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模索続く無認可保育所

2008年11月02日

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無認可保育所に預けられている子どもたちの表情は明るかった=天童市のひまわり幼児園

∞「みんなのベビーホーム」乳児死亡1年

救命法を研修、運営学び改善も

 天童市の無認可保育所「みんなのベビーホーム」で生後4カ月の乳児が死亡した事故は2日で1年を迎える。関係者にとって事故は終わりではない。1年で何が変わったのか。それぞれの現場の様子を追った。

●信頼の回復へ動く

 10月31日、天童市の無認可保育所「天童ひまわり幼児園」はハロウィーンパーティーだった。お菓子をもらって大喜びしたり「Trick or treat(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ)」が言えず泣き出したりと、子どもたちは元気いっぱい。

 坂口恵美子園長はベビーホームの事故後、保護者に謝った。別の保育所とはいえ、無認可の信頼を失う事故だったからだ。ベビーホームから来た子ども5人を預かった。食事で「いただきます」が言えない。話を聴かない……。振る舞いに驚いた。1週間後にはほかの子と同じように生活できた。「悪いのは子どもじゃない。当たり前のしつけをしなかったベビーホームの保育に疑問を感じる」

 孫を預ける祖母が足を引きずり保育所の様子を見に来た。信頼されている自負があったため、ショックだったがすべて公開した。「保護者にも事件は風化していない」と感じた。

 信頼を取り戻そうと市内13カ所の無認可保育所は動き始めている。乳幼児への救命救急法を学んだり、ほかの保育所見学で運営を学んだりと改善に取り組んでいる。

●行政の補助厳しく

 県無認可保育所連絡協議会は10月、認可保育所との格差を縮めて欲しいと、県に要望書を提出した。県児童家庭課は「保育現場の現状を重視し、減らさないよう努力する」と答えるにとどまった。

 県は09年度の予算編成で財政均衡を掲げ、一般事業の予算は前年度より10%減、福祉事業は重点分野としながらも同3%減としている。無認可保育所への補助金を増額または維持すれば、他の事業をさらに削らなければならない。

 補助金の交付要件も厳しくなった。天童市では延長保育の支援分約38万円について県が要綱を厳格に規定したため、受給できない保育所が相次いだ。0歳児を預かる際の補助金を加算したが、差し引きで減額のケースも多い。

●詰めの捜査を急ぐ

 天童署は、園長や担当の保育士ら数人を業務上過失致死容疑で書類送検する方針で、詰めの捜査を急いでいる。

 最大の焦点は乳児の死因だ。窒息死なら園の過失を問えるが、乳幼児突然死症候群(SIDS)なら「病死」扱いで、過失と死亡の因果関係を問うのが難しい。

 事故直後の司法解剖では死因が特定できず、山形大学法医学教室に鑑定を依頼。今年3月末に出たのは「窒息死、SIDSどちらの可能性もある」とする結果だった。同署はさらに複数の医師に鑑定結果を検討してもらい、窒息死の可能性が高いとの見方を強めている。

 一方、ベビーホームの保育態勢についても、職員数が国の基準よりも大幅に少なかった▽乳児らに異常がないかの見回りも怠っていた▽職員が休憩や食事を一斉にとって乳児を放置する時間帯もあったなど、ずさんな実態が明らかになった。同署は「そもそも保育の体をなしていない」と、死因とは別に運営にも過失原因があったとみている。

キーワード☆「みんなのベビーホーム」の乳児死亡事故 07年11月2日、天童市柏木町の無認可保育所「みんなのベビーホーム」(後藤キミエ園長=当時)で、預けられていた会社員沼沢弘さんの長女悠妃(ゆう・ひ)ちゃん(当時4カ月)が死亡した。乳児10人を世話する保育士2人は別の部屋の乳幼児の世話や昼食で部屋を離れ、うつぶせでぐったりする悠妃ちゃんに気づいたのは4時間以上後だった。同保育所は11月15日に閉園した。

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