ハンバーガーを食べるとき、思い出す顔がある。意識して豪快にかぶりつくけれど、切なくなる。
食べ物を消化できない難病と闘った名古屋市の各務宗太郎君(9つ)が亡くなった。夢は「ハンバーガーを食べること」。約十一時間の手術の後、夢をかなえた。薬の影響でパンパンに腫れた顔で「おいしい」。病床の笑顔に胸が詰まった。
米国の入院先には松井秀喜選手からも励ましの色紙が届いたが、容体は悪化。母親に抱っこされて言ったという。「ママ、ありがとう」。最期の言葉だった。
宗太郎君の死去を伝えた夕刊。静岡では三歳の長女を殺害した母親を逮捕、神奈川では小学六年の息子の首を絞めたと供述した母親の記事があった。心が痛む。 (前口憲幸)
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