「国会丼」と名付けられています。牛肉とカレーが半々に盛られ、五百円。東京・永田町の国立国会図書館の食堂で看板メニューになりました。
甘い牛肉が与党で、ピリリと辛いカレーが野党。国民を表すという半熟卵が真ん中にある。与野党がせめぎ合う「ねじれ国会」がイメージされています。実際に食べてみて、「与野党」に「国民」をまぜ合わせたら味がぐっと増しました。
麻生太郎首相は先週の日曜日、東京・秋葉原で首相就任後初の街頭演説を行いました。その一週間前には小沢一郎民主党代表が東京・原宿のスタジオで、インターネットの番組に出演しました。
秋葉原はオタクと言われる若者らが多く集まり、原宿は若者ファッションの街。選挙向けパフォーマンスの色が濃いとはいえ、政治とは縁遠い場所に政治家が足を運んでアピールするのは、国民に近づく意味からは望ましい。それぞれの現場に身を置いてみて、そう感じる面はありました。
ただ、訴えのポイントは、麻生氏が「自分と小沢氏とどちらが首相にふさわしいか」、小沢氏は「政権交代することで日本が変わる」といった観念的な事柄。もともと自民、民主の二大政党が政策の違いで分かれていない根本問題もあり、かみ合った政策論争にはなっていません。
しかし、政府が今回発表した追加経済対策は、高速道路千円乗り放題といった大胆な施策も含まれ、議論のたたき台にはなるでしょう。かきまぜると味が引き立つ丼のように国民を巻き込むためには、その是非をめぐる踏み込んだ政策論争が欠かせません。
(東京支社・岡山一郎)