成長させる。そういうことは、甘いことばかり書く本には、ちっとも書かれていないが。
2008年10月29日
◆ 続・知的生産とパソコン
posted by 管理人 at 21:45
| Comment(3)
| コンピュータ_04
おかげで、書き落としていたことを思い出しました。
高い金を払わなくても、似たソフトを無料で入手できます。
入手先は
http://nekomimi.la.coocan.jp/lzh/ideafrg2.htm
これがどういうソフト化の説明は、次のソフト名を検索して、解説ページをたくさん読んでください。
IdeaFragment2
──
他にも、別のソフトが5種あります。紹介は下記。
http://web-marketing.zako.org/web-tools/online-mindmap-tools.html
それ以外は「マインドマップ フリーソフト」で検索してください。
──
ただし、私はいずれも使いません。「紙」の方がいい、というのが私の判断。
プレゼンみたいなことをいちいちやる暇があったら、紙に書いたあとで、目を閉じて考える方が、よほどマシです。
私の場合は、インストールしても、試用のあとで速攻でアンインストール。
言語は一次元にしか並ばないが、上記は二次元に自由に並べることができるので。
ただし、目を閉じた思考は、いくらでも次元を増やせます。3次元でも何でも、自由自在。
その意味で、2次元の思考は、1次元よりはふくらむが、3次元以上よりは制約される。
将棋だって、アマは二次元の将棋盤を使うが、プロは目を閉じて考えます。(ちょっと比喩の意味が違うかな? ま、いいでしょ。 (^^); )