いまでこそ土産物か登山客や農作業の雨具に使われるしかない「菅笠」だが、高岡市福岡地区で全国シェアの9割が作られている。地域の伝統工芸を守っていこうと先日「越中福岡の菅笠製作技術保存会」が発足した 福岡の菅笠は加賀藩の財政を支えたことから「加賀笠」の名で全国に出荷されたという。金沢の「笠市町」は藩政期からの町名で、倶利伽羅峠をこえて運ばれた福岡の菅笠の集積地だった名残である 金沢の中心にある「高岡町」も、高岡城が廃城となったのち、越中から移住した人々が住んだことでその名があることはよく知られる。金沢にはこうした富山とのゆかりを感じさせる町名や寺院名が少なくない 金沢の中心地に旧町名「南町(みなみちょう)」が復活した。現在は城址の西側にあるオフィス街だが、元々は、城の南側にあった。城の増築か何かで町ごと移転してこの町名が後世に残ったと言われる たったひとつの町名から城の変遷や県境を越えた二つの町の歴史まで分かることがある。地名や町名には想像以上の深い歴史と生々しい人間ドラマが潜んでいる。簡単に捨て去るものではない。
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