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「ふぃ・・・」

 

俺は新星を降ろす。

目の前にはマナに還っていくミニオン。

 

 

「なぁアスナ」

「うん?なんだユウト・・・」

 

「・・・なんでカナリアはさらわれたんだ?」

「・・・」

 

 

俺は黙る。

思い当ることなど・・・。

新米のカナリアをさらったとしても戦力にはならないので、プラスの面がまったくない。

むしろ、こうやってオレ達に狙われるのだからマイナスだ。

 

 

「さぁな。もしかしたら、カナリアが好きだとか」

「・・・」

 

ユウナに睨まれた。

 

「え、えと・・・冗談、です。ハイ・・・」

 

俺はちぢこまってそうこたえた。

 

 

「言葉が悪いけど・・・普通のスピリットだったしな。俺にもさらう理由がわからないんだ。

力的にはアセリア達よりも劣ってた気がするし・・・」

 

「ふぅん・・・?」

 

俺はなんとなく頷く。

 

 

「ん・・・だったら、聞けばいい」

「そうそう。それ以外にも聞かなくちゃいけないこともあるし」

 

アセリアとキョウコはうんうんと頷く。

 

 

「・・・随分とお気楽な」

「・・・それをアンタがいう?」

「まぁな。さて、と。やりますか!」

 

俺はバンッ!とドアを蹴りあける。

入った瞬間に、ブワァッ!っと殺気が襲ってきた。

 

 

 

 

「随分と殺気立ってるじゃないか、ユウキ」

「悪いな。あいにく俺の雰囲気はこんなもんだ」

「そいつは恐い。女もよってこないだろ?」

「はは・・・まぁな」

 

「お、おいアスナ・・・」

 

オレ達の会話を止めるユウト。

さて・・・

 

 

「なんでカナリアをさらった?」

「惚れたからさ」

「・・・ヨタに付き合ってる暇はないんだ。手短にいけるか?」

「わかった」

 

「ユウキ・・・!こっちは真面目に!!」

 

俺はユウトを抑える。

 

「まぁ・・・どうせ、マナの入れ物にでもするつもりなんだろう?」

 

ピクッと一瞬ユウキの眉が動いた。

 

「え?」

 

 

「いくら心とはいえ、マナのキャパには限界がある。そこで登場するのがカナリア。

自我を消して純粋にマナの塊にしてしまう・・・そうだろ?

そうすれば、おまえがカナリアの体の構成をいじくるだけでいくらでもマナを入れることができるだろうしな」

 

 

「そんな・・・そんなことをするつもりだったのか!?ユウキッ!!」

「・・・」

 

ユウキはユウトの言葉を聞いていないのか、ずっと俯いている。

 

 

「カナリアを選んだ理由は、いざというときに最も力を発揮できる青スピリットだったから・・・だろ?

そうなるとアセリアでもよさそうだが・・・アセリアの永遠は天位の眠ってる姿だからな。

あんまり危険な因子は引き入れたくなかった・・・ってところだろ?」

 

パチパチ・・・ユウキが手を叩く。

 

 

「すごいな。そこまでわかってるなんて・・・」

「ほとんどはトキミから聞いたんだけどな。もし、俺がお前の立場ならやること・・・それを言っただけだ」

 

「ユウキッ・・・!おまえは・・・本当に!?」

「ユウト・・・そうだ。俺は、アスナの言ったとおりの事をしようとしている」

 

ユウキは心を引き抜いた。

 

 

「ウソでしょ!?アンタはそんなことする人間じゃなかったじゃない!!」

 

「キョウコ・・・オレ達はもう人間じゃない。エターナルだ。

それぞれがそれぞれの目標を持って戦う・・・。その目標のためには、俺は何でも犠牲にするさ!!」

 

「ん・・・なら・・・倒すだけ。カナリアを・・・助ける!」

 

アセリアは静かに永遠を構えた。

 

 

「ユウキ・・・」

「ユウナ。そんな顔をしないでくれ。戦いにくくなる」

 

ユウキの目には悲しみが浮かぶ。

やはり、恋人に剣を向けるのは辛いのだろう。

 

 

「最後に・・・もう一回だけ。帰って・・・こないのね?」

「・・・ごめん」

 

ユウキは短く謝った。

それを見て、想いを構えるユウナ。

 

 

「なぁユウキッ・・・!どうして・・・!?」

 

ユウトはまだ聖賢を構えられない。

 

 

「くどい。おまえが、佳織ちゃんを一人にしてでもエターナルになりたい、と思ったのと同じだ!」

「!!」

 

ユウトの顔が歪んでいく・・・。

目尻に涙が浮かんできていた。

 

 

「ユウト、下がってろ」

 

俺はユウトを押し下げる。

戦う覚悟ができてないヤツを前に出せない。

 

 

「それに・・・カナリアだけじゃないんだろ?おまえが集めた『入れ物』は」

「・・・そうだ」

 

ユウキは心を壁にむかって振るった!

 

 

 

ズガァァンッ!!!

 

そこにあったのは・・・。

 

「・・・やっぱりな」

「ひどい・・・!」

「ん・・・」

「ユウキ・・・最低よ・・・!」

 

「なんで・・・なんでこんなことしてるんだ!?ユウキッ!!」

 

 

ユウトがたまらず怒号を飛ばす。

崩れた壁の向こうには、カプセルに入れられ、チューブで繋がれているエターナルの姿・・・。

それも、カナリアだけではない。

軽く20人はいる・・・。

 

 

「もし、これで全世界が守れるというのなら、俺は迷わずコイツらを使う」

「・・・ユウキ」

「・・・意外に冷静なんだな、アスナ。てっきり、俺はお前が一番最初に怒るかと思ったけど」

 

 

「・・・ふざけるな」

 

 

「ん・・・?」

「もう一度だけ・・・言う。ふざけるな」

「・・・なんだと?」

 

 

「お前にはほとほと失望したよ。よくそれで第一位の持ち主が勤まるな?」

「・・・」

「世界を守るだって・・・?きっと、誰もおまえに守ってほしがらないさ」

「・・・」

 

 

「ただの自己満足で世界を守るなんて二度と言うな。こうやって簡単に誰かを犠牲にして・・・

おまえの守りたい世界・・・なんで、おまえは世界を守りたいんだ?」

 

「なに・・・?」

 

 

「お前がそこまでして世界を守りたいのはなぜだって聞いてるんだ。

エターナルの干渉を防ぐため?そんなの、エターナル全滅させるなら意味がないだろ。なんでおまえは世界を守りたいんだ?」

 

「!!」

 

 

「おまえがやってきたことは、一見たいそうな理想に見えて、実際はその程度のものだ。

世界を守る・・・?違う。おまえが守りたいのは、そうやって自分の存在をアピールする場所を守りたいだけなんだよ!!

そのためにカナリアや全世界を巻き込んで・・・!

そうやって大義にこじつけて・・・お前はいったい何がしたいんだ!?いい加減・・・気付けよ」

 

「え・・・?」

「前のおまえなら気付いたはずだ。でも・・・それを気付かせないようにしてきたヤツが・・・今もお前の傍にいるだろ?」

 

 

俺は新星を構えた。

やっと・・・本性をみせやがるか!!

 

「シンッ!!!」

 

グォォオォォッ!!!

 

突然シンがブレはじめる。

白く輝いていた刀身がどんどん黒くなっていく・・・。

 

「うあぉあおぁ!?」

 

そのユウキの絶叫と共に黒い竜巻が巻き起こる!!

 

「ぐっ・・・アスナッ!これって・・・!」

 

ユウト達も気付く。

俺は風を気にせずひたすら竜巻の中心を眺める。

ユウキの精神があっという間に闇に染まっていくのを感じる・・・。

 

 

 

シュゥゥ・・・

 

竜巻が止む。

そこに立っているのは・・・。

 

「ふっ・・・やはりアスナだけは騙せなかったわね・・・」

 

不敵に微笑むユウキ。

いや・・・シン。

 

 

「やっぱりお前だったんだな・・・!ユウキを操っていたのは」

「まぁね。不変が目一杯抵抗してくれたおかげでなかなか支配できなかったけど・・・ようやく登場できたわ」

 

う〜ん、と背伸びするシン。

 

「ユウキと契約するその時から・・・これを狙っていたんだろ?この作戦で・・・一気に『天地』に戻るつもりか!!」

 

 

「そうよ。ゲート・フリーズなんて作戦はないわ。本当の作戦は、カタストロフ・クェイク。

全ての世界を一気に破壊して、全てを浮マナ化して、一気に私は天地に戻るわ!」

 

 

「させないさ・・・!絶対にさせてたまるか!」

「新星程度の剣で、私に適うと思ってるの?前どうなったかもう忘れた?おめでたいわねぇ。いいわ・・・軽く遊んであげる」

「それは魅惑的なお言葉で。ついでに・・・ここで砕かれてくれないかな?」

「ふふ、それは無理よ。さぁ・・・存分に楽しみましょうか」

 

 

シンは体を浮かせた。

 

 

ブォォオォッ!!!

 

 

突然オレ達をプレッシャーが襲った。

ユウキの時よりもつよく、つい体がビリビリしてしまう。

 

「くっ・・・新星ッ!」

 

キィンッ!!

 

俺はオーラフォトンを展開させた。

五分とはいかないが、それなりにプレッシャーが和らいだ。

 

「いくぞシンッ!おまえの好きには・・・させない!!」

 

俺は全く事情を飲み込めていないみんなを置いてシンに飛びかかった。

この衝動を俺は抑え切れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ始まったころだね・・・」

「はい・・・」

「そうだね・・・」

 

ローガスはカオスの部隊編成の紙から顔をあげ、窓から景色をを見る。

トキミとテムもそれにならう。

 

 

「しかし・・・本当なのですか?シン・・・」

「・・・あぁ。あの剣は、僕とアスナが封印したはずの剣だ」

 

「どういう・・・こと?」

 

テムが一人だけわからずローガスにたずねた。

 

 

「あの剣は、ロウとカオスを行き来して、エターナルを裏から操っていたんだ。

もう・・・何十周期も前からね。それに気付いた僕とアスナは、二人でなんとかシンを封印した・・・。

でも、まさかハイペリアにいってたなんてね」

 

 

「ローガスさんは知らなかったの?」

「まぁね・・・。封印したらすぐ僕もアスナも気を失っちゃって・・・。ギリギリだったんだよ。破壊しないで封印するのは」

「なんで破壊しなかったんです?」

 

トキミが首を傾げた。

ローガスの言い方からして、壊すほうが簡単らしいが・・・別に壊してもよいだろう。

普通ならば・・・。

 

 

「そうはいかないんだ。アイツは・・・かならず、ロウかカオスのエターナルを侵食しているんだ。今回はそれが・・・」

「ユウキさん・・・というわけですか」

 

テムは秩序で地面をコンッと叩く。

 

 

「ああ。僕の運命ならシンには負けないんだけどね・・・助けなくちゃいけなかったから。そのエターナルを」

「それで苦労したんですか・・・」

 

 

「まぁ、その時もアスナがやってくれたんだけどね。

ただ・・・アスナは随分辛い思いをしたけど・・・随分シンはアスナの事が嫌いみたいだね」

 

 

「そりゃ封印されれば・・・。でも、大丈夫なのですか?」

「え?」

「アスナさん・・・達」

 

 

「・・・きっと大丈夫。生きて帰ってくるって約束したからね・・・。信じてるぞ、アスナ・・・」

 

ローガスは青い空を見て、再び机に向かった。

 

 

「あ、そこ違いますよ?」

「あぁ、そこも違うよ」

「う、うぅ・・・」

 

二人にイロイロ言葉や文字を指摘されながらちょこちょこ進むローガス・・・。

 

「あれ?そういえば・・・随分辛い思いって・・・どういうことですか?」

 

トキミが口に人差し指を当てながら言う。

 

「あぁ・・・封印した時・・・侵食されてたエターナルが、アスナの・・・恋人だったからね」

 

「「え・・・?」」

 

トキミとテムは同時に間抜けな声を出してしまう。

 

 

「いい加減に見えて、結構辛い過去があるんだよ、アスナは・・・。

ていうか、僕から見れば、あーいうふうにいい加減にして・・・恋人がいた頃を思い出しているんじゃないのかな?」

 

 

ローガスがペンを走らせながらこたえる。

どこか声に悲しさが含まれているように感じるのは・・・きっと、気のせいじゃない。

 

 

「名前は・・・なんていったの?」

「名前は・・・スフィア」

「あれ?でも・・・封印が成功したってことは、その人はまだ生きてますよね?」

 

 

「うぅん・・・封印は成功したけど・・・。

その時の戦いで限界を越えた彼女の体は、一瞬でマナに還ったよ。神剣の加護もなくなったしね・・・」

 

 

「え?それじゃぁ・・・もしかして、ユウキさんもそうなる・・・?」

「どうだろうね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でやぁあぁっ!!」

「せいやっ!!」

 

バシュッ!!

 

お互いに剣を振るう。

新星はシンの頬をかすめ、シンは俺の左腕を切り落とす。

 

ボトッ・・・!!

 

切り落とされた俺の左腕は一瞬でマナに還る。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・!」

「随分・・・強くなった・・・じゃない?」

 

オレ達はお互いに距離を取り息を整えた。

ユウト達から力をもらっても不利・・・。

 

でも!

 

 

「絶対に・・・お前だけはぁっ!!許さないッ!!」

「許されるつもりもないし?まだスフィアとかいう小娘のことを引きずってるわけ?まったく、これだから未練がましい男は」

 

バカにしたように呆れた、と顔を振るシン。

それが、俺の怒りを膨張させていく。

 

「うるさい・・・!新星っ!!」

 

ビジジジジッ・・・!!

マナが急激に集まり、俺の左腕を構成していく。

 

「許すもんか・・・っ!!!絶対にここで消してやるッ!!」

 

俺はシンにとびかかった!

「な、なんか・・・」

 

ユウトは戦うアスナを見て呟く。

 

「鬼気迫るというか・・・アスナって、こんな感じだったっけ・・・?」

 

いつもと違う迫力に気圧されるキョウコ。

何も、プレッシャーの原因は永遠神剣だけではない。

 

 

「アスナは・・・恋人をシンに侵食されたから」

「え!?それって・・・本当!?」

 

ユウナの一言に反応するヒカリ。

 

 

「ええ。確か、スフィアって名前の子。シンに侵食されて、封印したときに消滅してしまったらしいけど・・・」

「ん・・・封印?」

「ええ。ローガスとアスナでシンをね」

「そうなのか・・・」

「あれ?でもそしたら・・・ユウキはどうなるんだ?スフィアって子みたいに・・・?」

 

「・・・さぁね」

 

ユウナは二人の戦いを眺めたまま答えた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

俺は限界に近い体を無理遣り動かす。

絶対に・・・消すッ!!

消してやるッッ!!!

 

キィンッ!!

 

新星がシンにぶつかる。

 

「ぐっ・・・さすが原初の剣・・・!」

 

シンの顔に焦りが見える。

今度は・・・消してやるッ!!!

 

ギギッ!

パキパキィンッ!!

俺の剣がシンを弾いていく。

 

ザッ!!

バスッ!!

一歩踏み込んで斬るが、ギリギリで避けられる。

 

 

「いける・・・」

 

 

ユウトがつぶやく。

シンの顔には焦りがあるのに対し、アスナには勢いがある。

どっちが優劣かハッキリしていた。

 

 

{・・・どうかな}

 

 

聖賢がつぶやく。

いかにも、それは違う、と言わんばかりに。

 

 

「どうしてだ?」

{ユウト、相手の思惑を知るためには、まず目を見ろ。シンの目はどうだ?そこに焦りはあるのか?}

「え・・・?」

 

 

シンの目・・・そこに、焦りはない。

むしろ、なにか企んでるような目だ。

 

 

{アスナのもっとも強力な武器である、状況把握能力が怒りによって失われた。

しかも、お前等が割って入れないような戦いをすることで援護も期待できない・・・そういうこともある}

 

 

「まさか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううあぁああぁっ!!!」

 

バキィッ!!

シンをとらえた!

 

ズザァァアァッ!!!

 

シンの体に新星がのめり込み、地面に転がした!

 

「ぐぅっ!」

「トドメ・・・ッ!!」

 

ザッ!

シンが居合の構えをとった。

俺は技をださせまいと、すかさず飛び込む!

 

 

 

ドゴォォッ!!!

 

「っ!?」

 

ズザァアアァッ!!

 

何か衝撃波が俺の腹を直撃した。

その痛みで俺はうずくまってしまう。

 

「なんだ・・・!?」

 

速すぎて見えなかった。

シンは居合の構えを解いていない。

 

ドゴォォオォッ!!!

 

「っ!?」

 

フォンッ!!!

ビリビリッ!!!

 

俺のすぐ傍を衝撃波が通った。かすってもいないのに、ビリビリと体に響く!

 

「なんだ・・・!?」

 

「ふふっ・・・これがあなたと私の差。思い知った?」

「何度も同じ手が通用すると思うなっ!!」

 

俺は剣を構え、シンの攻撃に備えた。

ありったけの集中力で正体を見破ってやる!

シンがゆらりと居合の構えに戻した。

 

「くるっ・・・」

 

 

ドゴォォオォッ!!

ズパァァアァンッ!!!

 

「っ!?」

 

ズガガガッ!!!

 

俺は壁に激突して背中を打ち付ける!

アゴを打ち抜かれ、一気に体から力が抜けていく・・・!

 

「ぐっ・・・」

 

なんだ今の!?

何も・・・見えない・・・っ!?

 

「ふふ、見切ろうったってそうはいかないわ。私の速さを見切れるはずないもの」

 

 

 

 

 

 

 

{アスナよ}

 

突然聖賢の声が頭に響いた。

 

(なに!?)

{苛立つな。あれは、オーラフォトンにより限界まで鍛えぬかれたスピードで放つ居合だ。おそらく、ローガスでさえ見切れない}

(そんな・・・っ!)

{しかも、オーラフォトンは速さを引き出すためだけに使われているため、感知が不可能だ。単純ながら、もっとも恐ろしい技だ}

 

「・・・サンキュ」

 

 

 

 

 

なるほどな。

どうりで構えが一定なわけだ。

だけど・・・!

さっきからちょっとずつ体の位置が動いてる。

どうやら少しは助走が必要のようだ。

 

「なら・・・近接だっ!!」

 

ダッ!!

一瞬でシンに詰め寄る。

 

「・・・っ!?」

 

だが、そこにシンはいなかった・・・。

 

「遅いわ」

 

「っ!?」

 

ドゴォォッ!!!

ズパァァアァンッ!!!

 

「あぁあぁッ!?!?」

 

ズガァアァンッ!!

 

背後にシンがいて・・・居合で打ち抜かれた!

体全身が砕けたように力が入らない・・・!

俺はなんとか両腕で立つ。

 

 

「あなたの限界速度なんてそんなもの。

それに、一瞬で攻める場合はかならず一直線なのよね、移動は。だから・・・ちょっと自分の位置をかえればいいだけ」

 

 

シンが余裕だ、と笑う。

 

「なんで・・・!こんな力の差が・・・っ!」

「バカね。あなたはどうせスフィアが死んだ、とか言って怠けてたんでしょうけど、私はちゃんと力をため込んでいたのよ」

 

 

「・・・!」

 

 

「親しい存在の死に耐えられず、逃げてばかりいるあなたなんかに私が負けるはずないじゃない。このクズ」

「ぐっ・・・!殺した本人がそれを言うか・・・っ!!」

 

俺は新星を構えた。

絶対に許さねぇ・・・っ!!

 

「さて・・・ユウキの体も手に入れたことだし、ちょっとおもしろいもの見せてあげる。連発するからね?」

 

 

ブォォオオォッ!!!

シンの体に、赤と青がまざりあった奇妙なオーラフォトンがまとわりつく!

 

ビジジジジッ!!!!

 

パシュッ!

その威圧と雰囲気だけで頬が切れる!

 

「っ・・・!?」

 

とたんに体の動きが鈍くなった。

 

 

 

(なんだ・・・!?この威圧感は!?)

 

 

 

初めて感じる圧倒的な力・・・。

以前戦った時にこんな差はなかったのにっ!!

 

 

「我が魔力、我がオーラフォトンよ!その姿をひとつにかえ、敵を薙ぎ払えッ!!!!」

 

 

ゴンッッッ!!!

ドパァアァアアァッ!!!!

空から地面に刺すような重い衝撃!

 

ザパッ!!!

ドゴォォオオォッ!!!!

地面に十字に衝撃波が走る!

 

「っ!?」