来春のダイヤ改定で姿を消すことになった急行「つやま」=岡山県津山市、中村写す
昼間のJR急行としては全国で唯一残り、岡山県の津山線(岡山―津山、58.7キロ)を走る「つやま」が、来春のダイヤ改定で姿を消すことになった。急行料金を払っても所要時間や車内設備は快速と変わらず、地元住民の呼び名は「ぼったくり急行」。それでも、鉄道ファンは「最後の急行がなくなるのは寂しい」と惜しんでいる。(中村二郎)
「つやま」は1997年11月末のダイヤ改定で誕生。津山線経由で岡山―鳥取を結んでいた急行「砂丘」の廃止に伴い、沿線自治体の要望で新設された。最長4両編成のディーゼル列車で、津山線を一日1往復している。
岡山―津山には普通列車の他に快速が一日6〜7本走り、所要時間は約70分、運賃は1110円。「つやま」は快速より停車駅が一つ少ないだけで所要時間は65〜63分と大差がなく、座席幅も通常車両と変わらない。しかし、運賃に加えて急行料金730円が必要。快速と勘違いして乗り、車掌から急行料金を請求されて慌てて下車する客もいるという。
沿線自治体は急行が停車することを「まちの格」ととらえていたが、こうした市民からの不評を受け、快速の増便をJR西日本に要望。反対していた「つやま」の廃止も受け入れた。
鉄道ファンで「みまさかローカル鉄道観光実行委員会」メンバーの松田信也さん(47)=岡山県津山市=は「利便性重視は仕方ないが、日本でここだけの『昼間に走る急行』という強みを観光に生かす知恵はないものか」と残念がっている。
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JRの急行は60〜70年代にかけてが最盛期だった。鉄道研究家の寺本光照さんが過去の時刻表で調べたところ、旧国鉄時代の67年には、列車名で301種の急行が運行していた。その後は、料金の高い特急に格上げされるなどして減少傾向に。87年の民営化以降、激減していた。