きょうから十一月。今年も残り少なくなる中で、恒例の日本漢字能力検定協会による「今年の漢字」の募集が始まった。
漢字の奥深さを伝える狙いで一九九五年から実施している。その年の世相を表す一文字を決めるもので、結果は十二月十二日の「漢字の日」に発表される。京都・清水寺の貫主が大きな和紙に揮毫(きごう)する光景は、師走の風物詩となっている。
最初の年の漢字は「震」。阪神大震災や金融機関の経営破たんに揺れた。米中枢同時多発テロの二〇〇一年は「戦」だった。紀宮さまのご成婚などによる〇五年の「愛」には温かさとともに、その大切さを教えられた。
「さて、今年は」と考えると、まずは世界的な金融危機に「崩」「苦」などが浮かぶ。米大統領選とともに「選」の年になると思われた衆院解散・総選挙は当面見送られたが、依然票狙いの論理がうごめく政界には「憂」や「憤」が募る。
「退」も上位を狙う。王貞治監督や高橋尚子選手の惜しまれての引退に比べ、福田康夫前首相の政権投げ出し退場はもってのほかだ。元気をもらったノーベル賞日本人連続受賞の「誉」などが、どこまで伸びるか。
明るい漢字は多いのに、なかなか出番がない。清水の舞台を背景に「夢」や「誠」「望」などの大書が見られるのは、いつのことだろう。