仕事の達人
株式会社リプラス
代表取締役CEO
姜 裕文氏
profile
1995年東京大学経済学部卒業。(株)ボストンコンサルティンググループに入社し、
消費財・IT・ハイテク産業を中心にコンサルティングを実施。
98年平和且謦役に就任し、メーカー部門にて生産改革およびグローバル展開を指揮。
2000年ドリームインキュベータ創業に参加し、執行役員に就任。
消費財・ブランドメーカー中心にコンサルティングを行うかたわら、
日本企業の中央研究所の技術の商品化やベンチャー企業のインキュベーションも主導。
02年9月(株)リプラスを創業し、代表取締役に就任。
誠実に、勤勉に仕事をし続けること。それが生き残るための唯一の方法
「敷金・礼金ゼロ」の賃貸物件が増えるなど、 不動産業界では大きな地殻変動が進んでいる。 その仕掛人ともいえるのが、株式会社リプラスの代表取締役CEO・姜裕文氏だ。 賃貸住宅の滞納家賃保証システムの提供と 不動産ファンドのアセットマネジメントにより、住宅流通の構造改革をリードする姜氏。 「マネジメントの専門職」として、1兆円企業の創出を目指す
「敷金・礼金」といえば、言わずと知れた日本の賃貸住宅の悪名高き商慣習。だが最近の不動産広告には「敷金・礼金ゼロ」の謳い文句が目立つ。実は、賃貸不動産の世界では、業界全体の流通構造を変えようとする地殻変動が起こっているのだ。その仕掛人ともいえるのが、株式会社リプラスの代表取締役CEO・姜裕文氏である。
リプラスの主力事業は、賃貸住宅の滞納家賃保証システムの提供と不動産ファンドのアセットマネジメントの2つ。この両事業がもたらす社会的意義について姜氏はこう語る。
「これまでの賃貸住宅では、個人の大家が多額の借金をして建て、個人である借主と保証人に貸し出していました。その結果、巨大なリスクが大家に偏って集中していたわけです。この賃貸住宅の流通構造におけるリスクを我々がコントロールすることで、敷金も不要になり、大家も毎年安定した配当が得られるようになる。いわば賃貸住宅流通のリスクコントロール弁の役割を果たし、その社会的インフラとなること――。それが我々の目標です」東京大学卒業後、ボストンコンサルティンググループ(以下BCG)に入社。伝説的なスピードで昇進を遂げ、コンサルタントとして将来を嘱望されながらも3年で退社。実業での失敗も経験し、2002年にリプラスを創業した。現在35歳。その若さと斬新な発想、行動力は、まさに不動産業界の革命児と呼ばれるにふさわしい。
ほとんど表情を変えることなく、理路整然と話す姜氏は、一見怜悧な印象を与える。しかしその実、「一時は貧乏覚悟で、芝居をやり続けようと考えた」ほどの演劇青年でもあった。ほとばしる情熱をクールな外見で包んだ、アンビヴァレントな個性。そこに、姜氏の複雑な魅力がある。
記録を塗り替える異例のスピードで昇進
東大在学中は劇団に所属し脚本執筆と演出を担当。「芝居漬け」の日々を送った。そのまま芝居を続けるつもりだったが、「いいアルバイトがある」とゼミ仲間に誘われて参加したのが、BCGのスプリング・インターンだった。それが機縁となって、1995年BCGに入社。そこから、思いがけず戦略コンサルタントとしての道を歩むことになる。
だが、姜氏がコンサルタントとしての適性を自覚するまでに、時間はかからなかった。BCGでは、アソシエイトとして入社した新卒者は、コンサルタントに昇進するまでに7、8年を要するのが普通だ。だが、姜氏は、BCGワールドワイドの最短昇進記録を塗り替えるほど異例のスピード昇進を重ねた。継続したことで活躍のほどが偲ばれる。
では、戦略コンサルタントに必要なものとは何か。それは「企業の競争環境を構造化して捉えた上で、本質を貫く、事業の定義を行うこと」と姜氏は言う。
「例えばリプラスの滞納家賃保証を保証人代行業≠ニ位置づけるか、家賃回収のインフラ≠ニ定義づけるかで、事業の性格や収益力、競争力は全く違う。コンサルタントが戦略を語れるかどうかは、いかに顧客企業の事業を定義し、その背景にある競争環境の構造をどう把握できているかにかかっている。そのためには、歴史的な背景を持つ各種理論を独自に勉強し、様々な事例に直面して使いこなせるようにならなければいけません。これを実践するのは困難なこと。コンサルティング業界のパートナーの中でも、それが本当にできる人は半分もいないと思いますが」
一方で、どれほど知力や技術に恵まれていても、情熱なしには優秀なコンサルタントになりえないことも事実だ。コンサルタントと顧客を結びつけるのは共感の力であり、コンサルティングの成否は顧客にどれほどの感動や衝撃を与えられるかで決まる。「その意味ではコンサルティングも演劇も同じですね」――。演劇青年≠フ素顔をほうふつとさせる言葉である。