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社説
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2008年11月2日

ダライ・ラマ来日/前向きな対話再開を期待

 チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ十四世が来日した。先回、訪米途中で成田に立ち寄ってから、ちょうど半年ぶりとなる。

中国の本気度に疑問

 ダライ・ラマの世界巡回には、世界の世論を味方に付け中国に圧力を掛ける側面がある。

それが奏功し、中国は四月、対話再開を世界に公約した。中国政府側は最近、ダライ・ラマ特使と協議を再開したようだが、ポーズでなく、前向きな対話となることを期待する。

 中国側が対話を再開するといっても、問題の解決に向けてどこまで本気なのか疑わしい。この半年間、一時しのぎの方便のみで、誠意ある対応が見られなかったからだ。

 ダライ・ラマは先月二十五日、チベット亡命政権のあるインド北西部のダラムサラで「中国側の前向きな反応を得られず、失望を禁じ得ない」と表明、対話断念に含みを持たせた。

 ダライ・ラマはこれまで、独立を求める急進派グループの動きを抑えながら、中国政府に対し内政、文化、宗教をチベット人が担当する高度な自治を認めるよう訴えてきた経緯がある。 しかし、独立路線を鮮明にしているチベット青年会議など急進派グループは、当初から中国側の対応に懐疑的で、対話再開の成果が得られないまま時間稼ぎをされていると批判してきた。今月中旬には、チベット青年会議を含めた亡命チベット人による拡大会議を開催し、対話打ち切りを含めた基本方針を論議する。

 今夏来日したダライ・ラマの実兄でチベット亡命政府元首席大臣(首相)のギャロ・ドンドゥップ氏は、チベットで起きたデモをぼやに例え「火はぼやのうちに消した方がいい。しかし、中国は火遊びを続けている」と批判した。

 しかし、七月の対話でも、中国側はかたくなな姿勢を崩さなかった。逆に、中国の治安当局はチベット仏教の僧侶に対し、ダライ・ラマ法王を批判させるという踏み絵を踏ませている。米国務省が先月発表した二○○八年版の「宗教の自由に関する報告書」は、宗教弾圧の「特に懸念される国」に、今年も中国を指定した。中国当局が愛国教育の一環として僧侶らにダライ・ラマを非難する文書に署名させるなどの弾圧が行われたという。

 「覇権国家」は、自分が弱いときには微笑外交を展開して下手に出ても、実力を付けると、強圧的姿勢で臨みがちだ。それを排除するには、チベット側にバーゲニングパワーが必要になってくる。

 ダライ・ラマは、日本をはじめ欧米諸国を精力的に訪問しながら、外圧というカードで中国に圧力を掛けようとしてきた。だが、その汗に応える国が不足している。

人権の尊重求め続けよ

 チベットでの武力鎮圧により多数の犠牲者を出しながらも、ダライ・ラマが“孤高の自制”を貫いてきたのは、暴力が暴力を生む負の連鎖を避けるためだ。恒久的な平和を構築するために、日本も自由と人権を尊重するよう中国側に求め続けていくことが大切である。


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