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記者のつぶやき

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「マスゴミ」と呼ばれ続けて

 ここ数年,筆者は友人たちの間で「マスゴミ」と呼ばれ続けている。

 具体的にはこうだ。

筆者「最近,△×が流行ってるよね」
友人A「どうせお前らマスゴミの情報操作だろ」
筆者「…」

友人B「何か凶悪事件が起きるとすぐにネットやゲームのせいにする。これだからお前らマスゴミは」
筆者「…」

 筆者と友人は敵対関係にはない。筆者が特別横柄な態度を取っているわけでもない。彼らはITの最前線で活躍しているということもあり,仕事絡みの情報収集も含めて,よく話すし,よく飲む。普段は普通の友人たちだ。ただ,彼らが抱くマスコミに対する不満につながりそうな話に差しかかると,いつもこうなる。

 昨今,毎日新聞の英語版サイト「毎日デイリーニューズ」が低俗記事を掲載し続けていた問題が批判されている。こうしたマスコミの不祥事の際は仕方がない。同じマスコミの人間として,襟元を正すべきいい機会だ。心して耳を傾ける。

 しかし,責任をマスコミにすべて帰するのが難しい話題や,まだ議論の余地のある話題の落としどころまで「マスコミが悪い」として,「マスゴミ」と斬って捨てられるのは,正直面白くない。

 そんなことから最近,「どうすれば彼らにマスゴミと呼ばれないようになるのか」と考えていた。

ダブルスタンダードとネット情報との比較

 そもそもマスゴミとは,報道にたずさわる記者や会社,マスコミ業界全体を指し,マスコミの報道に不満がある人や,そもそものマスコミの存在自体を否定する人たちが使う侮蔑用語であると理解している。

 毎日デイリーニューズのように,マスコミとして不適切な報道があった場合は仕方がない。侮蔑されて当然だ。ただ,そもそも「マスコミは嘘を垂れ流す存在」「情報操作をしようとしている」と頭から決め付けている相手に対して,マスコミへの理解を求めるのは難しい。

 友人たちが持つマスコミに対する不満を,腰を据えて聞いたことがある。そこから導き出された主張はおおよそ以下の通りだ。

  • 同じマスコミ同士や特定の権力には甘く,そうでない存在は徹底的に叩くダブルスタンダードを持っている
  • 広告収入によるビジネスモデルが公平な報道の弊害となっている
  • ネット上にこそ真に迫る事実がある(一部に信頼できない情報もあるが)
  • 事実とズレのある自己満足の報道が散見される
  • マスコミは謝らない

 上記の指摘を受けたのは,毎日デイリーニューズの問題が話題になっている最中だった。当時,毎日新聞に対する批判が掲示板やブログ,ネットメディアに偏っていたことが「マスコミは同じマスコミに甘い」という主張の根拠になっていたと思われる。「マスコミは謝らない」という指摘も,この問題についての毎日新聞の高圧的とも取れる謝罪手法が背景にあるのだろう。

 ただ,筆者の感覚では,マスコミが同じマスコミに対する報道で筆力を緩めることはないし(関連記事1),謝罪についても,事実と異なる記述をした際などは即座に訂正をして謝罪する。従って,筆者はこれらを省いて導き出される友人たちのマスコミ批判は,「ダブルスタンダードがある」「ネットの情報の方が信頼できる」---という2点に集約できると考える。

 ダブルスタンダードに関する主張は,マスコミの構造的な問題を指摘していると思われる。友人たちの主張は,弁護士で元産経新聞の記者である日隅一雄氏の著書『「マスコミ」はなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか-権力に縛られたメディアのシステムを俯瞰する-』で補強して理解した。ここではマスコミの政府,大企業,大手広告代理店などとの癒着関係が指摘されている。友人たちは,こうした構造の片棒を担ぐ存在を「マスゴミ」と呼び,敬遠しているのだろう。

 ネット情報の信頼性については,ネットの特性を生かした情報伝達のスピード,特定の話題に対して専門家や当事者たちが詳細に語り合うこともあるという深い分析と比較しているようだ。マスコミによるスクープ記事や独自取材による記事を除き,突発的なニュースは新聞や雑誌などの紙媒体よりも,ネットの方が情報は速い。玉石混交ではあるけれど,掲示板やウィキペディアなどには特定の話題を取材中の記者や取材対象者さえ舌を巻くほどの深い情報があることは多々ある。

 こうしたことから,友人たちは「“情報弱者”はすべての情報をマスコミから受動的に収集するかもしれないが,ある程度のネットリテラシーや情報収集リテラシーがあれば,ネット上で情報収集が完結するからダブルスタンダードのマスコミは不要」と言いたいのである。

(島田 昇=ITpro)  [2008/09/01]
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