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年金記録:6年前から大量の食い違い 社保庁調査せず

 企業が厚生年金基金の運用部分を国に返す「代行返上」が始まった02年、企業の管理する年金記録と国の記録に大量の食い違いが見つかった状況を複数の企業担当者が毎日新聞の取材に証言した。社員の氏名の読み方や生年月日を中心に、多い所では社員の約17%に食い違いがあった。現在のずさんな年金記録問題につながる事態が6年前に発覚していたにもかかわらず、社会保険庁は当時、調査などに踏み出していないことから、改めて批判が強まりそうだ。

 関西の織物会社では約2万件の加入者記録のうち16~17%に食い違いがあった。氏名の読みや年金番号の不一致のほか、社保庁側の誕生日欄には1~9日生まれの人は「1日」、10~19日は「10日」などと記載され、1963~66年度に入社や退社した人に集中していた。会社側に残っていた年金台帳に基づき社保庁は訂正に応じたが、会社の担当者は「社保庁の間違いが明らかなものがほとんどだった」と話した。

 ある大手自動車メーカーは約10万2000件中、約1万400件に食い違いがあった。同社は、国の記録に合わせると年金が減る場合、社員にデメリットが生じないよう差額を補てんしたという。別の繊維会社は、社保事務所から「証拠がないなら国の記録に合わせて」と言われた。「両者が合わないと代行返上できず、合わせるしかなかった」と話す。【野倉恵】

 厚生労働省企業年金国民年金基金課の話 社保庁の記録に大量のミスがあるとは当時考えなかった。個別の照会に「国の記録を優先すべきだ」と答えたことはあるかもしれない。

 【ことば】厚生年金基金と代行返上 厚生年金基金は、企業が国に代わって厚生年金保険料の一部を運用して支払う部分と、各企業ごとに独自に運用する部分でできていた。運用が国の予定する利回りを上回れば、基金は社員への上乗せ給付などに利用できたが、90年代以後の低金利で逆に補てんが必要になった。このため02年度から国は代行部分の返上を認め、今年8月までに806の基金が返上。97年に1874だった基金数は今年10月現在で620に減っている。

毎日新聞 2008年11月2日 2時30分(最終更新 11月2日 12時27分)

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