「パパ〜!」
小さい女の子が俺を追い掛けてくる。
オルファではないぞ。
「ははっ、こっちだぞ〜アミィ」
俺は笑いながら、おいかけてくるこどもを見る。
「待ってよ〜!」
「でやっ!」
「うぉ!?」
いきなり目の前に黒い影が。
俺はそのまま顔面に飛び付かれて、バランスを崩して倒れてしまった。
「やった!捕まえた!」
「いてて・・・コラ!ツバサ!危ないだろ?」
飛びこんで来たこどもに怒る。
「えぇ?だってこうでもしないとお父さん、捕まってくれないでしょぉ?」
ツバサが頬を膨らませて怒る。
まったく・・・むちゃするなぁ。
「わかったわかった。父さんの負けだ。今度遊園地連れてってやる」
「やったー!!」
ツバサははしゃぎだす。
その笑顔だけで力がもらえた。
最近仕事で忙しかったからな・・・。
「お父さん、抱っこ〜」
「はは・・・お、大きくなってきたなぁ」
俺はアミィを持ち上げると、アミィは満面の笑顔になった。
高い高いはそんなにおもしろいのだろうか?
俺はそのまま肩に乗せた。
「わ〜い!たか〜い!」
「あんまり暴れるなよ?落ちるぞ?」
『ケイタ〜?』
遠くで俺を呼ぶ声がした。
「お、昼飯の時間だな。ツバサ、行くぞ?」
「は〜い!」
俺は左手でツバサの手を持って、右手でアミィを固定して歩きだした。
そこには、鎧に身を包まなくなったメシフィアがいた。
「ママ〜!」
アミィが俺の頭からメシフィアに飛び付いた。
オイ・・・運動能力高すぎるぞ。
「お父さんと遊んでたの?」
「うん!」
「お母さん!今度お父さんが遊園地連れてってくれるんだよ!!」
「そうなのツバサ?良かったわねぇ」
なんだこれ?
と思わないでほしい。
メシフィアはもうすっかり二児の母親だ。
たまに、蒼天がさびついてしまうんじゃないか、と思う時もあるが。
ちなみにカノンは異次元に放りこんである。
・・・危険だからだ。
前、ツバサが悪戯で森を燃やしちゃった事があってからだ。
ツバサ、なんでおまえがカノンを使えるんだ?
と言ったが、こたえは当然、わからない、だった。
「そういえばケイタ、もうすぐ来るぞ?」
「あぁ、悠人・・・じゃなくて、聖賢者ユウトと永遠のアセリアか」
「その言い方すると、二人とも怒るよ?超天使ケイタ君?」
「はは、そういうな蒼天の星メシフィアさん」
「うふふ・・・」
「あはは・・・!」
俺達はあまりその呼び方は好きではない。
だから、俺達の中ではそう呼ばないことが暗黙のルールだった。
喧嘩した時なんかはその呼び方で、『不機嫌です』というのをアピールする。
「ねぇママ。ユウト、ってだぁれ?」
今にも何かが飛び出しそうな雰囲気は、娘の一言により粉砕した。
「ユウトっていうのは、お母さんとお父さんの友達、かな」
「友達?」
「お父さんとユウトって人、どっちが強い?」
「そうだなぁ・・・ツバサはどっちだと思う?」
「お父さん!」
うれしいことを言ってくれる。
実際そうだが。
「そう、お父さんの方が、ユウトなんかより百倍強いぞ?」
『へぇ・・・ソイツぁ心外だなぁ』
「・・・」
聞き慣れた声だ。だが、少し殺気を感じる。
『ユート、斬っていいか?もちろん、ケイタを』
首筋に冷たいものを感じる。
殺気が数倍に膨らんでいた・・・。
俺の体から冷や汗が流れだした。
まさか、もう来ているとは・・・。
『まぁ待てアセリア。本当に百倍強いか、試してみようじゃないか。そうだなぁ、カノンなしっていうハンデが妥当だとは思わないか?聖賢』
{そうだな。カノン様を扱えるなら、そのくらいのハンデが必要だろう}
バカな!生身の俺と聖賢アリの悠人で戦えというのか!?死ぬに決まっているだろうが!!
「久しぶり、アセリア、悠人」
メシフィアが二人にあいさつした。
一時的に殺気がなくなってくれた。
「やぁメシフィア」
「ん・・・久しぶり」
「何十年ぶりだっけ?」
「覚えてないや。はは。なぁ啓太」
「ひっ・・・そ、そうですね。あ、ツバサ。ホラ、昼飯だぞ?ここ座れ」
俺は自分の隣にツバサを座らせる。
「え・・・?」
「お、オイ啓太・・・まさか・・・その子供って・・・」
なぜか驚く二人。どこに驚いてるんだろう?
「あぁ、ホラ、ツバサ」
俺はツバサの背中を押した。
するとツバサは少しむくれた。
「お父さん、こっちこいって言ったりメチャクチャだよ。えっと・・・初めまして!ユウトおじさん!アセリアおばさん!ツバサ・オーカワっていいます!」
「・・・おじさん」
悠人はさり気なくしょぼくれた。
アセリアは気にしないで、ツバサの頭を撫でている。
「アミィも」
「うん、パパ!えっと・・・初めましてユウトおじさん、アセリアお姉さん。アミィ・オーカワっていいます!」
「・・・なんで俺だけおじさん?」
悠人はさらに沈み込む。
そのまま地面にめりこんで行ってしまいそうだ。
「ん・・・二人とも、ケイタの子なのか?」
「そうだよ。ツバサが兄で、アミィが妹」
「エターナル同士でこうなることは、ないと思っていた」
「そうなの?」
初耳だ。
倉橋も叶さんも、肝心な事は何も言わないんだよなぁ・・・。
「なぁユート」
「ん?なに?」
アセリアの呼び声で地面からはい上がってくる悠人。
「私も・・・」
「ん?」
「私も・・・子供が欲しくなった」
「ぶはッ!!」
悠人はつい吹き出してしまった。
不意打ちでその言葉は結構厳しいぞアセリアよ・・・。
経験者は語る・・・。
「ダメか?」
「ま、まぁ・・・考えておくよ」
「ん・・・」
「さあ、みんなでランチといこうか」
俺は椅子に座り、両脇にツバサとアミィを座らせた。
「何言ってるんだ?啓太」
「え?」
「まだ・・・勝負が始まってない」
アセリアの一言で思い出す・・・。
「あれって、本気だったの!?」
「ん・・・」
「そりゃ、百倍も強いんだったら、すぐ終わるよな?」
悠人は聖賢を構えて、俺をクイックイッと指で呼ぶ。
「えー!?お父さん戦うの!?見たい見たい!!」
「パパ!がんばって〜!!」
無邪気って・・・罪(泣)。
そして、俺はなんとか殺される前に、悠人を転ばせて聖賢を取り上げて勝負を終わらせた。
(死ぬかと思った・・・本当に斬り掛かってくるなんて・・・!)
まぁ手加減してくれたようだが。
そうでもなければ素手で悠人を気絶させることなどできない。
「すごい・・・聖賢を使ったユートに勝った」
アセリアは目を見開いて驚いていた。
人それを、火事場の馬鹿力という。
「さすがケイタね!私の夫だけあるわ」
(その夫を失う所だったんだから、助けてくださいよ・・・)
「お父さんカッコイイ!!」
「パパ〜!!」
二人の子供は疲れ果てた俺に次々抱きついてきた。
俺はそのまま倒れてしまう・・・。
『啓太さん!悠人さん!』
あまり聞きたくない声。
これは、永遠神剣を通じてきた声だ。
倉橋・・・
「なに?」
『またあの世界でロウエターナルが活動しはじめました。あとは、言わなくてもいいですよね?』
「サボんな。オレ達はレスキュー隊か?」
『じゃ、そういうわけで、あと少しでそこの門が開きますから』
俺のクレームを無視して、プツンと切れた。
「・・・うがーっ!!」
悠人は地団駄している。
せっかくの休暇をあっという間につぶされた。
あの年増巫女のせいで。
ゴツッ!
「うっ・・・!?」
いきなり頭を叩かれた。
くっ・・・怪人め。
どこからでも年齢ネタに対するツッコミはオッケーということかよ。
「仕方ない・・・行くか」
俺は立ち上がる。
「アミィ、ツバサ、ちゃんと家に帰ってろよ?」
「うん!パパもお仕事がんばってね!」
「お話してね!お父さん!」
「オウ。じゃぁな!」
二人の子供は家へ走っていく。
ランチが置き去りにされているが、仕方ない。
俺はカノンを呼び出し、メシフィアは蒼天を呼び出した。
「久しぶりだな、カノン」
{おぉ、悠人とそれにベッタリの女か。何十年ぶりだ?}
「折っていいか?ケイタ」
いきなり喧嘩を売ったカノンに、アセリアが剣に手をかけた。
「ダメ。これから仕事なんだから」
{それにしても、メシフィア。あなた大丈夫?ずいぶん私の事放っておいてくれたけど}
どうやらオレ達夫婦は、随分とパートナから嫌われてしまったようだ。
何十年も放っておけば、そうもなるか・・・。
「大丈夫。ケイタがいる」
{・・・はいはい。何十年たっても青春真っ盛りですね}
蒼天は嫌気がさして拗ねてしまった。
{若いとは・・・いいものだ}
「聖賢、老け込むな」
ブワァァッ!!
白い光が現われた。
「あの世界か・・・またか」
俺はうんざりしたように首を垂れた。
「前の仕事もそこだったな」
「つまり・・・何かねらいがあるんだろ?」
悠人が的を射た考えを言った。
そう、何度もそこに活動しに行くということは、その世界をロウエターナルが狙っているということだ。
「ま、それがオレ達の仕事だしな」
「・・・ケイタって、最初の頃と随分熱気が違う」
今の俺はカオスエターナルのリーダー、『運命』のローガスさんよりも強い力を持っている。
といっても、出会った事もないので本当にそうかはわからない。
そして、これが俺のプレッシャーの原因・・・。
今確認されている永遠神剣の中で、最も強い力を秘めているとされているカノン・・・。
その全ての力を俺は引き出せていないのだ。
それでも、リーダーよりも強いというのだから、恐ろしい。
そして・・・最もイヤなのが、そのことに何かとこじつけて仕事を押しつけてくる倉橋、叶さん・・・。
{はぁ・・・}
カノンがため息をつく。
カノンは自分の力が嫌いらしい。
強ければ格好良いわけでもないし、自分を見失いやすくなる。
更には、アペリウスのように狙ってきて無意味な争いも起きる。
強いのが偉いんじゃない。ちゃんと、自分が何をすべきかを見つけて、がんばれる方が偉いのだ。
だから、自分なんかよりも、第一位〜第十位の剣の方がよっぽど偉い、と。
たぶん・・・エターナルになって、永遠の時をどう過ごすか目標を見失ってしまったのだろう。
前に言っていた・・・『人間は剣と違って一人きりじゃない』と。
だけど、カノンは違う。俺がいる・・・そう思いたかった。
だから・・・
わからなくもないが・・・それでも、俺はカノンがカノンであってよかったと思う。
照れくさいが・・・カノンがいなければ、俺はここにいなかったし、メシフィアとこうしていることもなかった。
だから・・・だったら、俺が一緒におまえのやるべきことを探してやる、と答えた。
一人で見つけられないなら、みんなで見つければいい。
自分でしかわからない・・・それは間違いじゃない。
でも、それは手を借りない理由にはならない。
そう答えたら・・・俺はおまえと出会えて良かった、などとクサイ台詞を吐かれてしまった。
{ふっ・・・}
俺の回想を感じ取ったのか、カノンは軽く笑った。
俺は回想を止めて答える。
「倉橋と叶さんのせいで、ちょっと興醒めしただけだ」
なんだ?あのエターナルらしからぬ不真面目さは。
あれのせいで、俺のやる気は半分以上失われた。
「あんまり無駄話してると、門が閉じるぜ?」
「はいはい・・・んじゃ、行くとしましょうか」
オレ達はその光に身を投げた。
また・・・オレ達の戦いが始まる。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………
ツバサ・オーカワ・・・啓太とメシフィアの息子。生まれながらのエターナルで、成長している。
カノンを扱えたことに関しては詳細不明だが、永遠神剣とは既に契約している。
戦闘の素質だけなら啓太をも簡単に追いぬくくらい。
アミィ・オーカワ・・・啓太とメシフィアの娘。兄と同じくエターナル。
時深程ではないが、時を見る力を持つ。永遠神剣の力を引き出すセンスは他の追随を許さない。
もう仕事ができるくらいの人材だが、両親に反対されている。
『超天使ケイタ』・・・啓太がエターナルとなって、カノンと正式に契約したためこの名前を受け継いだ。というより初めて受けた。
最初は『戒天使』だったが、最初の頃の熱気で修行し、『堕天使』→『聖天使』→『超天使』となる。
今ではカオスエターナルを代表する強さを持つが、そのほとんどがカノンの圧倒的力によるものなので
プレッシャーを感じている。永遠神剣最上位『天使』の持ち主。
永遠神剣最上位『天使』・・・数字の位を大幅に越えた力を持つタメに『最上位』とされた。
その力は現在確認されている永遠神剣で最強の力を持つ。アペリウスの剣を取りこんだためで
形状などはそのままで、力のみが大幅に増えた。啓太でも全ての力を引き出せないために、
フルの力を出すとどうなるかわからない。愛称はカノンのまま。
『蒼天の星メシフィア』・・・啓太と共にエターナルになったメシフィア。蒼天と正式に契約し、この名前を受け継いだ。
ケイタに付き合って修行していたため、前よりかなり強くなっている。
ただ、最近はこどもの相手をするの時間が大好きなので、実力はイマイチ計り兼ねる。
『願い叶える星叶』・・・大河叶の正体はエターナル(今更だが)。詳しい経緯は不明だが、『終焉』と接触し、契約した。
その後時深と出会い、啓太の存在を知る。その成長をまるで親か姉のように見守っていた。
名前がどうして『終焉』と関係ないのかは不明。現在は啓太を放って別任務へ。
………………………………………………………………………………………………………………………………
あとがき
初めまして・・・になるのかもしれません。フォーリングといいます。
まずは、読者のみなさん、最終話まで読んで頂いて、本当にありがとうございます。
そして、『Connecthing・Fate』を読んで何を感じましたか?
つまらなかった、そこそこ面白かった、いろいろあると思いますが、書き終えての感想を書いておきたいと思います。
まず、これが私の初めての『永遠のアセリア』のSSということで、原作に沿った物にするか、アレンジストーリーにするか・・・
そのスタートから迷いました。
原作に沿った物なら悠人達がどうなったか、アフター的な物を考えていましたし・・・
でも、私が書きたいと強く思ったのはアレンジした方の設定でした。
正直・・・悠人達をうまく活躍させる自信がなかった、というのもありますが。
やっぱり、自分が一番書きたい物を書く、というのが一番良い文章を紡ぎ出せると思ったので。
途中で、『ここまで書いたんだし、完成させないと・・・』みたいな惰性で書くようにもなりたくありませんでしたし・・・。
そして、結局はアレンジした物を書く事にしました。
本当は、主人公は女性だったのですが、どうもうまく書けそうもないのでそこだけ妥協しました。
啓太の性格はそっくりそのまま生かされています。
途中から、啓太・・・この作品で強すぎるな、とか思ったりして・・・(笑)
あと、今さらながら・・・
兄貴はやっぱり名前をつけたほうがいいかな?
啓太にライバルみたいのがいた方が盛りあがったかな?
などと思っている今日この頃です。
でも、そうやって考えるのが楽しくて、最後までしっかりと書ききることができました。
私は、哲学的なものや、そういう台詞が大嫌いで、なるべく直接的な表現で気持ちを表してみました。
すると・・・あまりにも稚拙というか、なんというか・・・
気がつけば、最後の啓太なんかそのものですし・・・。
でも、不思議とこれだけ付き合うと、案外こういうのも悪くないのかも・・・と思えました。
私としては、言葉の多さをなんとかしたいと思うのですが・・・。
そんなこんなで、この作品を読んでくださってありがとうございました!
追記・・・現在、新作を書いております。
今度は原作に沿った物で、主人公と能力を失ったエターナルが出会う・・・。
というものです(短ッ!!)。
二部作になる予定で、一部はファンタズマゴリアでの話・・・。
二部では、エターナルの話の予定です。
オマケですが・・・
友人にテイ○ズのキャラを出せだとかムチャを言われて正直ウルサイです。
出せるわけないでしょォォォォ!!
助けてくださぁぁぁぁい!!!
と、まぁ悪友の言葉は完全スルーでがんばっています。
もし、楽しみにしていただけるなら幸いです。
では、次の作品でまた!
あなたの日常に幸せがありますように・・・フォーリングでした。