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空幕長更迭 侵略が「ぬれぎぬ」とは(11月1日)とんでもない航空自衛隊のトップがいたものだ。 「日本が侵略国家だったというのはぬれぎぬだ」。防衛省の田母神(たもがみ)俊雄航空幕僚長が民間企業の懸賞論文で、こんな自説を明らかにした。 植民地支配の歴史を正当化する、驚くべき内容だ。 浜田靖一防衛相はただちに更迭した。当然である。しかし、やめさせれば済むという問題ではない。 空幕長は論文で「わが国は蒋介石により日中戦争に引きずりこまれた被害者」との持論を展開。朝鮮半島に関しても「日本統治下で豊かで治安が良かった」と植民地支配の正当性を主張した。 日本政府は一九九五年の村山富市首相談話で、アジア諸国に対する「植民地支配と侵略」を公式に認め、「痛切な反省の意と心からのおわびの気持ち」を表明している。 麻生太郎首相も引き継ぐ考えを明言している政府見解を、真っ向から否定する内容だ。政治的中立を求められる空自の指揮官として常軌を逸したことである。 文民統制(シビリアンコントロール)の観点からゆるがせにできないのは、空幕長が集団的自衛権の行使にも言及していることだ。 論文で、東京裁判について「あの戦争の責任を押し付けようとしたものである」と述べた上で、「集団的自衛権も行使できない」と憲法上の制約を批判した。 これは集団的自衛権の行使は許されないという政府の憲法解釈に対し、制服組の責任者の一人が正面から異議を唱えたものと言える。 さらに攻撃的兵器の保有も認められるべきだとの立場も表明している。到底見過ごすわけにはいかない。 首相は「立場が立場だから適切でない」と述べ、防衛相も同様の認識を示した。 問題は、このような考えを持つ人物をこれまで重要ポストに据えておいたことだ。 田母神空幕長は今年四月に、空自のイラク空輸活動を違憲と判断した名古屋高裁判決について「そんなの関係ねえ」と言い放ち、批判を浴びた。その時点ですでに適格性が疑われていた。 臨時国会では、海上自衛隊のインド洋での給油活動を延長する法案が参院で審議されているさなかだ。野党の追及で、その行方にも影響を与えることは避けられまい。 中国や韓国が強く反発するのも必至だ。十二月中旬には日中韓首脳会談が首相の提案により福岡で開かれる。こんなことでは、アジア外交は出だしからつまずきかねない。 首相は政権運営にまた一つ難題を抱えこんだ。 |
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