31日夜に更迭された航空自衛隊トップの自宅は1日朝、ひっそりと静まり返っていました。
<我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣である>(田母神俊雄前空幕長の論文)
過去、日本がとった行動について、政府見解とは違う歴史認識を主張する論文を発表した航空自衛隊の田母神俊雄前幕僚長。
「個人的に(論文を)出したとしても、今、立場が立場だから適切じゃないね」(麻生太郎 首相)
「要職を解くということであります」(浜田靖一 防衛相)
政府は31日夜のうちに、田母神氏の幕僚長としての職を解き、航空幕僚監部付きとする人事を決めました。幕僚長の職務は当面、幕僚副長が代行します。
田母神氏が発表した『日本は侵略国家であったのか』と題された論文は、民間企業の懸賞論文に寄稿され、最優秀賞を受賞していました。
<日本は19世紀の後半以降、朝鮮半島や中国大陸に軍を進めることになるが、相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない。我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者なのである>(田母神前空幕長の論文)
論文の中で田母神氏は、日中戦争、太平洋戦争について、日本の行動を正当化する持論を展開しています。
「『謀略史観』、それを全部並べているというところに一番大きな問題がある」(現代史家 秦 郁彦 氏)
現代史家の秦郁彦氏は、少々あきれ顔です。
「非常に単純な事実の誤認、人名、日付、その他、そういうものをやたら間違えていますね。細かいことを言うと、この1936年の第2次国共合作っていうけれど、これ37年なんです」(現代史家 秦 郁彦 氏)
日本がかつて行った侵略と植民地支配に関する政府の見解は、13年前に発表されたいわゆる「村山談話」です。
「植民地支配と侵略によって多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害と苦痛を与えました」(村山富市首相【当時】)
麻生総理もこれを継承する考えを先月表明しています。この政府見解を公然と否定する人物が航空自衛隊のトップにいたこと自体が問題だとして、野党側は批判を強めています。
「二度とこのような発言をする人が政府の中に、私心であったとしても一人もいなくなるように、民主党としても行動していく覚悟です」(民主党 鳩山由紀夫 幹事長)
「あの論文、全部読みました。びっくりしました」(社民党 福島みずほ党首)
一方、与党からも・・・。
「憲法の基本も理解していない。自分の発言がどう社会に影響するのか判断力もない」(公明党 山口那津男 政調会長)
今回の更迭劇は、かつて侵略を受けた側の中国や韓国でも報道がされました。
「航空自衛隊の幕僚長・田母神氏が一編の侵略戦争の論文を発表し、日本政府は即座に幕僚長の職を解いたと発表した」(中国・CCTV)
韓国のYTNニュースは、在日韓国大使館関係者の話として、日本政府が韓国政府に対し、「過去の過ちに対して謝罪した日本の基本的な立場に変わりはなく、今回の論文が日韓関係に悪影響を与えることがないよう望みます」と伝えたと報じました。
田母神氏は今年4月にも批判を浴びています。航空自衛隊のイラク空輸活動を違憲とした名古屋高裁の判決について、「そんなの関係ねぇ」と発言したのです。
軍事アナリストの小川和久氏は・・・。
「
政府は、田母神氏の後任人事を急ぐとともに、給油継続法改正案の国会審議への影響を避けたい考えですが、野党側は、田母神氏の国会招致も視野に政府を追及する構えをみせています。(01日17:35)