くらし守る県政の実現と同和利権の一掃へ
――県民のあつい期待にこたえて――
党徳島県議団長 山田 豊
1 県民の願い・要望を県政にとどけて
この半年の間に、お年寄りや障害者に急激な負担増が襲いかかりました。
六月からの住民税大増税では、負担増が数倍から十数倍になった人もいます。「計算間違いではないのか」「年金は減っているのに、なぜこんなに住民税が上がるのか」――県都の徳島市では窓口に六百人、電話で八百人を超える市民から苦情や問い合わせが殺到しました。他の市町村も同じ状況でした。住民税増税に連動した国保料(税)や介護保険料の負担増も深刻です。
私たちは、負担軽減策をとるよう市や県に申し入れを行い、議会でも提言を行いました。徳島市議団の申し入れを新聞報道で見た人から「(党市議団が求めた)『市独自の軽減措置』は全くそのとおりです。政府や国会議員はこの実態を知らないのでしょうか」と熱い共感のはがきが県委員会に寄せられました。
障害者をめぐる問題も深刻です。応益負担という大きな問題を抱えた障害者自立支援法の施行に関係者が困惑しているさなか、「小規模作業所に対する県からの運営費補助はゼロ円と決定」という突然の通知が七月に県から市町村に送られ、障害者団体や市町村は不安と大混乱に陥りました。
党県議団は、ただちに関係者とともに県交渉を行い、この通知を撤回させました。そして九月の県議会で知事から「小規模作業所の運営に支障をきたさないよう、必要な措置を早急に検討する」「障害児のいる家庭が安心して子育てができるよう積極的に支援したい」という答弁を引き出すことができました。支援の具体的内容は、「今年度に限り」など不十分さもあり、引き続き県の対応を求めていく必要がありますが、“住民とともに政治を動かす共産党”の姿に共感が広がっています。
庶民大増税、社会保障の改悪、地方切り捨てなど国の悪政の嵐が吹き荒れる中で、県政の本来の役割は、こうした国の悪政から県民のくらしと福祉を守る防波堤になることです。ところが徳島県の飯泉知事は、六月からお年寄りを襲った大増税に対しても、「高齢者はこれまで優遇されてきた。公平に負担を分かち合う観点から見直しが行われた」と、まるで政府の代弁者です。来年度の定率減税の全廃による負担増についても、「経済状況が導入時に比べて改善している」と容認する姿勢です。国に増税の凍結を求めることもしません。また知事は、市町村が実施している子育て支援事業などへの県の補助金に、市町村の「自立」の名のもとに、県よりも財政力指数の高い市町村に対しては“財政が豊かだから”と補助率の割り落としを実施しました。国が、自治体の「自立」の名のもとに、みずからの責任を放棄して地方への財政支出の大幅削減をすすめているのと全く同じです。まさに国の手足となり、県民のくらし・福祉破壊の推進者になっています。
私は、これらの問題を国政、県政、市政“串刺し”にして、来年のいっせい地方選挙、つづく参院選挙で審判を下すたたかいにしていきたいと考えています。
私たちは、県民のくらし応援、福祉の増進を図る自治体本来の姿を提起し、それを実現するための財源を確保する観点から、二つの改革を示しています。
(1)不要不急の公共事業は中止
その一つは、不要不急の公共事業を中止することです。知事は、県みずからが九〇年代に見通しを誤って進めてきた開発型公共事業のツケが県の財政を大きく圧迫している事実を見ようとしません。そのため、いまも流域下水道事業や農地防災事業などムダな大型公共事業が全く見直しされず継続されています。
九八年度には二千億円を超えていた公共事業費が、いまは一千億円と半分です。かつてのように公共事業に予算がつけられないもとで、知事は「抜本的見直し」とか「重点化」と言いますが、高校の校舎など施設が老朽化しているにもかかわらず改築をしない(耐震改修を全体的に急ぐ必要があるといえば聞こえはいいのですが)、県営住宅は新たに建設しない、その一方で、今後七五〇億円かけて鉄道高架事業を行うなど、相変わらず不要不急の大型公共事業への重点化です。
私たちは、不要不急の公共事業は中止し、防災や住宅、高校改築など、いのちとくらしを守る公共事業への転換を求めています。
(2)同和の特別扱いをやめ、同和利権を一掃
もう一つは、同和対策を終了することです。特別法がなくなっているのに、同和対策事業が存在するなどおかしな話ですが、県は「経過措置」として解放同盟など運動団体にいまも補助金を出しています。これは、地対財特法失効前の二〇〇一年十二月の、運動団体のメンバーも加わった徳島県同和問題懇話会の答申を受け、二〇〇二年三月に策定した「法期限後の同和問題解決に向けての基本方針」にもとづく措置です。「個人給付事業については、二年ないし三年の期限を限定した経過措置後に終了、団体補助金は、継続的な見直しを通じ漸減を図って五年後に全体的な見直しを行う」とされました。本来こうした経過措置は、特別法が失効するまでに終了しなければならなかったものです。しかも、いまでは個人給付事業もすべてなくなっているのですから、運動団体に補助金を出す何の道理もありません。県民の中から、税金のムダ遣いと批判の声があがるのも当然です。同和団体補助金は、今年がちょうど全体的な見直しを行う年です。本年度をもって同和対策をきっぱり終結させるかどうか、正念場を迎えています。
こうした同和の特別扱いが大きな同和利権を生み出しています。その典型がBSE(狂牛病)で焦点になった肉骨粉を製造している徳島化製事業協業組合(代表理事・岸小三郎氏)への莫大な税金投入です。
徳島化製は、全国で二十社をこえる「岸化学グループ」の中核会社です。BSE発生当時、徳島化製だけで全国シェアの一割、グループ全体ではシェアが二割に上ると見られていました。千葉県で発生したBSE第一号の牛を肉骨粉に処理したのもグループ傘下の関東ケミカル(茨城県)でした。
日本畜産副産物協会がBSE発生前の二〇〇〇年に実施した調査によれば、全国のレンダリング工場(化製場)は一五九ありました。全国の処理能力は一日八時間あたり三六九〇トンで、一工場あたりの処理能力は単純平均して約二三トン。一〇〇トン以上の処理能力をもつ大規模企業数は約二〇%弱とされていました。徳島化製の処理能力は一日八時間あたり二四〇トン。いかに大規模な施設か容易に想像できます。県内だけではこれだけの原料は集まりませんから県外からも搬入しています。その割合は県外七、県内三、ほとんどが県外です。
徳島化製は、この施設を建設するのに、国、徳島県・市から総額六十億円の無利子融資を引き出しました。しかも、その返済を県がひそかに肩代わりしていた疑惑が持ち上がっています。県が、返済額に相当する三億円の補助金を毎年、徳島化製に出していたことが、私の調査で明らかになったのです。この補助金は、議会に全く説明もなく、他の補助金の中にもぐりこませ予算書には出てこない、まさにヤミ補助金でした。
徳島化製が利用した資金の中心は同和高度化資金です。全国でもほとんどが返済されておらず、お隣の高知県でもヤミ融資事件に発展するなど、大きな問題になっているものです。総事業費のうち八割(国五四%、県二六%)を無利子で貸付け、二割は自己資金とされていました。
徳島県内の同和高度化資金の貸付け実績は、八事業で六十億円。このうち徳島化製だけが二回採択され、四十七億円が貸付けられています。貸付け全体の約八割が徳島化製という突出ぶりです。
徳島化製は、同和高度化資金を受け施設整備をするため、一九七七年に事業協業組合として設立されました。協業組合といっても名ばかりで実態は親族四名です。設備投資額は十億円。一回目の高度化資金は、八億円が一九七八年度に貸付けられました。ところが資金が足りず返済ができないということになり、不足分を県と徳島市が協調で無利子融資をして、事実上返済を肩代わりしました。その額三億六千万円。返済すべき八億円の四五%にあたります。これによって高度化資金は完済されたことになっています。
二回目の高度化資金の貸付けは、一回目の償還が終わった(正確には県と徳島市が肩代わりして完済したことにした)二年後の一九九三年度から九五年度にかけて行われました。今度は設備投資額四十九億円。その八割の三十九億円余が高度化資金での貸付です。さらに残りの二割も、本来は自己資金ですが、県と徳島市が協調して九億七千万円余を無利子融資しました。このとき、当時の圓藤寿穂知事と小池正勝徳島市長の覚書も交わされました。この県・市協調融資の窓口を徳島市に押し付けたのは解放同盟だと徳島市議会で保守系議員が明言しています。しかも、この融資にあたっては、当時の圓藤寿穂知事と小池正勝徳島市長の覚書まで交わされています。
そして、この時期に、県が徳島化製に対して毎年三億円の補助金を出す仕組みを秘密裏につくっていたのです。九四年度の、しかも年度末が近づいた二月に、県の畜産課、商工政策課、生活衛生課の三つの課が同時に新たな補助金を創設しました。目的は、畜産振興のためとか、安全な食肉の確保のためとか理由づけしていますが、「県内で排出される副産物の適正処理に要する経費の一部に対し化製業者に補助金を交付する」と、徳島化製に補助金が入る仕組みをつくったのです。この条件を満たすのは徳島化製だけです。補助限度額は、畜産課が一億五千万円、商工政策課が七千万円、生活衛生課が八千万円。三つの課合わせて三億円です。これらの補助金が徳島化製に、九四年度は二千万円、九五年度以降は毎年三億円が出されてきました(BSE発生後は国の補助金が出るようになり補助金の趣旨が一部重なることから若干減らしています)。これまでに出された補助金の額は約三十一億円にものぼります。
これらの補助金は、期限がないので毎年三億円を二〇一五年度まで出すと融資総額六十億円の返済が全てできてしまう仕組みでした。国・県・市が破格の無利子融資をして、その返済は県が肩代わりする構図です。一民間企業に対して、こんな公的資金の投入などあまりにも異常です。
また、BSE発生後、牛由来の肉骨粉が流通停止になったことから、肉骨粉の製造、処分に国の補助が出る仕組みがつくられました。二〇〇一年度以降、五年間で国が徳島化製に出した補助金は実に七〇億円にのぼります。
ここには同和行政のゆがみが典型的に現れています。これだけ破格の税金投入が行われていても同和関連の企業だからということで、県は、企業の内実を一切明らかにしません。まさに、ヤミからヤミに県民あるいは国民の税金が湯水のように使われているのです。
徳島化製の代表理事・岸小三郎氏は、二〇〇二年、二〇〇三年に徳島県の長者番付一位、翌二〇〇四年には四国の長者番付一位になった人物です。そんなところに毎年三億円もの補助金を出すのはおかしい、と県民から批判の声が巻き起こっています。
いま私は、徳島市民を対象にアンケート活動に取り組んでいます。戻ってくる回答を見ると、議員に期待することで「同和の特別扱いをやめさせること」を選ぶ市民が多いのが特徴です。また徳島化製への三億円の補助金は「ただちにやめるべき」、解放同盟などに補助金を出している同和対策も「終了すべき」に二重丸や三重丸をつけて返送してくる方が多いのです。共産党への熱い期待がひしひしと伝わってきます。私は、乱脈不公正な同和行政を終結させ、同和の利権構造をきっぱり断ち切るために全力をつくす決意を新たにしているところです。
3 県議会の改革すすめる三つの提起
私たちは、県議会の改革を進めるため三つのことを提起しています。
一つは、委員会視察の改善です。今年八月、県議会の委員会が県外視察に行った際、宿泊先で一部県議がハレンチ行為をしたとインターネットの会員制サイトなどに掲載されました。八つの常任・特別委員会が県外視察に行きましたが、温泉旅館に宿泊し、このうち六つの委員会視察の宿泊先で夕食会にコンパニオンが呼ばれました。党県議団は、掲載内容について事実関係の調査と委員会視察の改善を議長に申し入れました。これを翌日、各紙がいっせいに「視察先で県議セクハラ?宴席でコンパニオンに抱きつく 共産県議団調査申し入れ」「視察先宿泊旅館で県議、女性触る?ネットに写真 共産、議長に調査要求」「県議会の県外視察 温泉地に一泊常態化 宴会にコンパニオン 共産党が改善申し入れ」と報じました。県民からは、問題になった県議に対する批判はもちろん、「県議会はまだそんな視察をやっているのか」「市民感覚とかけはなれている」等々、厳しい意見が出されました。
私は、この問題を議会の各派会長幹事長会でも取り上げました。自民党などは、「懇親会は公務ではなく、旅費規程を超える懇親会費やコンパニオンの費用は私費負担だから問題ない」「議員同士や職員との意見交換の場として有意義」などとして、県外視察の改善を先送りしました。これで県政のチェック役が果たせるはずがありません。
二つ目は、海外視察の中止です。昨年度は三人の議員が南米や北米に行きました。費用は二八九万円。二〇〇〇年度以降でみると多い年には九人が欧州、南米、東南アジアに行き、費用は八七七万円です。
昨年十一月、本県の二名の県議も参加した「南米地方行政視察団」の行動が、訪問先のブラジル・サンパウロ市で問題になり、地元邦字紙「サンパウロ新聞」でも「公費のムダ遣いの見本」と厳しく批判されました。高額の公費を使っての海外視察については、内容や必要性、県の厳しい財政事情などから、県民の中で疑問や批判の声があがっています。
三つ目は、政務調査費の収支報告書に領収書添付を義務づけることです。
徳島県議会では、「議会のあり方検討委員会」がもたれ、議会改革の議論がなされてきました。しかし、私たちが提起した「政務調査費の収支報告時における領収書添付」や「公費による海外視察の見直し」については、「意見集約には至らず、現行通りとする」という結果にとどまりました。これらは県民が最も注目していたものですが、改選後の県議会に先送りされています。みずからのムダ遣いをチェックできない党派や議員に県政のチェックなどできるはずがありません。
私は、県民のくらしを守る県政を実現するため、不要不急の大型公共事業や同和の特別扱いなどのムダ遣いをやめさせること、特に県民から熱い期待が寄せられている同和利権を一掃することに引き続き全力をつくす決意です。
(やまだ・ゆたか)