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【コラム】米国、あなたこそしっかりやりなさい(下)

経済危機の震源地・米国、不吉で醜い大統領選挙

 マケイン陣営はオバマ候補を何の根拠もなしにテロリストと関連づけ、オバマ陣営は共和党のペイリン副大統領候補の服の値段にケチをつけている。税に関する論争でも、マケイン候補はオバマ候補を「社会主義者」と非難し、オバマ候補は貧富を分けるマケイン候補に対して「金持ち擁護」とのレッテルを貼っている。誹謗(ひぼう)中傷合戦や自作劇、敵味方の色分け、裏切り、人身攻撃、極端な二分法は、韓国での選挙でもみられないほど激しいものだ。激戦州の有権者らの場合、ひどいときは1日に10回以上もウソに満ちた宣伝の電話がかかってくるという。共和党が自らの勢力が強い地域を「真の米国」「親米地域」と呼ぶと、民主党支持者らは「それで結構。われわれはニセの米国であり反米だ。だからどうした」と反撃する。

 オバマ候補は9月の1カ月間で1億5000万ドル(約147億円)もの募金を集めた。前例がないほど高額だ。これは単に自分たちへの支持というより、相手に対する憎しみを示すものともいえる。オバマ候補はこの資金で10月29日、何と30分間にわたる選挙広告をテレビで行うという。29日は79年前に大恐慌が起こった「暗黒の火曜日」、まさにその日だ。あえてこの日を選んだ理由は、共和党の経済政策の失敗を攻撃するためだ。現在の状況をマクロ経済について何の理解もなかった大恐慌の時代で比喩(ひゆ)しようとするのは、どう考えても無理があり、単なる扇動に過ぎない。

 共和党は「白人は世論調査ではオバマを支持するといいながら、投票場ではマケインを選ぶだろう」とひそひそ話をしている。8年間も与党として君臨しながら、結局頼れるのは人種問題しかないということだ。もし人種問題が最近の世論調査を覆してオバマ候補を敗北させれば、その影響はどうなるか想像もできない。共和党は「問題など起こるものか」と言うが、米国社会は経済危機以外にも以前からある人種、理念、貧富格差などの問題をさらに大きくして抱え込んでしまうだろう。一方のオバマ候補が当選したとしても、これまで有権者に甘い言葉ばかりかけてきた彼が負うべき責任は非常に大きくなる。

 100年に1度あるかという経済危機、さらに200年の歴史で初めて経験する政治変革。これらが重なるまさに激しい時代の中に、この国は今さらされている。それでも世界中の資金は米国の傷口を埋めるために蛾のように群がっている。つまり、誰が何と言っても米国の国債が最も安全ということだ。危機の震源地である国が世界の資金の避難先となっているということだが、このとんでもない矛盾が国際政治と経済の現実だ。実際は中身が空っぽだったウォールストリートが外国を非難しアドバイスしようとするのも、まさにこのような現実の一部分だ。われわれが気分を害したとしても、この現実は何ら変わることはない。それでも「米国よ、あなたこそしっかりしなさい」と一言でも言い返したい衝動はどうにも抑えられない。

楊相勲(ヤン・サンフン)ワシントン支局長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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