2008年11月01日 【朝刊】 社会
「真実相当」と認定/「集団自決」訴訟
元戦隊長側の控訴棄却 命令は「学会通説」
「集団自決」訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(小田耕治裁判長)は三十一日、「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の関与を認め、戦隊長による関与についても「十分に推認できる」とした一審・大阪地裁判決を支持し、元戦隊長側の控訴を棄却した。原告側が主張した両戦隊長による直接命令については「証拠上断定することはできない」とする一方で、戦隊長命令説が「戦後間もないころから学会の通説といえる状況にあった」とし、記載には十分な理由があったとして「真実相当性」を認めた。原告側は上告する。
判決は、名誉棄損と出版差し止めに関する不法行為の認定基準として新たな司法判断を提示。高度の公共性と公益性が認められる事実について、新しい資料で真実性が揺らいだとしても、直ちに出版の継続が違法にはならないと判示した。
座間味や渡嘉敷の「集団自決」をめぐっては、「軍官民共生共死の一体化」の大方針の下で、日本軍の深いかかわりは否定できず、日本軍の強制・命令と評価する見解もあり得ると指摘。「元戦隊長らが直接住民に命令したという事実に限れば、その有無を証拠上断定することはできない」とした。
証拠に対する判断では、座間味島の戦隊長だった原告の梅澤裕氏(91)が「集団自決」のための弾薬を求めた村の幹部らに「決して自決するでない」などと述べたとする主張の信用性を全面否定し、「到底採用できない」と退けた。
元戦隊長側が、梅澤氏の命令を否定する証拠と位置づけた、座間味島住民の「新証言」についても「明らかに虚言と断じざるを得ない」とした。隊長命令が、援護法適用のための捏造だったとする主張も退けたほか、渡嘉敷住民のために、戦隊長命令を創作したとする元琉球政府職員の証言も、一審に続いて信用性を否定した。
小田裁判長は「戦後六十年以上を経て、特定の隊長とその直接命令ではなく、総体としての日本軍の関与、強制と誘導の問題としてとらえ、他の様々な要因とあわせてその実態を直視するべきだとの認識が一般化している」と指摘。
その上で「梅澤氏ら原告の、社会的な評価がおとしめられている具体的な可能性は、一般的に見ても大幅に低下している」とし、各書籍の出版の継続により、重大な不利益を受けているとは認められないとした。
言論自由守った
岩波書店の話 私たちの主張を認めた妥当な判決である。沖縄戦をめぐる歴史の真実を守り、言論・表現の自由と歴史研究の自由を守ったという意味で高く評価する。貴重な証言をしていただいた沖縄の生存者の方々をはじめ、多くのご支援、ご協力に感謝する。
沖縄の犠牲認識
大江健三郎氏の話 私が『沖縄ノート』を書いたのは、沖縄の人々が荷わされた犠牲を認識し、責任を自覚するためでした。原告側の政治的目的は「美しい尊厳死」と、悲惨な犠牲を言いくるめナショナルな気運を復興させること。それと戦うことを人生、また作家の仕事の中心にします。
命令は「学会通説」認定承服できぬ
原告側代理人の話 控訴審判決は全面敗訴となった。最高裁が積み上げてきた名誉棄損の判断基準を根底からひっくり返し、(原告側の)請求を棄却し不当だ。沖縄ノートによる人格権侵害が重大でないという事実認定も全く承服できない。
「集団自決」訴訟
一、日本軍は「軍官民共生共死の一体化」の大方針で「集団自決」に深くかかわった
一、戦隊長の住民に対する直接命令は証拠上断定できない
一、書籍の記述には真実相当性があり、不法行為にはあたらない
一、梅澤氏の主張は採用できない
一、隊長命令説は援護法適用のための創作ではない
[ことば]
「集団自決」訴訟 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(75)が、「沖縄ノート」(大江健三郎著)や「太平洋戦争」(故家永三郎著)の各書籍に記載された、両戦隊長が住民に自決を命じたという事実は誤りとして、大江氏と岩波書店に、出版の差し止めや慰謝料の支払い、謝罪広告の掲載を求めている訴訟。2005年8月に提訴され、大阪地裁は08年3月、請求を棄却。梅澤氏側が控訴していた。
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