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<連載>メガ電機へ(上) 技術流出・バラ売り阻止

 パナソニックが三洋電機を2009年4月をめどに子会社化し、国内最大の“メガ電機”が誕生する見通しとなった。電機大手同士の再編は日本で初めてだ。本社社屋が1キロしか離れておらず、互いにライバル視してきた両社が一体となる道をなぜ選んだのか。大筋合意に至るまでの水面下の動きや今後の課題を探る。

 10月下旬のある日、パナソニックの大坪文雄社長と、三洋の佐野精一郎社長は秘密会談を持った。三洋子会社化を巡る大詰めの協議で、佐野社長は「大坪社長は我々の気持ちをわかってくれる方だと思っています」と締めくくった。この瞬間、三洋は子会社化の道を受け入れた。

 2人は、パナソニックが三洋株を引き受けて資本・業務提携を結ぶ構想が浮上した4月前後から、秘密裏の会合を重ねてきた。仲立ちしたのは、両社の主力銀行で、三洋の大株主でもある三井住友銀行の幹部。6月下旬の両社の株主総会後、その回数は増えた。

 水面下で行われた一連の協議で、佐野社長はパナソニック側から「三洋の独自性を確保し、約10万人に及ぶ従業員の雇用を維持する」という言葉を聞き、心を傾かせていった。

 09年3月末で、三井住友銀行、米証券大手ゴールドマン・サックス(GS)グループ、大和証券SMBCの金融3社が保有する三洋の優先株(普通株換算で発行済み株式の約7割)の譲渡制限がなくなる。パナソニックと三洋は、「09年3月」から逆算して協議を重ねていったが、その道のりは平坦ではなかった。

 大株主の一部はより高い価格での売却をもくろみ、複数の買い手を探し、競争させようとした。

 「韓国のサムスン電子が(三洋株を)狙っているようだ」などという話が、何度も飛び交った。三洋は次世代自動車に不可欠なリチウムイオン電池で世界最高水準の技術を持つ。経済産業省幹部は「外国企業に売られたら困る」と技術の国外流出を懸念し、「国外流出がいやなら、国が金を出して三洋株を買えばいい」という大株主も現れた。

 その中で、三井住友銀行は「価格だけで決めると事業がバラ売りされるおそれがある」との考えで一貫し、「三洋電機をあんな風に(解体)したと言われたくない」(幹部)とパナソニックとの話をまとめていった。

 9月からの米国発の世界金融危機は、GSや大和証券SMBCの経営に打撃を与えた。利益が見込めるうちに三洋株を売ろうという動きが強まった。「株主側の事情で交渉が加速した」(パナソニック役員)ことも、大型再編の実現を後押しした。

2008年11月2日  読売新聞)

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