元暴力団組長の死刑囚、後藤良次被告(50)が県警に提出した上申書で発覚した保険金殺人事件で、後藤被告が7日、首謀者として名指しした元不動産ブローカー、三上静男被告(59)=殺人と詐欺などの罪で起訴=の公判に証人出廷した。事件発覚後、公の場に初めて姿を見せた後藤被告は「先生」と慕っていた三上被告を「三上」と呼び捨てにし、事件への関与を詳細に証言。三上被告側は、厳しい立場に追い込まれた。
後藤被告は、三上被告らと阿見町のカーテン店経営、栗山裕さん(当時67歳)を保険金目的で殺害したとして、殺人罪で起訴されている。今回は検察、弁護側双方の証人として水戸地裁に出廷した。
検察側は、2人が99年10月に知り合い、6年後に上申書を提出するまでの経緯を順を追って質問。後藤被告は「酒で弱らせて死なせちゃおう」と三上被告に持ちかけられたことや、約束の報酬を受け取れず関係が悪化したやりとりを明らかにした。
一方の弁護側は、後藤被告が事件当時、覚せい剤を使用していた点を重視。「栗山さんに覚せい剤を飲ませたのでは」「幻聴や幻覚があったのではないか」などと問い詰め、供述の信用性などを問題視した。後藤被告は「殺害直前、覚せい剤を溶かした飲み物を渡したが、本人は飲んでいない」「覚せい剤はとっても気持ちいいが、幻聴、幻覚はなかった」と反論した。【山本将克、山崎理絵、山内真弓】
事件を告白した後藤被告と、無罪を主張する三上被告が法廷で初めて顔を合せた7日の公判。2人の「直接対決」が行われた水戸地裁210号法廷では、激しいやりとりが続いた。
後藤被告は上下ダークグレーのスエット姿で登場。確定死刑囚が証言台に立つという異例の展開になったため、不測の事態に備えた刑務官4人が後藤被告を取り囲んだ。
鈴嶋晋一裁判長から裁判の諸注意を受けながら、後藤被告は三上被告が座る被告席をにらみつけるように見た。三上被告は眼鏡をかけ直して顔を上下させ、落ち着かない様子だった。
公判は、検察側の尋問で始まった。淡々と受け答えしていた後藤被告だが、弁護側の尋問が始まると時折、気色ばんだ。
弁護側は後藤被告に「死にたくないから(上申書を)出したのでは」などと質問。後藤被告は「それはありますね」「誰でも生き延びたいでしょ」と言い放ったが、事件がでっち上げだったと畳み掛けられ「そんなことない」と語気を強めた。
毎日新聞 2008年10月8日 地方版