◎首相の消費税発言 景気回復の「足かせ」になる
せっかくの努力が余計な一言で台無しになってしまった。追加経済対策を自ら発表した
麻生太郎首相の消費税引き上げ発言である。麻生首相はその後の会見で、「景気が回復してある程度パイが大きくなる前提でないと増税は極めて難しい」と述べ、あくまで景気回復を最優先する考えを強調したが、本当にそう思っているのなら、景気回復の大きな足かせになる消費税をわざわざ持ち出す必要はなかった。
景気回復で、税収が増えれば、消費税を上げずに済む可能性がある。国民にとって、そ
れが最善の道であり、増税という安易な手法に言及したのは、大きな判断ミスだった。「大増税が待っていると宣言すれば、暮らしの不安はなくならない」と述べた共産党の志位和夫委員長の指摘はもっともといえる。
世界同時不況の足音が高まるなかで練り上げられた追加経済対策は、急ごしらえにして
は多彩で、即効性のあるメニューがそろい、麻生首相のリーダーとしての非凡な資質をうかがわせた。それだけに、なおさら場違いな消費税発言が悔やまれる。
追加経済対策のなかで、公明党案をたたき台にした定額給付金の交付などは、国民の懐
を直接刺激し、消費拡大を図る狙いがある。米国では国民に小切手を配る「戻し減税」が実施されたが、これによく似たアイデアだ。現在、オーストラリアで検討されている景気対策も、クリスマス商戦に狙いを定めた戻し減税が主軸である。
ところが、米国やオーストラリアで、景気対策の柱として認知されている国民への直接
給付は、日本ではおそろしく評判が悪い。野党はおろかメディアに至るまで異口同音に「ばらまき」と批判するのは、まことに不思議な現象だ。
凍り付いた水道管の水を流すには、コップ一杯のお湯があればよいのである。給付金が
呼び水となって、国民一人ひとりの懐が温まり、お金が回り出せば、それで十分効果がある。「一回だけだから」とか「貯蓄に回されたら無駄になる」などと言うのは、木を見て森を見ぬ、批判のための批判と言わざるをえない。
◎BCリーグ 実力プラス地元密着を
六チームに拡大して熱戦を展開した二年目のBCリーグは、石川ミリオンスターズが連
覇こそ逃したものの、優勝した富山サンダーバーズと最後まで地区一位を争い、北陸のレベルの高さを示した。試合の盛り上がりと合わせて、各チームの地域貢献活動も広がりを見せ、わが街のチームとして後押しする動きも軌道に乗ってきた。来季も、実力アップと地元密着を合い言葉に、地域が総掛かりで「県民球団」を盛り立てたい。
今季は各チームの地域貢献活動として、石川ミリオンスターズが春にグッドマナー宣言
をしてフェアプレーの実践に努め、今年からシーズンオフの秋にも少年野球教室を開催し、ルール順守の精神で健全育成に取り組む。また富山サンダーバーズは、球場へのマイカップ持参を求め、足元から環境保護を呼びかけたほか、AED(自動体外式除細動器)普及の一環で選手自ら使用法を学ぶことにも力を入れた。ファンとのきずなを深める意味でも、一層の「スポーツ市民」の浸透を図ってほしい。
今季は、こうしたチームの取り組みに呼応して、心強い地元側の後押しもあった。個人
ファンのみならず、たとえばミリオンスターズの応援をアクションプランに盛り込んだ金沢経済同友会「企業市民宣言の会」の提供試合が、九月に初開催され、スタンドに多くの「企業市民」が詰めかけた。こうした冠試合を今後も増やすことが入場者増に結びつき、選手のモチベーションのアップにつながろう。
同リーグの今季の一試合平均入場者数は千三百十八人となり、昨季の千七百九十人を下
回ったのはいささか寂しいが、先輩格の四国リーグも二年目が落ち込んでおり、これを試練と受け止めて、地域貢献によるファン層拡大に一段と力を入れたい。
今年、ミリオンスターズの後援会支部ができた小松では、新装なった末広野球場に近い
中心商店街と連携してにぎわい創出に取り組んだ。こうした熱意ある支部を各地に作り、金沢周辺だけでなく地方のファンを開拓することが入場者増を図る意味で大切だろう。