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【視点】ビラ配りに求める節度
このニュースのトピックス:刑事裁判
立川反戦ビラ事件の最高裁判決は、官舎管理者の明確な立ち入り禁止の意思を無視し続けた被告3人の行為を重視し、「有罪」の結論を導き出した。ただ、この判決はビラ配りという表現方法そのものを否定しているわけではなく、節度を欠いた被告の行為を判断したにとどまることに注意が必要だ。
3人は、官舎管理者が設置した立ち入りやビラ投函(とうかん)を禁止する看板の存在を知っていた上に、住民から注意を受けても、敷地内に入って各戸のドアポストにビラを投函していた。
ビラ投函以外に自らの意見の表明方法がないわけではなく、明らかに住民や管理者への配慮を欠いた行動だった。「権利侵害の程度は軽いとはいえない」と判断されてもやむを得ないだろう。
3人が投函していたのは、自衛隊のイラク派遣に反対する政治的なビラだった。このため、3人は「権力の言論弾圧」「表現の自由の侵害」と主張したが、判決はビラの内容については判断していない。裁かれたのは、あくまで管理者の意思を無視した被告の立ち入り行為にすぎない。
「表現の自由」が欠くことのできない重要な権利であることは言うまでもない。ただ、「憲法は表現の自由を絶対無制限に保障していない」との判例は確立している。
ビラは手軽な意見表明の手段だ。この事件のように「管理者の意思」と「表現の自由」が衝突する場面では、公権力の介入を避けるためにも、配る側の配慮が求められる。(半田泰)