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「ういぃっす。元気してたか?ローガス」

 

オレ達はやっと解放できたローガスに会いにきた。

すると、ローガスは孤軍奮闘していたとは思えない程の満面の笑顔でオレ達を迎えた。

やはりローガスには『怪物』という言葉がよく似合う。

 

「アスナ!やっとでてきてくれたんだね?」

 

俺の手を両手で持ってはしゃぐローガス。

俺も久しぶりの親友との再会に心が踊った。

 

「みんなも、よくアスナを連れてきてくれた」

 

「まぁな」

 

ユウトは軽く会釈して椅子に座る。

 

「それに・・・随分と新しいエターナルを・・・」

 

「あはは・・・は。そっちはユウトのせいだから」

 

「お、おい!俺におしつけるのか!?」

 

「何言ってるんだジゴロ。惚れられた女の責任くらいは持て」

 

「エロスナが何を偉そうに・・・!」

 

「エロスナ?」

 

ローガスがその単語に反応する。

 

「気にするな」

 

「アスナ様」

 

「ん?なにテム」

 

テム・・・テムリオンの愛称。

名付け親は俺。

 

「ここは?」

 

「あぁ・・・カオスの本拠地ってところ」

 

「随分小さいトコロなんだねっ!」

 

「だとさ、ローガス」

 

「その子は・・・」

 

「あぁ、テム。テムオリン。知ってるだろ?」

 

「そりゃ知ってるけど・・・なんでここに?」

 

「ローガス、随分鈍くなったなぁ。カオスに来てくれたからに決まってるだろう?」

 

「そうじゃなくて・・・なんでカオスに?」

 

「俺に惚れたんだって」

ゲシッ!!

「いってぇぇっ!!?」

 

すねと足の甲を同時に攻撃された。

 

「おほん・・・テムオリンと申します。これから、よろしくお願いいたします」

 

「は、はぁ・・・」

 

ローガスはよくわからないが握手する。

 

「猫被っちゃって・・・」

 

「トキミさんじゃないもんっ!これが私の性格ですっ!誰かさんと違って!」

 

「はぁ〜?そうですかぁ・・・その誰かさんはよぉっぽど粗暴な性格なんでしょうねぇ・・・」

 

「そうだよ?私が会った人の中では一番。あ、それにストーカーまでやってたって話だよ?ふふ」

 

「ふふふふふ・・・」

 

トキミとテムが睨み合う。

どうも二人は仲が良い。

 

「まったく・・・素直じゃないな、二人とも」

 

「「アスナさん(様)は黙っていてください!!」」

 

「ぅ・・・」

 

トキミとテムの迫力についたじろいでしまう。

うぅ・・・恐いよぉ・・・。

 

「大変だな」

 

「ん・・・まぁ、元気な証拠だし。それに・・・ローガスも救えたし・・・今はこれくらいでちょうどいいんだ」

 

「・・・そうだな」

 

俺とユウトとフォルクはその二人の喧嘩を眺めていた・・・。

 

「でも・・・なんで様付けなの?」

 

「あぁ・・・なんだかさ・・・」

 

「アスナ様〜」

 

ぽふっ・・・!

俺に飛び込んでくるテム。

 

「・・・えぇと」

 

ローガスは頭を抱える。

 

「以前挑んできた時はものすごーく・・・憎らしかったんだけど」

 

「ホラ、テムって服装だけ見れば天使・・・とも言えなくもないだろ?」

 

「ま、まぁ・・・そうなの?」

 

それでもこめかみをキリキリさせているローガス。

 

「なんだか、神剣から解放したら、やたら懐かれちゃってさ」

 

俺はテムの髪を撫でる。

すると、目を瞑って気持ち良さそうに、ゴロゴロと猫みたいにじゃれついてくる。

まるで親子・・・。

 

「ほとんど精神を神剣に呑まれてたみたいでさ。これが本来のテムみたい」

 

「うそ〜ん・・・こんなかわいげのある子だったの?トキミなんかあっという間に人気抜かれちゃうんじゃない?」

 

ローガスがトキミをちらっとみた。

相変わらずユウトをいじってあそんでいる。

 

「テムってホラ、ヘタすればオルファより可愛いかもしれないじゃん?」

 

「ま、まぁ・・・そうなの?」

 

「最初は俺の事『ご主人様』だぜ?何もしてないのに仲間の視線が痛かったよ・・・」

 

「ねぇアスナ様〜」

 

「ん?どうしたテム?」

 

「お腹すいた〜。食事しよ〜?」

 

「そうだな。みんなも呼んで食べるか」

 

「えぇ〜?私アスナ様と二人がいい〜」

 

「・・・わかったわかった。だから涙目にならないでくれ」

 

「あ・・・あぁ・・・!?」

 

ローガスが口をパクパクさせて俺を指差す。

 

「というわけでメシにいってくるよ」

 

「あ、あぁ?うん、どうぞどうぞ」

 

ローガスは声が裏返ってしまうほど動揺していた。

俺はそれを感じながらも、テムを肩車しながら食堂へと向かった。

 

「・・・テムも甘えん坊だな」

 

「いいの〜」

 

「悪いっつってるわけじゃないってば」

 

「・・・ありえないありえない。なんでテムオリンがあんな素直でいい子に?おかしいよおかしいよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ・・・」

 

{はい、勉強勉強}

 

俺は机に向かわされていた。

逃げ出そうとすると新星の強制力が働く。

 

{いそいでいそいで。まだまだたくさん勉強しなくちゃいけないんだからな}

 

「新手のイジメだよな・・・」

 

 

 

 

 

――――その頃、ローガス達はみんなで食事中。

 

「はむはむ・・・そういえばローガスさん」

 

「なんだい?ヒカリ」

 

ヒカリは気になっていた事を質問した。

 

「ローガスさんとアスナはどこで知り合ったんですか?」

 

「あぁ・・・」

 

突然フォークを置いて一息つくローガス。

 

「随分と昔だよ。ある世界でね・・・そういえば、君達は全ての源が一本の永遠神剣・・・って話はもう聞いた?」

 

「はい、聞かせてもらいましたわ」

 

全員がローガスに頷く。

 

 

「まずは、そこから話すよ。最初・・・本当に何もない所・・・世界も生命もない空間・・・。

そこに、一本の永遠神剣があったんだ。その剣は・・・永遠神剣第一位『天地』・・・。

それは、ある二つの世界を作るんだ。混沌世界と秩序世界・・・。

そして、『天地』は二つの剣・・・『運命』と『宿命』に別れてそれぞれの世界に入っていった・・・。

これが、どこの世界でもなんとなく存在する『天地創造』」

 

 

「それって・・・ローガスさんが持ってる?」

 

「いや。名前は同じでも、力はケタ違いだよ。でも、そこで二つの剣を取ったのが後にカオス・ロウを作るリーダーだった」

 

「その人たちが・・・」

 

 

「混沌は自分の世界を守るために戦い、秩序は同等の力があってはならない、と戦った。

能力は互角・・・死闘の末に、お互いは相討ちになり・・・剣は木っ端微塵に砕けた。

その時の衝撃が空間に数えきれない程の世界を作り出し、砕けた破片は、『再生』のような剣となって各地に眠った・・・。

と、これがまぁ『運命』から聞いた話。アスナもそう言ってた」

 

 

「アスナが・・・?」

 

「そう。そこでアスナなんだけど・・・。彼は、その混沌の世界で生まれた人間・・・そして、第一のカオス・エターナルなんだ」

 

「え?それじゃぁ・・・ローガスさんよりも?」

 

ヒカリが驚きながら聞く。

まさか、リーダーよりも早くにエターナルになった人がいるなんて思わなかった・・・。

ヒカリだけじゃなく、トキミでさえも黙って聞いていた。

 

「ああ。断然早いよ。そして、力を色濃く受け継いだ『運命』を持って、エターナルになった僕を導いてくれたのがアスナなんだ」

 

「そんな・・・偉い人だったの!?」

「し、信じられません・・・」

「あんな人が?」

 

ユウト達がさり気なくひどいことを言うが、誰も驚きでつっこめない。

 

「それに・・・あの新星。あの永遠神剣は第三位程度の力しか持っていないわけだけれど・・・」

 

「そうです、それ!なんで第三位の剣があそこまで強いんですか!?」

 

ヒカリは興奮気味に言う。

テムの一撃をくらっても無傷で立っていられる程の力・・・。

 

「あくまで、一本だけでは・・・。下手すると、どんな永遠神剣でも、勝てないかもしれない」

 

「どういうことですか?」

 

「あの剣は、味方の永遠神剣の数だけ力を増せるんだ」

 

「数だけ・・・?」

 

「ユウト、君も感じなかった?力がアスナに流れこんでいくような感覚を」

 

「あ・・・!」

 

「あれが、新星の本当の力。ありえないけど・・・もし、現存する全ての永遠神剣が味方になったとしたら、

新星は『天地』に近い力を持つこともできる。それだけに・・・未知数の力を秘めているんだ。さすがは原初の剣だよ」

 

「原初・・・?」

 

 

「ああ。新星は、『天地』から直接生まれた剣なんだ。

といっても、『運命』と『宿命』に別れるときにこぼれた破片から生まれたから、一本だけではそんなに力が強くないのだけれど」

 

 

「なるほど・・・あなたがアスナさんを推薦したわけはそこにもあったわけですね・・・?」

 

 

「さすがはトキミ。そういうこと。

それに、原初の剣なら時詠の能力も使えないから・・・カオスの希望になれるんじゃないか?

って思ってね。まぁ、それは見事に命中したわけだけど」

 

 

「なるほど・・・だから、『運命』と『宿命』の未来も視えないのですね?」

 

「そういうことさ。って言っても、『運命』はちょっと未来見られちゃうんだけど」

 

はは、と笑ってローガスは食事を再開する。

 

「でも・・・最初の頃、アスナってそんなに強くなかったよな?」

「そうなのか・・・?」

「あぁ、アセリア達は知らないのか・・・」

「あぁ。下っぱのロウにかなりてこずっていたぞ?」

 

フォルクがうんうんと頷いてスープをのみほす。

 

「それは・・・『血』が残っていたんだろうね」

 

「『血』?」

 

またローガスは食事を止める。と、思ったら皿は空だった。

 

「これから話す事は、絶対に秘密にしてくれるかい?」

 

「え・・・?」

 

ローガスの真面目な態度に息を呑む一同。

 

「ここから先は、土足で踏み込んではいけない。だけど・・・これから一緒に戦う君達には知っていてほしいんだ。彼の事を」

「・・・」

 

ユウト達はお互いに顔を見合わせる。

そして、ゆっくり頷いた。

 

「・・・彼は、第一のカオスだって言ったよね?」

「あぁ・・・」

「・・・彼は、その力に溺れてしまったんだ」

「え・・・?」

「それだけじゃない・・・。彼はもともと、混沌の世界で・・・人を殺すことを生きがいとしていた」

「なっ・・・!?」

 

突然のローガスの言葉に、息を呑む。

 

「どういう・・・ことなんだ?」

 

 

「・・・彼は、生まれてすぐに母親を亡くした。

その悲しみで、父は酒に溺れるようになり、たびたび虚しさをぶつけるためにアスナに暴力を振るった。

アスナの目の色が違うのも、片方えぐられて、失ったからなんだ」

 

 

「う・・・そ・・・ひどい・・・」

 

あまりの事実に声が満足にだせないヒカリ。

 

「新星の力で治したらしいけどね・・・。

毎日暴力を振るわれ続けても、近所の人には気付かれないように振る舞っていたみたい。そうすれば、その父もいなくなるから」

 

「え!?近所の人に相談して・・・どこか施設に行ったほうが・・・!」

 

「・・・残念だけど、そうはできないんだ」

 

「なんで!?」

 

ヒカリがローガスに食って掛かる。

 

「―――それが、親子なんだ」

「え・・・?」

「いくらヒドイ親でも、絶対に親子の絆は失われない。それが・・・親子なんだって」

「でも・・・」

 

「時として、親子の絆はすごい力を発揮する。良い意味でも、悪い意味でもだ。

それが、家庭内暴力の発見率の低さに繋がっているんだろうね。・・・それで、ある日・・・」

 

 

 

 

 

 

「ハックシュッ!!」

 

{大丈夫か?}

 

「あぁ・・・」

 

俺は机に向かってカリカリ鉛筆を走らせる。

 

「・・・」

 

俺はその手をじっと見てしまう。

 

{どうした?}

 

「あ、いやいや!」

 

 

 

 

 

 

 

「ある日?」

 

「・・・父親が、とうとう刃物を持ち出した。アスナを押さえ付けて、腕を切ろうとしたらしい」

 

「え・・・どうなったの!?」

 

「今日子、落ち着け」

 

ユウトが今日子を椅子に押し戻す。

 

「当然・・・切られたさ。手首からバッサリ」

 

「う・・・」

 

「でも、その時・・・『新星』が現われた」

 

「え・・・?」

 

「それで、契約して命をとりとめ・・・エターナルになったアスナは、思うままに新星を振るったそうだ」

 

「え?・・・それってもしかして・・・!」

 

「そう・・・目の前にいた、父親を・・・斬ったんだ。その時、自覚したらしい。ここまで父親を憎んでいたんだ・・・って」

 

「そんな・・・それって、取り込まれてた、とかじゃなくてなの?」

 

 

「紛れもなく、アスナの意志らしい。本人がそう言っていたしね・・・。

そこから、アスナは・・・殺すことで、自分の存在を見付けようとしはじめたらしい。

そして・・・混沌の世界は壊滅した。その頃唯一無二の存在だった、エターナルのアスナによって・・・」

 

 

「まさか・・・そんな・・・!?ウソでしょ!?」

 

 

カナリアがバンッ!とテーブルを叩く。

だが、ローガスは黙って首を振る・・・。

エターナル程の力があれば、たしかに世界を滅ぼすこともできなくはないが・・・。

それをアスナがやったとは思えなかった。

 

 

「よく、力がないものが何を言っても無駄だ、とか力がない者の言葉は悲しみしか生まない、とか・・・。

それは違う。力がなければ何もできない?力がないと言葉が無意味?

そんなこと絶対にない。人間は手を取り合うことができる。お互いを助け、強くなれる。

それもしないで諦めて、簡単に『力』に頼って・・・。格好良くもなんともないし、人間として最低で、ダサい。

何かにこじつけて、力のみを欲しがるのが最悪だ・・・。

アスナはそう言ってた。たぶん・・・自分がそうなってしまったから・・・だと思うけど」

 

 

アスナらしい単純な言葉。

ローガスはずっとうつむいたまま喋っている。

 

「だから・・・最初の頃、自分の血と戦うので精一杯だったんじゃないかな?

殺すことを楽しむ人間に戻らないように・・・必死で抑えてたはずだよ?」

 

「じゃぁ・・・」

 

ユウト達はある場面を思い出す。

そう・・・アスナの事を罵倒していた時。

頼りない、だとか死ぬだけだ・・・とか。

好き勝手言って、アスナがどれだけ必死で抑えていたかも知らずに・・・。

そんな自分が恥ずかしくなった。

 

 

 

「ん?お〜い」

「え!?」

「ど、どうしてここに?」

 

俺を見た全員がなぜかやたら驚く。

 

「ここにって・・・」

 

そりゃ、メシを食べるタメに決まってるでしょうが。

 

「うぅ・・・腹減った〜、メシメシ〜」

 

俺は席について食事を貪る。

新星のスパルタ教育のせいで腹がグル減りだ。

 

「アスナ・・・?」

 

「うん?なんだヒカリ?」

 

呼び掛けられて俺は顔をあげる。

 

「あ・・・そうだ。このあと、デートしよ?」

 

「え!?マジ!?」

 

突然のお誘いに心が踊る。

約束していたけど、まさかヒカリから誘われるとは・・・。

 

「おう、すぐ行こう!どこにでも行こう!どうせならもっと親密な関係になるために一晩・・・」

 

ベイィンッ!!

 

俺の頭に背光が炸裂した。

 

「ぐあ・・・っ!」

 

頭がグラグラ揺れて気持ち悪くなる。

 

「何言ってるの!?そうはさせないんだから!このエロスナ!」

 

「カナリア・・・!あ、嫉妬?ならどうせならカナリアも一緒で3・・・」

 

「黙れーッ!!!」

 

ベィィィンッ!!!

 

危険ワードを発しようとした俺に、再び・・・今度はさっきよりも強く俺の頭に背光が炸裂した。

 

「のぉぉぉぉっ・・・!」

 

俺は意識を手放しそうになるも、なんとか堪える。

ダメだ!ここで倒れるわけにはいかない!

ヒカリとデートするんだ!ファイト!

 

「よし!いくぞヒカリッ!!!」

 

俺はヒカリの手を掴んでダッシュ!

これ以上ここにいたら本当に沈黙してしまいそうだ。

 

「ちょ、まっ・・・アスナッ!!!」

 

「逃げろ〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え・・・?」

 

ローガスの言葉に間抜けな言葉を出してしまうユウト。

他の人も口を開けたまま固まっている。

アスナの姿は見えない。

また新星に勉強させられているのだろう。

 

「なんで!?」

 

「ヒカリ・・・」

 

納得がいかなくて、抗議するヒカリ。

その内容は・・・

 

「なぜ・・・アスナをこのチームから外すのですか・・・?」

 

こういうことだった。

アスナを迎えに行ってから、ずっと一緒に行動してきた。

それを、アスナを外すというのだ。

 

 

「アスナは・・・本当は、カオスのリーダーになれる器。

下手すれば・・・僕よりも良いリーダーになれる。そのことは、みんなの方がわかってると思うけど?」

 

 

「・・・だからって!」

 

 

「別に一緒に戦わなくなるわけじゃない。アスナには、別のカオスの部隊を指揮してもらいたいんだ。

今、カオスに足りないのは経験を積んだリーダーに向いている人材なんだよね。

君達はトキミがいるから問題ないけど・・・他のエターナルはほとんどエターナル同士の戦いの経験がないんだ。

それを放って戦ったら負けてしまう。今指揮を取れる人材は・・・ラクセル、アスナ、トキミ、僕しかいない。

といっても、相手のリーダーが出てこないかぎり僕は出れないから、実質三人・・・。

それに対して、現在集まっているエターナルは90人程度・・・。

ベテランはほとんど殺されていたし・・・。それがわかっていたから、新星はアスナに勉強させているんだしね」

 

 

「っ・・・!でも・・・」

 

ヒカリはまだ納得できない、と首を振る。

 

「君達のチームは、アスナを除いて・・・トキミをリーダーとしてほしい。

メンバーは、トキミ、ユウト、アセリア、エスペリア、オルファ、ウルカ、キョウコ・・・それでおねがい」

 

「・・・わかりました」

 

「トキミ!?」

 

「・・・わかってください、ヒカリ」

 

「・・・」

 

そのトキミの目に、何も言えなくなるヒカリ。

そもそも・・・経験の浅いエターナルは、誰かが指示してあげないといけない。

それはすごく大変で、トキミがもっと多数のチームのリーダーにならないのは、それだけの実力がないから。

 

 

それと、時詠の能力が少数精鋭チームの指揮に向いているから、というのもある。

 

 

だけど、アスナにはその実力があり、そういう人材はカオスにたった3人・・・。

ローガスと合流したとはいえ、戦局はまだ圧倒的にカオスが不利。

ならば・・・全員をフルに活用しないと勝てない。

そんなごちゃごちゃで複雑な事情が、ローガスの言葉に繋がっているのを感じたヒカリは黙るしかなかった。

まぁ・・・ヒカリとカナリアとフォルクはまた同じチームだというのもあったからだろうけど。

 

 

「・・・明日、ユウキがいると思われる世界に出発しなくちゃいけない。今日付けで、アスナはこのチームから外す。いいね?」

 

「・・・はい」

 

 

 

「ねぇパパァ・・・アスナお兄ちゃんと会えなくなっちゃうの?」

 

オルファがそんなことを言い出す。

目には不安が色濃く現われていた。

 

「そんなことないさ。アスナは別の仲間のリーダーになるだけなんだから」

 

「でも・・・」

 

オルファも感じているらしい。

アスナに対する不安。

 

それは・・・

誰一人殺されないように、無理してしまうのではないか・・・?

 

これだけ不利な状況だから、当然死傷者はでてくる。

でも、アスナはきっと無犠牲をめざす。

そこで・・・自分を犠牲にしてしまうのではないか?と。

 

それに・・・そこから来る、二度と会えないかもしれない、という不安。

 

「大丈夫。アスナの強さはよく知ってるだろ?」

 

「うん・・・」

 

それでも、オルファの顔は晴れない。

いや・・・この場の雰囲気は晴れない。

 

「・・・大丈夫さ、きっと・・・また会える」

 

ユウトはその言葉を噛み締めたのだった・・・。

 

 

キィンッキキキィィンッ!!!

 

 

「ぐわっ・・・!?」

 

「きゃぁ!?」

 

突然の永遠神剣の警告に、全員が頭を抱える。

あまりに強い反応。

 

「聖賢!」

 

{来たぞ・・・!}

 

「きた・・・って」

 

聖賢の雰囲気で悟る。

ここまで強く反応する永遠神剣はひとつしかない・・・!!

 

「いくぞ!みんな!!」

 

{急げ!アスナが既に交戦しているぞ!!}

 

「そんな!!一人で戦ってるなんてムチャだよ!!」

 

 

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オリジナル設定『天地創造』

 

全ての始まりは一本の永遠神剣だった。永遠神剣『天地』・・・。

世界も、水も空気も光もないただ真っ暗な場所に、その永遠神剣はあった。

そして、ある時・・・『天地』は2つに別れる。

『運命』と『宿命』・・・。

その二本は『混沌世界』と『秩序世界』を生み出した。

そして・・・『運命』を持った人間と『宿命』を持った人間は永遠と続くかと思うほど長い間戦い・・・相討ちに。

その時の衝撃が数々の世界となり、砕け散った破片は神剣となって各世界に別れていった・・・。

 

 

永遠神剣第一位『天地』

全ての始まりの剣。『天地』と『運命』、『宿命』、『新星』はまとめて原初の剣という分類に入る。

ちなみにこの時の『運命』は今ローガスが持っている物とは桁違いの力を持っていた。

どうして2つの世界を作ったのかは不明。

この事実を知っていた人物はエターナルでもほとんどいない。

 

 

永遠神剣第三位改『新星』

『新星』は『天地』から直接生まれた剣だった。そのためにトキミの能力を防ぐことができたらしい。

味方の永遠神剣の数だけ力を増すという異常な能力を持ち、現存する永遠神剣で最も古い神剣。

となると・・・アスナの年齢は数で表すと大変な事になる。