政府がAIGを見捨てられなかった一番の理由
今回、リーマン・ブラザーズを見捨てた米国政府は、AIGは救済した。その一番の要因はAIGが手がけていたCDS(Credit Default Swap)である。CDSとは信用デリバティブの一種で、債務不履行があったときに保証してくれるものだ。買い手が証券化したものを買い、その信用リスクを回避するために保険料を支払うという仕組みで、金融商品として機関投資家の間で売買されていた。しかもその額がすごすぎた。AIGだけで自己資本の5倍以上の4000億ドル超を保証していたのだ。
要するに、金融機関同士で保証をし合っていて、その額がどんどん大きくなっていたのだ。まったくもって「とてつもない状況」になっていて、仮に金融危機が起こって保証しきれないようになったら、債務を払いきれないことになる。その債務不履行が現実に起こる可能性が出てきたのだ。CDSのようなものを発明して世界中にばらまいた当の本人であるAIGに倒れられたら困るのである。
しかし、AIGを米国政府が資本注入して救済すると言っているが、その救済内容がクリアにはされていない。米国内分だけを救済するのか、海外分も対象に入れるのかを明確にしておかないと、その対応次第によって本当に世界中をパニックに走らせる要因になるだろう。
資本を握った米国政府の救済内容が明らかにされない理由は、今の段階ではAIGの世界中の膨大なオペレーションが把握できてないからだろう。AIGは米国で生まれた会社ではない。もともとは上海で設立した会社なのである。途中で米国に入ってきたために、その業務の比率は米国分よりも全世界のほうが大きい。だから、米国政府の救済内容を早く明確にしないと、日本一つをとっても六つの生・損保会社を運営しているし、保険をかけている人は気が気ではないだろう。現にこの一週間でも海外オペレーションを売却する、しない、損保以外は売る、など情報が錯綜している。これは被保険者にとっては大きな問題であるし、日本政府としても看過できない問題である。
それにしても、一連の金融機関の破綻騒動は、一言で言えばブッシュ大統領の責任と言っても過言ではなかろう。彼が就任してからというもの、CDOやCDSのような危険きわまりないものが野放しにされ、世界中にばらまかれてきた。中国発の食料品どころの騒ぎではない。
同時に米国、特にウォール街を放し飼いにしてきた米国に対する批判は世界中に充満しており、今後は金融機関および金融商品の国際的な「品質基準」を策定する動きが起きてくると予想される。
あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください
この連載のバックナンバー
- 「禁じ手」を使わざるを得ない米国 (2008/10/29)
- グルジア紛争にマケインの影 (2008/10/22)
- 世界に広がるチャイナフリーの動き (2008/10/15)
- 最初にやるべきことを最初に (2008/10/10)
- ポールソン案は額不足、手順も誤り (2008/10/09)