ホーム > きょうの時鐘


2008年11月3日

 台湾の不毛の地にダムを築き穀倉地帯とした八田與一技師の評伝は邱永漢氏の「この人のことを知って欲しい」の一文が嚆矢(こうし)とされる。没後20年近くたった昭和30年代の出版である

そこから20年を経た昭和50年代、詳しい伝記「台湾を愛した日本人」(古川勝三著)が生まれ、郷里金沢の人たちの顕彰運動が始まった。平成に入ってからは司馬遼太郎氏の「台湾紀行」が知られ、約20年後の今、アニメ「パッテンライ!」がつくられるまでになった

ひとりの功績が世に認められるには長い歳月が必要だ。加えてその人に魅せられて語り継ぐ人々のリレーで評価が定着していくことも分かる。八田技師の足跡と評伝の数々がそれを示している

きょうの文化の日、様々な分野で貢献した人々に光が当てられている。ノーベル賞や文化勲章でも90歳前後の受賞者が目立ったように、もっと早く評価されてもよかったと思われる高齢の方も少なくないが、これも長寿社会の側面かもしれない

足跡を刻む人。記録する人。評価する人。機が熟し、時を得た人たちの長い道のりと支えた人々のつながりを思うのである。


ホームへ