社説
Jリーグ秋開幕 雪国のハンディどうする
春から晩秋までをシーズンとしているサッカーのJリーグを秋開幕、翌春閉幕の秋春制に変更する案が浮上している。
降雪期がシーズンと重なれば、アルビレックス新潟など積雪地を本拠地とするクラブにとっては大きな痛手となる。慎重な論議を望みたい。
秋春制を積極的に主張しているのが日本サッカー協会の犬飼基昭会長だ。「二〇一〇年開始をめどに秋春制を開始すべきだ」との発言に対し、協会のJリーグ将来構想委員会が本格的に検討することを確認、来年一月にも提言をまとめることにした。
犬飼会長の発言の背景には、現行の春秋制が欧州各国や中東などのシーズンとずれるため、日本代表の活動に支障を来していることがある。
ワールドカップ予選や国際試合は、Jリーグのオフシーズンに行われるケースが多くなっている。そのため代表選手には休養をとる期間がほとんどない。心身ともにリフレッシュできず、疲弊度が大き過ぎるというのだ。
選手をベストの状態で戦わせ、日本サッカーを世界水準に引き上げたいとする協会長の思いにはうなずける。だが一、二月、新潟ではスタンドに雪が舞い、寒風が吹きすさぶ。そんな悪天候の中で、Jリーグにどれだけの数の観客が集まるかだ。
代表選手を供給するのはJリーグである。秋春制導入でJリーグの人気が落ちるようなことがあれば、日本サッカー界全体の停滞にもつながりかねない。秋春制はもろ刃の剣なのだ。
現在、積雪地でJリーグに加盟しているのは新潟のほか札幌、山形の各クラブだ。札幌はドームスタジアムがあり、新潟や山形もピッチを除雪すれば試合をやれないことはないだろう。
だが、問題は練習場の確保だ。満足な練習ができないようでは、試合の質そのものが落ちてしまう。雪国のチームが最初からハンディを負うようなリーグはフェアとはいえまい。
秋春制推進者の中には「積雪期は他の地域で試合をすればいい」との発言もある。地域密着を掲げるJリーグの理念に反するものだ。
ホームゲームを地元でやってこそのホーム・アンド・アウェー制である。サポーターがあってJリーグがあることを忘れてもらっては困る。
Jリーグ開幕時から秋春制だったら、新潟にJ1のアルビレックスが誕生していただろうか。積雪地で新潟を目標にJリーグを目指すクラブはまだある。秋春制はそれらの地域の夢を断つことにもつながりかねない。
日本各地にクラブを創設することもJリーグ百年構想の一つだ。雪国を切り捨てるようでは構想が頓挫する。
[新潟日報11月3日(月)]