『死ねえぇぇえぇっ!!』

 

「っ!?」

 

バシィイィッ!!

両手で体を掴まれた。

 

「ぐっ・・・!?」

 

ギリギリッ・・・!

俺を必死に押し潰そうとしているのがわかる。

それに・・・

 

「ぐ・・・っそっ!!」

 

新星が脇腹に食い込んでいる。

もう背骨あたりまでいっているだろう。

 

ブシュゥゥッ!!!

 

途端に血が吹き出し始めた!

 

「や・・・ば・・・」

 

意識が朦朧としてきた。

連戦の疲れもたまってたのだろう。

 

「く・・・そっ・・・!」

 

負ける・・・のか・・・?

 

 

『アスナが死ねばもはやカオスに敵はいない!私の勝ちよっ!!』

 

 

「死ぬ・・・か・・・?」

 

俺は目を閉じた。

いや・・・目を開けている力さえなくなった。

 

 

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

『ふふ・・・これで全てが終わる・・・』

 

シンはそう言って、裂けた口の前にアスナを持って来た。

アスナは目を閉じ、力なくうな垂れている。

そのシンの手から、アスナの血がポタポタと垂れてマナになっていく。

 

「アスナッ!!!起きてよっ!!!」

「アスナ!負けないで・・・っ!!ここで負けたら・・・!!!」

 

ヒカリとカナリアが叫ぶも、アスナはぴくりとも動かない。

 

「このぉ・・・ッ!!!」

 

ヒカリが素早くシンに切り込んだ!

それに気づいたシンがヒカリに向けて口を開ける・・・!

 

「っ!しまった・・・っ!!!」

 

大地を蹴って空中にいるヒカリに向けて、シンの口から破壊の光が溢れ出てくる。

 

『まずはヒカリから!!不愉快なのよ・・・っ!あなたはアイツに似てるからッッ!!!消えてなくなれぇぇえぇッ!!!』

 

「っ!!!」

 

ズガァァアァァッッッ!!!

 

「危ない・・・っ!!!」

「なっ・・・!!来ちゃだめッ!!!」

 

ザパァァアァァンッッッ!!!

 

そのどす黒いグラビティブレスは容赦なく『二人』をのみこんでいく!!

地面があちこちで割れ、マグマが噴き出していく!

 

「っ・・・!」

「カナリアっ!!」

 

ヒカリはカナリアに肩を貸して立たせた。

カナリアの体中に擦り傷、切り傷、泥がついていて、右足はあらぬ方向をむいていた。

 

『ふんっ・・・あなたたちはそうして地面に這い付くばってるのがお似合いよ!』

 

そう言ってシンは何か黒い渦を生み出した。

そこにアスナを投げ入れる!

新星はその渦から外れ、地面にグサッと刺さる。

 

「っ!!シンッ!!何を・・・!」

『別に?以前ユウキが作った小世界があるでしょ?そこにぶちこんだだけ』

「小世界・・・!」

『時間もない、生物もいない。生きる価値も見出せない世界。放って置いてもアスナは死ぬだろうけど、確実に後で殺すため』

「そうはさせない・・・っ!!絶対にッ!!」

 

『私を倒す?・・・だから不愉快なのよ』

 

「?」

『あなたはどこまでスフィアに似てるわけ・・・?消えて・・・今すぐッ!!アンタみたいなのがいるから・・・アスナは・・・!』

「よくわかんないけど・・・っ!!アスナは返してもらうんだからッ!!!」

 

ヒカリが飛びかかって行く!

それにあわせて、ロウを倒したユウト達も加わる!

 

 

 

「シンッ!!!ユウキの体を・・・返せぇぇえぇッッ!!!!」

 

バギッ!!!

 

洗礼をその大きな爪で弾くシン。

そのまま逆の手の爪がユウトに向かう!

 

「やば・・・っ!『はァァアァッッ!!!』」

 

それを守るようにしてアセリアが永遠を振りかざす!

爪が折れて、その手はユウトに向かうのを止めた。

だが、その巨大な尻尾がアセリアを捕まえ地面へと叩きつけるッ・・・!

 

「アセリアッ!!でやぁあぁッッ!!!」

 

ユウナがすぐさまその尻尾を想いで切り裂く!

その尻尾は地に落ち、アセリアはハイロゥを展開して地面への激突を防ぐ。

 

『えぇい・・・うっとうしい!これで決めてやるわっ!!!』

 

「っ!まずい・・・避難しないと・・・!!」

 

ヒカリは何かをすぐ感じとって、そのまま避難場所へ一直線に走りだした。

その途端、シンがぐわっと顔を空に向けた!

 

 

 

『グラビティレインッッ!!』

 

 

 

「っ!!何かくるぞ!!みんな守れッ!!!」

 

ユウトがそう叫び、エターナルが防御のオーラフォトンを展開した!

 

ドパァァアァアッッッ!!!!

 

シンの放ったグラビティブレスがまるで雨のように地に降り刺さる!!

 

「ぐっ・・・!そんなバカな・・・っ!!」

 

ユウト達はオーラフォトンで耐える。

だが、その重さに耐えきれず次々仲間が地面へと押しつぶされる!

 

「くッそおぉぉおおぉッッッ!!!!!」

 

 

ドパアァァアァァッッ!!!!

 

 

『ふっ・・・アスナのいないカオスなんてこの程度ね』

 

ユウト達他数人を除いて、カオスの姿はそこにはなかった。

あたりは砂煙が舞い上がったままで、視界が悪い。

 

『さて・・・アスナ・・・あなたがいけないのよ』

 

シンは黒い渦をまた生み出した。

そこに顔を向ける。

 

『あの時・・・私と出会わなければこんなことにもならなかったのにね』

 

シンはその黒い渦に向かって口を開ける。

そこから黒い光が溢れ出てくる・・・!

 

 

 

「行かなくちゃ・・・っ!カナリアっ!一人で大丈夫だよね!?」

「・・・え?」

 

介抱していたカナリアやユウト達を置いて、ヒカリは栄光を手に取った。

一人シンの懐にいたヒカリは唯一無傷。

 

そして・・・答えも聞かずに飛び出すヒカリ。

そのまま、シンとアスナの間に割り込むように飛びこんだ!

 

『っ!!えぇい・・・っ!邪魔よ!!そんなに心中したいならそのまま死ねぇぇぇえぇッッッ!!!』

 

シンはそのまま躊躇せずにグラビティブレスを『二人』に放った!

 

「お願いアスナ・・・っ!!戻ってきてーーーーッッッッ!!!!!」

 

ヒカリの眼前にグラビティブレスの黒い塊が迫る!

 

「っ・・・!」

 

ヒカリは咄嗟に目を閉じた・・・!

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

頭がボーッとする。

何も感じられない・・・。

 

そういえば・・・こんなこと前にもあったな・・・。

あれ?

金色の光が見える・・・。

 

あっ・・・そうだ。

これはマナだ。

俺の・・・みたいだな。

 

終わり・・・か。

 

 

さんざん格好付けて・・・

結局こんな終わり方・・・か。

 

ダサッ・・・

 

本当に・・・ダサ・・・。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

―――――俺達は・・・どうしてこんな所へ来てしまったのだろう・・・。

――――――――――苦しく・・・辛く・・・笑顔も幸せもない戦いの世界へ・・・。

 

 

 

――――なぜ・・・足を踏み入れてしまったのだろう?

 

 

 

(忘れたの・・・?)

 

(え・・・?)

 

どこからか・・・声が聞こえる。

そう・・・懐かしく、温かい・・・そんな声。

 

 

(戦いは不幸じゃない。あなたは・・・不幸だったの?)

 

(・・・)

 

俺は・・・不幸だったのか?

 

イヤ・・・そんなことない。

そうだ。俺は不幸だ。

 

そう主張する二人がいた。

不意に・・・みんなの顔が浮かぶ。

 

――いつもみんなばかり心配している『洗礼のユウト』

 

――たまに見せる笑顔がとても美しい『永遠のアセリア』

 

――守れる力がある事に誇りを持った『聖緑のエスペリア』

 

――愛する人の傍で笑顔を絶やさない『再生のオルファ』

 

――心が繋がって、以心伝心となった『漆遠の翼ウルカ』

 

――明るく全員を引っ張っていく存在『紫電のキョウコ』

 

――愛する者のために歩み続ける『折れぬ想いユウナ』

 

――今では明るいムードメーカー『伝令使テムオリン』

 

――俺を命がけでたすけてくれた『超越のフォルク』

 

――親友であり、リーダーである『運命のローガス』

 

 

そして・・・

 

――俺の中で大半を占めていた、永遠の存在『スフィア』

 

――今、俺を守ってくれて、俺が守っている存在『栄光のヒカリ』

 

――悲しく儚い、ずっと傍にいたい、いてほしい存在『背光のカナリア』

 

 

そんな人達に囲まれて・・・俺は、一体何をしたかったんだろう?

何を得る為に・・・シンを倒そうとしていたんだろう?

この後のエターナルのため?

ユウキのため?

 

違うんじゃないか?

俺は、ただ独りだったから・・・。

 

だから、この温かさを失いたくないから・・・また独りになるのが恐いから・・・

 

だから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――俺は殺し続けたんだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・スナ様ッ!!』

 

(誰の声だ・・・?)

『アスナ様っ!!聞こえる!?』

 

この声は・・・?

というか、俺を様呼びする人は一人だけだ。

 

(テム・・・か?)

『そうだよっ!伝令の力で魂に直接問い掛けてるの』

 

(どう・・・した?)

『目を開けて、力を解放して!!あなたしかシンに勝てないんだよ!?お願いだから・・・目をあけてっ!!!』

(目を・・・開ける・・・)

 

 

『アスナ様は勘違いしてるよ!』

 

(え・・・?)

 

『私達が温かさを与えてたんじゃない・・・。アスナ様が私達に与えてくれてたんだよ』

 

(・・・)

 

 

『アスナ様は完璧すぎるんだよ。全世界にいる誰よりも、生きるのが苦しいってくらいの出来事を何度も・・・何度も経験してる。

それなのに、一度も逃げてない。誰にも相談しないで、自分で解決してる。それは、アスナ様にしかできないこと』

 

 

(・・・)

 

『だけど・・・今度は私達の温かさを受けとって』

 

(テム・・・)

 

『私達は・・・仲間なんでしょ?だから・・・勝手に死なないで。そして・・・たまには頼って?』

 

(・・・うん。アリガト・・・)

 

全く・・・そんなこと言われちゃ諦められないじゃないか・・・。

俺は力を振り絞って目を開ける。

 

そして・・・

俺は全てに対して呼びかける。

 

俺の手に新星がない。

不思議な浮遊感を味わいながら、俺は全てに対し呼びかける・・・。

 

(誰か・・・この声が聞こえたヤツ・・・俺に力をくれ・・・!!アイツらのもとへ戻る力をっ!!!!)

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

(誰か・・・このこ・・・・・・・俺に力を・・・・もどる力を!!!)

 

{っ!!この声・・・!}

 

洗礼がまずその声に気づく。

そして、それを気に次々と洗礼に声を届ける意識が表れた。

 

{この声・・・アスナでは?}

{きっと、こちらに向かって呼びかけているのでしょう}

 

永遠、聖緑、深遠、再生、依存、背光、明王・・・

まるで全世界の永遠神剣が気づいてるかのようにその意識の数が増えて行く。

 

{アスナ・・・か。どうする?}

 

洗礼がそう皆に問いかける。

すると、何本かはくすりと笑ったようだ。

 

{決まってるじゃありませんか}

{そうだぜ。かったるいけどな・・・一応、恩もある}

{永遠神剣をここまで人間と共にさせてくれたのも、あの人がいたからこそです}

 

満場一致。

それを感じて洗礼はアスナへと意識を向ける。

 

{ではいくぞ・・・集え・・・永遠神剣よッ!!!彼に・・・力をッ!!!}

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「っ!!」

 

きた・・・。

一気に体に力がみなぎった。

パチパチと、周囲の空気が痛い。

 

「・・・ありがとう」

 

誰に伝わったのかはわからない。

ただ、こんなことができるヤツなのだろうから、永遠神剣だろう。もしくはエターナル。

俺は右手を真っ直ぐ突き出し、力を集中させる!

 

「ユウキ・・・わるいな。この世界・・・ぶっ壊す!!!」

 

バギャァアァァッッッ!!!!

 

手から放たれた閃光が一瞬で真っ暗な世界をぶち壊す!

 

そして・・・

俺はそのままヒカリを抱きしめた。

 

 

ザパァァアァァアァッッッ!!!!

 

グラビティブレスがまるでそよ風のように霧散していく・・・!

俺はグラビティプレスを霧散させた右手を降ろす。

 

『なっ・・・そんな・・・バカなことが・・・!!』

 

俺はヒカリを強く抱きしめた。

 

「バカ・・・何やってるんだよ・・・」

「だって・・・アスナはいつも私を・・・だから、今度は私が・・・って・・・っす!」

 

最後の方は声にならなかった。

相当恐かったのか、目からポロポロと涙が流れ始める・・・。

 

「恐いくせに・・・何してんだよ・・・」

「うるさい・・・っ!こんなことさせるようにしたアスナが悪いんだよ・・・っ?」

「バカ・・・っ。そんなわけあるかよ・・・」

 

俺は涙を拭った。

ついでにヒカリの涙も親指で拭ってやる。

 

「こっからはラブコメ禁止だ。ヒカリはカナリアんとこ行ってろ」

「絶対・・・勝って」

「おう」

 

ヒカリをゆっくりとカナリアの所まで降ろして行く。

 

「カナリア・・・まァなんだ?その・・・ヒカリの事頼むよ」

 

カナリアは無言で迫ってくる。

なんだかそれが恐い・・・。

 

「な・・・なに?」

「・・・」

 

すくっとカナリアは俺の目を射抜く。

サラサラした髪を耳の後においやって・・・

 

「ん・・・っ」

「・・・!」

 

俺が何かを言う前に唇を重ねた。

 

「あ〜〜〜〜っっっ!?」

 

抱えているヒカリが突然叫んで目がさめた。

だけど・・・カナリアの潤んだ瞳から目が離せない。

 

「言いたい事は山ほどあります。でも・・・今はこれだけで」

「じゃァ・・・聞くためにはちゃんと戻ってこないとな」

「えぇ。だから・・・お願い・・・絶対に・・・」

「・・・うん」

 

「ちぇ〜・・・やっぱカナリアには敵わないのかなァ・・・」

 

ヒカリがいじけているが無視。

カナリアにヒカリを預けて・・・俺は周囲を見まわす。

 

 

そこには本当に・・・信じられない光景があった。

 

「は・・・はは・・・っ」

 

自然と笑いがこぼれた。

血がとまらないことさえ気にならない。

 

――――みんな・・・

 

 

 

『アスナッ!!負けるんじゃねぇぞ!!』

『オレ達の助けが必要なんだろ!?』

『黙ってマナにさせられるなんて・・・たまったもんじゃないわ!!』

『美女二人も捕まえてるんだから、このくらいの大仕事しっかりやれよっ!?』

 

 

カオスもロウも関係なく・・・エターナルが俺に叫んでいた。

 

(間に合ったのか・・・テム)

 

「みんなっ!アスナ様の意識に合わせて!力を送るよっ!!」

 

 

『オーーーッ!!!!』

 

 

全員が目を閉じた。

その瞬間、俺の体にものすごい力が流れてくる。

 

 

ビシビシッ・・・!

シュバァアアァァンッ!!!!

 

 

突然新星から天にむかって赤い炎が立ち上る!

それと同時に場の雰囲気がガラリとかわった。

空には一条の光・・・。

 

 

『なっ・・・なぜロウがアスナの味方をするの!?』

 

「へっ・・・わからないのか?シン。おまえのその『心』って名前が泣くぞ?」

 

『どういう意味よ・・・?』

 

俺は軽く体全体に力を込めて、体を浮かせてシンの顔の前でとまる。

自然と体が浮いている。

もう迷いはない。

テムの・・・みんなの想いを、俺は背負ったから。

 

 

「全ては心・・・生きている全ての者の心が全ての答えである。それがお前の名前の由来だったろうに」

 

『・・・』

 

俺はドラゴンに成り果てたシンを見る。

その顔は・・・とても醜い。

 

 

 

 

「未来は生きている者の数だけあるってことだ。

そして・・・おまえに壊されるっていうのも未来の一つ。でも、なんていうのかな・・・?

生きているんだから、生きたいだろ?つまりはそーいうことじゃねぇの?」

 

 

 

 

『・・・は?』

 

うぅむ・・・シンプルすぎたか。

 

 

 

 

「オレ達はエターナルだ。世界をより、自分たちの目指すものへ近付けていくという役目がある。

それを放棄して、おまえなんかと一緒になりたくない。そーいうことだ。というか・・・おまえが孤独すぎたんだよ」

 

 

 

『孤独・・・?』

 

言ってみて気づいた。

俺とシンは・・・似てるんじゃないか?

 

 

「おまえがこの戦いを起こした時、ユウキを今みたいに乗っ取ってなかったろ?

あれって・・・ユウキなら、自分をわかってくれるんじゃないか?みたいな気持ちがあったからじゃないか?」

 

 

 

『何をバカな・・・』

 

 

 

「不変がおまえに抵抗した。それほどまでに、ユウキはなにかを持っていた。

だから・・・お前も期待したんだろ?お前は今まで・・・ずっと孤独だったから」

 

 

 

『そ、それと・・・この事態とどう関係あるのよ!?』

 

 

 

「――――あるさ。一緒に生きたい、一緒に歩きたい、一緒に笑いたい。

そういう、孤独じゃないヤツらがここに集まったのがわからないのか?」

 

 

 

『なに・・・?』

 

シンは集まったエターナル達を見回す。

その誰の目にも綺麗な輝きがある。

そこにある輝きこそが・・・人間が戦いの果てに見る物なのかもしれない。

 

 

 

 

 

「失いたくない・・・守りたい世界が、人が、思いがある。

ここにきたのは、守りたい者、人、思いは違えど、そういう・・・大事な気持ちを持ったエターナルなんだよ。

それが、孤独なお前にはなかった・・・。だから、お前の未来は選ばれなかった・・・。そういうことだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『独りだから・・・私はまちがっているというのか・・・?』

 

 

 

 

「・・・そうだな。神剣も人間も、この世界に生きている者には変わりない。

生きてる者は、孤独になったらおしまいなんだよ。独りで生きていける者なんていない。

そんな・・・世界の根本にある事を、お前は知らなかったんだ。だから・・・終わりにする」

 

 

 

 

 

 

 

アスナは赤く輝く新星をシンの心臓へ向けた。

 

『私は・・・私は・・・』

 

「・・・シン。いくぞ。俺の全力で消し去ってやる」

 

 

『ふ・・・ふふ!そうはいかないわ!私がまちがっているのなら・・・

全て、私が正しい世界にしてしまえばいい・・・!そう、天地になれば・・・!』

 

 

「もうやめろ!お前は俺に・・・絶対に勝てないんだっ!!!マナよっ!」

 

 

アスナは詠唱を始める。

シンがその裂けた口をあけた。

光がせりあがってくる・・・!

 

ドゴォォォオォォオッ!!!

 

凶悪なグラビティブレスがアスナを飲みこんだ!

あたりが黒い光に包まれ、全てを破壊していき、空が一瞬で暗闇に覆われる!

 

「アスナァァアァッ!!!」

 

 

ヒカリが叫ぶ。

そのブレスは丘を綺麗に吹き飛ばした。

余波で地面が大きく揺れる!

 

ブサァアアァアァッッッ!!!

 

新星から白い羽根が舞うにつれて、暗闇に覆われていた空が一瞬にして晴れていく!

 

 

「我との契約に従い・・・」

 

「アスナ!」

 

カナリアが安心した声を出す。

あれだけ強力なブレスを食らっても、アスナには傷一つなかった。

 

 

「全てを破壊し、終わらせよ・・・」

 

アスナの体からはち切れんばかりのオーラがあふれだす。

新星はくるくると何かを纏い始め、右手、左手、足下、頭上にオーラフォトンが確認できる。

 

「っ!!アスナッ!!それを使っちゃダメーーーッッッッ!!!」

 

 

ヒカリが制止の声をかけるが、もうアスナには届かない。

 

「アスナッ・・・!消えるつもりなの!?それを使ったら・・・もう」

 

カナリアの声が震える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴメン・・・ヒカリにカナリア」

 

{いいんだな?}

 

 

「いいんだ。俺は長く生きすぎたし。これからのエターナルを背負っていくのはユウキだからな。ちゃんと、返してやらないと。

新星にもいろいろ言いたいことがあるだろうけど・・・ここは黙っていかせてくれないか?」

 

 

{・・・}

 

新星は黙り込む。

何か深く考えているようだ。

そして・・・

 

 

{・・・わかった。全ての世界は、おまえに借りこそあれど、貸しはないもんな。

お前には、そのわがままを貫き通す権利がある。だから・・・俺もそれに付き合う}

 

 

「サンキュ」

 

 

{最後に・・・言わせてくれ。お前といて・・・どれだけ経つかわからないが。

俺ほど神剣として幸せに生きることができた神剣はいないだろうな・・・。だから…………ありがとう

 

 

「最後・・・?」

{あぁ。お前はネレイにマナを捧げて消滅する。俺は・・・きっと、ネレイの重さに耐えられないだろう}

「え・・・!?」

{俺の存在も消滅する、ということだ。ネレイは永遠神剣を越える存在だからな}

「そんな・・・」

 

{アスナ}

「・・・」

{ただ、数え切れない程ある永遠神剣のうちの一本が消えるだけだ}

 

「違うッッ!!!」

{アスナ・・・}

「新星は・・・一本だけだ。永遠に・・・どれだけ時間が過ぎようと・・・!」

{・・・そうだな}

「新星・・・俺は・・・っ!!」

 

{シンを討つんだろ?}

「・・・」

 

俺は黙って頷く。

 

{なら・・・いこうぜ?アスナ、俺は言っただろう?お前といれて、永遠神剣として俺ほど幸せに生きたヤツはいないだろうって}

「・・・」

{空を見てみろ}

 

俺は黙って空を見上げた。

そこには、真っ黒なフィルムにまばゆい星が散りばめられている。

 

{明るいだろう?だが、空は総じて黒い。なのに、なんで明るいと感じるんだと思う?}

「・・・星があるから?」

{そうだ。それは、この全世界も同じ。総じて醜く、黒い部分が多い。だが・・・それをお前は必要以上に感じなかったろう?}

 

「・・・うん」

{それは、お前の傍にまばゆい星があったからだ。それも、たくさん・・・な。それを俺はずっと一緒に感じていられた}

「・・・」

{そして、俺はお前よりも一つ星を多く感じていた。そう・・・全世界一のまばゆい星・・・お前だ

「新星・・・っ!!」

 

{さぁいこう!俺とお前のすべてで、全てに終わりを・・・!}

「・・・」

 

俺は涙を拭って、新星を構えた。

そして・・・

 

我の前にその姿を現わし、わが剣に宿れッッッッッ!!!

 

 

 

新星は俺の目の前で浮き、俺の両手から魔法陣が展開される。足元に赤いオーラフォトンが展開され、魔法陣を作りだす。

 

右手には青いオーラフォトンでかかれた魔法陣、左手には白い魔法陣、そして頭上に緑の魔法陣が展開される。

それぞれが眩い光を放ち俺を包む。

 

 

俺を四角い檻に入れるようにオーラフォトンが展開されていく。

のオーラフォトンがそれぞれまざりあっていく・・・!!

 

 

そして、一つの人型へと姿を変えていった。

前の時は急いでいてできなかったが・・・今度はフルの力を引き出してやる!

 

 

 

 

新星、ありがとう・・・。

遅いけど・・・俺も、お前といて・・・俺ほど永遠者として幸せだったヤツはいないと思うよ。

だから、もう一度・・・。

 

 

 

 

 

 

―――ありがとう。

 

 

「スピリット・オブ・ネレイッッッ!!!!」

 

 

 

ビシャァアアァッッッッ!!

 

突然空間が歪む。

そこから出てきたのはあの女性・・・ネレイ。

前より強力な力を持ってでてきたのがすぐわかる。

ビキビキと空間が音をたてる程に膨大な力を持っていた。

 

ネレイのまわりの空気がギスギスとしていく。

 

 

「最後の召喚だ。よろしく頼んだ」

 

 

『良いのだな?』

 

 

「・・・ああ」

 

確認してくるように尋ねてきたので、俺はしっかりとうなずいた。

途端に体のマナがなくなっていく。

 

あと・・・もって数分だろう。

 

 

『スフィアといい・・・お前等といて、退屈しなかったぞ』

 

 

「・・・あんたもそう言うか。俺はそんなにイイヤツじゃねぇぞ?」

 

 

『私からしてみれば、お前こそエターナル界には必要だと思うが。私の力・・・全て預けるっ!!』

 

ネレイが新星に宿る。

途端に赤い光が青い光へとかわった。

 

ビギビギッ!!

ズァァアァッッ!!!

 

新星が青い光となり、俺の体にまとわりつく!

そして、その青い光は俺の右腕に集結していく・・・。

 

光がおさまり、俺の腕は、2メートルはあろうかという青い光の両刃剣となっていた。

背中には、まるで弾けたように鋭く広がる、6メートルを越える青い翼。

軽く振るうだけで、ここら一帯の大気が鳴き始める!

 

「シン・・・もう二度と苦しまないように消してやるから。終わりだっっっ!!」

 

 

 

 

 

フワッ・・・!

ヒカリとカナリアが飛んでくる。

 

「アスナ・・・なんで・・・!?」

 

カナリアが訴えてきた。

目には涙がたまり、今にも流れ出そうとしている。

 

「これでしか、もうシンは止められないんだ。俺がいくことで・・・世界が救えるなら、俺は救いたい」

「アスナ・・・」

「だからさ・・・二人の力も貸してほしい。シンを・・・消すために」

 

「・・・わかってた」

 

カナリアが呟いた。

 

「アスナがこうすることなんて・・・わかってました」

「・・・」

「だから・・・行きます。My reason for existence was being with Asuna

 

「・・・サンキュ。ヒカリもいいか?」

「・・・うん。大丈夫!アスナとカナリアと一緒なら・・・どこへでも」

 

3人でシンを見る。

あまりに大きく・・・醜い。

その巨体が放つ威圧感はかなりのものだ。

でも・・・俺達は恐くない。

 

 

―――1人じゃできない。

―――2人でできない。

 

 

 

でも、きっと3人ならできる。

 

 

 

(いつまでも・・・一緒だって言ってたもんな)

 

俺は新星をシンに向けた。

その手に、ヒカリとカナリアの手がかかる。

 

「・・・いこう」

 

「うん!」

「はい!」

 

 

俺達はお互いの顔を見合い・・・新星を突き出した!

その途端、青い光が一気に後ろに弾け、まるでヒカリとカナリアにも青い翼がついたような幻影を生み出す!

 

 

そして・・・

新星が一気に加速した!

 

ビシャァァアァッ!!

 

俺達はドラゴンの心臓にむかって突き進む。

新星が肉をえぐりだしてはマナへ還していく。

 

 

『ぐぅぅうっ!!?・・・そっちから飛びこんでくるなんてね!このまま取りこんでやるわっ!!』

 

突然、俺が開けたシンの体の穴が塞がりだした。

どんどん光がなくなっていく・・・っ!

 

 

「なら勝負だっ!!俺達がお前を消すのが先かっ!お前が俺達を消すのが先かっ!!」

 

「絶対に負けないから・・・っ!!」

 

「私はあなたを消してみせますっ!!!」

 

 

俺はネレイを宿らせた新星を、更に突き出して体内を進んでいく!

周りの肉壁から血がドパァァッと吹き出し、顔にかかる。

 

 

『あなた達に負けはしないっ!!絶対に・・・負けないわっ!!』

 

「いい加減目を覚ましたらどうだシン!?一度しか言わねぇからよく聞きやがれっ!!」

 

 

ズガガガッ!!

更にシンの奥へと進んで行く!

 

ブズウ・・・!!

後ろの穴が塞がった。途端に俺の視界が奪われる。

俺は反応を頼りに更に進んで行く。

 

もう・・・決めるしかない!

 

 

 

「お前に全世界を壊す権利なんてないっ!!嬉しさも楽しさも幸せも知らないお前がっ!

『天地』になれるわけはねぇんだよっ!!『天地』の気持ちも知らないお前がさァっ!!」

 

 

『天地の気持ち・・・?』

 

 

ジュウッ!!!

 

突然消化液が俺の体を溶かしだした!

まるであの時の酸性雨のようで・・・カナリアの顔が歪む。

だから、俺はポンポンとカナリアの頭をたたく。

 

すると、カナリアはゆっくり微笑んで、また力強く新星を握った。

 

 

「天地はなんで2つの世界を作った!?自分の力が半減するとわかっていたのに!それはなァ!!

たった一人で孤独に生きても何も得られないからなんだよっ!!それを今、おまえはやろうとしてるんだ!!」

 

 

『うるさいっ!!』

 

 

「だから・・・っ!俺は俺の全てをかけてお前を消すっ!!おまえは間違ってしまったんだっ!!!」

 

 

新星が更に奥へと進む!

左腕は溶かされ落ちる。

 

 

「〜〜〜ッッ!!!」

 

ヒカリの右足が溶かされて落ちる。

激痛で彼女の顔が歪んだ。

だが、彼女はそれでも俺に微笑んで、力強く新星を握る。

 

 

「ッ!!!」

 

カナリアの髪がバサッと落ち、背中が焼けただれた。

グッ!とカナリアの体が傾く。

 

それと同時に新星の速度が落ちてきた。

まわりの壁が迫ってくる。

そのヌルっとした壁は、容赦なく俺達を取りこもうとしている。

 

 

 

 

(頼むっ・・・!もう少しなんだっ・・・!!俺に・・・俺にもう少し力をっ!!!くっそおおぉおぉぉッッッ!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっ・・・。

 

 

 

 

(――――え?)

 

突然、新星を纏う右手に誰かの手が乗った。

その腕をたどる・・・。

 

(・・・助けてくれるのか?)

(うん。だって・・・これは私とアスナの決着でもあるんだから)

(じゃぁ・・・久しぶりにいこう!スフィアッ!)

(任せてっ!)

 

俺とスフィアの手に力がこもる。

途端に新星が纏っていた青い光が周囲の壁を押し下げていく!

 

ビシャァァアァッ!!

 

 

 

 

「「「(いっっっけぇえぇぇえぇッッッッ!!!!!)」」」

 

 

 

 

 

俺とスフィア、ヒカリとカナリアの持った新星が一気に加速した!

 

ギュルルルルルッ!!

ものすごいオーラフォトンのかまいたちで進んで行く!

 

ズシャァアァッ!!

俺の両足が吹き飛び、マナへと還っていく・・・。

それでも俺は手を緩めなかった。

スフィアが俺の手を掴む。

俺とスフィアは同時に見合い、微笑んだ。

 

 

『きゃぁぁあぁぁぁっ!!!!』

 

 

それがシンの断末魔・・・。

新星がキィンッ!となにかにあたった。

見なくてもわかる。

『心』だ。

 

 

「新星っ!繋ぐぞっっ!!」

 

 

プツンッ・・・

途端に俺の意識が落ちる・・・。

 

 

 

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「ユウキ?」

「え・・・?」

 

俺の目の前に一人の男がいた。

真っ暗な中で、ただ一人座っていた。

 

「ユウキだよな?」

「お前・・・アスナ・・・?」

「おっ、俺を覚えてるのか?」

「まぁ・・・覚えてる」

 

ユウキは苦しい顔をする。

今までしてしまったことを思い出しているのだろう。

そんな顔をされるとどうも・・・な。

 

「ユウキ、エターナル界を頼んだ」

「は?どういうことだ?」

 

ワケもわからず、といった感じの顔だ。

俺はそういう顔を見るのが大好きだが。

 

「お前は新たなエターナルの象徴になれる。だから、がんばってくれ」

「え?でも・・・俺はもう・・・」

「大丈夫だ。シンは消えるしな」

「そしたら・・・俺も消えるんだろ?」

 

「・・・お前は消えたいのか?」

「・・・消えたくないに決まってるだろ?ユウナもいるし・・・」

「・・・なら、いけって」

 

俺はユウキの背中を軽く押した。

 

「でも・・・お前は?」

「・・・気にするな。しっかり俺も帰るさ」

「・・・わかった。アスナ!」

「ん?」

 

「・・・いろいろ、ありがとう!」

 

「・・・いいんだよ。俺こそ、おまえみたいなヤツがエターナルになってくれて、『ありがとう』だ」

 

俺は笑った。

ユウキの笑顔が・・・あまりに嬉しそうで。

ユウキは闇に消えていく・・・。

 

「さて・・・これで俺も終わりか・・・」

 

俺は力を抜いた。

すると、一気に体が半透明になった。

 

 

 

「ゴメンな・・・ヒカリにカナリア・・・。俺・・・もう・・・」

 

 

俺は必死で涙を堪える。

泣き声をかみ殺す。

粘ってみたけど、やっぱりこれはどうにもならないらしい。

 

「ぐっ・・・」

 

手で口をを押さえたつもりが、すりぬけてしまった。

 

「はは・・・」

 

そうだな・・・やること全てやったもんな・・・。

 

 

 

『よくがんばったな』

 

「・・・フォルク」

 

目の前にフォルクが現われた。

 

『よう。立派にしてくれたな』

 

「・・・リーダー」

 

カオス初代のリーダーも出てきた。

 

『アスナ・・・』

 

「スフィア・・・」

 

『いこっか?』

 

差し出されるスフィアの手。

はは・・・まいったね。

そうだな・・・全て終わったしな。

 

「そうだな」

 

俺はスフィアの手を取って立ち上がった。

 

 

「・・・じゃぁな!!」

 

 

俺は暗闇の中で、上へと昇っていく・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブワァアァァッ!!

 

巨大なドラゴンの体がマナへと還っていく。

あまりに膨大な量のマナに、あたりが金色で包まれる・・・。

 

「終わり・・・だな」

「・・・ええ」

 

ユウトとユウナがまるで雪のようなマナを見つめて呟いた。

静かに消えていくシン。

その終わりは本当にあっけなく・・・。

 

「・・・ヒカリ?カナリア?」

 

ユウトは異常を感じてあたりを見回す。

金色の光がおさまってきたというのに、アスナ、ヒカリ、カナリアの姿が見えない。

 

「洗礼、どういうことだ?」

 

{・・・}

 

なぜか洗礼もこたえない。

なんだか悲しみともとれる感情が伝わってくる。

 

「ん?」

 

一つの人影が見える・・・。

 

「ヒカリ?カナリア・・・?いや・・・違う。コイツは・・・」

 

まだ消えない金色のマナが場を包み込む中、俺は急いでソイツに駆け寄るのだった・・・。

 

 

 

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「スピリット・オブ・ネレイ」   立体展開型オーラフォトン魔法陣ver.

 

精霊召喚はオーラフォトンを操るのとはワケが違うため、特殊な展開が必要になる。

急ぎの場合は力が半減するかわりに特殊な展開をしなくてすむ。

の四つのオーラフォトンを立体のように四面に展開する。

この並びをかえることで別の精霊を召喚することもできる。が、アスナはネレイ以外に認められてないので無理。

ネレイは下に赤、側面に青と白、上に緑を展開する。

この展開で精霊を召喚した場合は精霊が本来の力を発揮できる。

ここまでくると、もはや精霊の一撃を耐えられる者はいない。アスナは確実に『心』に繋ぐためにこれを使った。

この展開はかなり熟練した者でないとできないため、今のエターナルではアスナしかできない。