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韓国漁船拿捕多発 水産庁、対策要求へ
日本の排他的経済水域(EEZ)内での韓国漁船の違法操業が相次ぎ、韓国漁船の拿捕(だほ)が今年はすでに過去5年間で最高の17件に上っていることが分かった。こうした事態を受け、水産庁は今月中旬から始まる日韓漁業交渉で、韓国漁船のGPS(全地球無線測位システム)データに航路記録を義務づけるなど違法操業の防止策強化を求める方針を固めた。水産庁幹部は「隠蔽工作など手口も悪質化している」と強化の必要性を指摘している。
水産庁によると、外国船の密漁など違法操業を取り締まる漁業主権法違反容疑で韓国漁船が拿捕される例は平成16年以降、日本側の取り締まりなどで大幅に減少し、年間8〜14件で推移してきた。しかし、今年は10月30日現在ですでに17件、拿捕された漁船の数も17隻に上っている。
原因は、日韓漁業協定(11年改訂)を悪用した韓国船の増加。日韓の漁船が互いのEEZに入って一定量まで漁獲することを認めている協定に基づき、日本側に進入し、長時間とどまって規定量以上のタチウオやアナゴを捕る韓国漁船が増えているという。
17隻のうち11隻はこうした違法操業を行い、日本の取締船の検査を受けた際に、虚偽の漁獲量を記載した操業日誌を提示した容疑で、拿捕された。
最近では、韓国側で獲った魚と日本側で獲った魚を混ぜて船内に保管し、日本のEEZでの獲り過ぎを分からないようにするなど、検査をごまかす悪質な偽装工作も横行している。
そのため水産庁は、韓国漁船が長時間にわたって日本側のEEZ内で漁をしたケースがすぐに分かるように、船に設置されたGPS航跡データを消さずに残すことや、日韓それぞれの海域で捕獲した魚を分けて保存することなどを、韓国側に義務づけたい考えだ。両国の漁業監督当局が協議する日韓漁業共同委員会の小委員会で、防止策を強行に求める方針という。
ただ、水産庁関係者は「韓国側の抵抗が予想され、合意に至るかは不透明」としている。
今月から日本海で盛況になるズワイガニ漁でも、韓国漁船の密漁が横行。日本側の取締船に見つからないように、ブイ(浮標)を浮かべずに刺し網を海底に隠して密漁するなど、手口も巧妙化しており、水産庁は取り締まりを強化する。
(菅原慎太郎)
■拿捕(だほ) 排他的経済水域での外国漁船の密漁など、違法操業に対して行われる取り締まりで、船長らを逮捕し、漁船を押収する行為。国連海洋法条約で締結国に認められている。日本は漁業主権法違反で韓国、中国、ロシアなどの漁船を拿捕しているが、最多は韓国漁船。今年は、漁獲量を682キロ偽った容疑で韓国漁船「チョンイル」が6月に拿捕されるなどしている。同法は最高1000万円の罰金刑も規定しているが、一定の担保金を支払うと釈放される制度が条約にあるため、実際にはほとんど起訴されない。
■排他的経済水域(EEZ) 海に接する国が、魚介類やエネルギー資源などについて領海と同様に開発、管理できる海域。12カイリの領海より広く、200カイリまで設定することが国連海洋法条約で認められている。外国船の漁など経済活動も規制できるが、領海とは異なり、通航は妨げられない。日本海のように、日韓の距離が短く200カイリを設定できない場合は、中間線や協議などで決められ、漁船の相互進入など条件を設定することもある。領有権問題がある竹島周辺にも、両国の船が活動する暫定水域が設定されている。