リスクの高い妊婦を診る全国の総合周産期母子医療センターの半数近くが、最近1カ月間に妊婦を受け入れられなかった経験があることが朝日新聞のアンケートでわかった。新生児集中治療管理室(NICU)のベッドが空いていないことが主な理由だった。東京都内の8病院に受け入れられなかった妊婦が死亡した問題でもNICUの満床が一つの理由だった。
都道府県が指定したセンター75施設に10月下旬に書面や電話で質問し、67施設(89%)から回答があった。
ここ1カ月で受け入れられなかったことがあるか尋ねたところ、32施設(48%)が「ある」と答えた。NICUが満床で受け入れられないケースが大半だったと回答した施設が、7割近くを占めた。34施設(51%)は断ったことが「ない」、1施設は「確認中」と答えた。
妊婦が救急搬送された場合、生まれた赤ちゃんが小さかったり、呼吸が安定していなかったりして、NICUでの管理が必要になるケースが多い。このため産科だけでなくNICUのベッドが空いていないと受け入れが難しい。
43施設(64%)が調査時点で「NICUは満床」、あるいは、間もなく搬送されてくる赤ちゃんのためのベッドを含め「ほぼ満床」と答えた。
東北、中四国、九州では、「リスクの高い妊婦を受け入れられる施設が地域でほかにない」といった理由から、「NICUが満床状態でも断らない」との答えが目立ったが、首都圏のほとんどの施設は「物理的に受け入れ不能状態にある」などと説明した。
東京都内の妊婦の受け入れを最初に断った都立墨東病院では当時、産科の当直医が1人だった。アンケートでも43%の施設が産科の当直は「1人のことがある」と回答。厚生労働省の通知では母体・胎児集中治療管理室(MFICU)が6床以下で、呼び出しに対応できる医師がいれば、当直は1人でいいとされ、過半数の施設が該当する。このため「不十分な体制とは言えない」との声もあった。