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21歳異例の引退 石井、プロ格闘家へ

2008年11月1日11時4分

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 柔道の北京五輪男子100キロ超級金メダリスト、石井慧(21)=国士大=のプロ格闘家転向が31日、決まった。全日本柔道連盟(全柔連)に対して強化指定選手の辞退届を提出。全柔連も受け入れ、事実上柔道界から引退した。提出の際に石井に付き添った金建龍弁護士は進路について「11月3日の五輪祝賀会で本人が話をする」と語った。

 全柔連はプロ契約選手の大会出場を認めておらず、辞退届を出さないままプロになると除名処分になる可能性があった。辞退届提出に応対した全柔連の津沢寿志事務局長によると、石井は「これからしっかり頑張っていきたい。今後ともよろしくお願いします」と話したという。

 柔道界からのプロ転向は、92年バルセロナ五輪銀メダルの小川直也氏や同五輪金メダルの吉田秀彦氏、00年シドニー五輪金メダルの滝本誠氏らの例がある。だが21歳の若さでの転向は異例だ。

 全柔連の登録規定によると、プロで活動した選手が柔道界に復帰して選手登録するには、プロ契約が終了してから3年が経過する必要がある。

■待遇・人材…日本柔道ピンチ

 トップレベルの柔道選手は、すでに「プロ化」している。柔道の実績をもとに数千万円の単年〜複数年の契約社員として選手を抱える実業団チームがある。企業側としては引退後も社員として雇用を続ける必要がなく、経費を抑えることができる。選手側も柔道だけに集中して高収入を得ることができる。

 こうした環境では、引退すると大幅な収入減になる。柔道を職業とする選手たちが、待遇のいい新たな舞台を目指すのは不思議ではない。全柔連の吉村和郎・強化委員長は「今は目先のことを追いかける選手が多い。太く短くか、細く長くかの考えの違い」と話した。

 石井の転向には力を柔道以外でも試したいとの純粋な思いが強いが、今後は高額の契約金を目当てにプロ転向を図る選手が出る可能性がある。

 21歳の金メダリストの引退は、全柔連にとって大きな痛手だ。男子の最重量級は強化を見直すことになる。今のところ石井に次ぐ力があるのは07年世界選手権無差別級金メダルの棟田康幸(警視庁)や05年世界選手権同級3位の高井洋平(旭化成)だ。

 しかし棟田は27歳、高井も26歳。ロンドン五輪が開かれる4年後には力が衰えているかもしれない。吉村強化委員長は「ロンドンを目指す選手を徹底的に鍛えるしかない。大きい穴が開いたが、やらせるしかない」。

 今月の世界ジュニア選手権男子100キロ超級決勝で、百瀬優(国士大)が昨年の世界王者リネール(仏)と対戦したが「手も足も出なかった」と吉村強化委員長。史上最年少の19歳4カ月で全日本選手権を制した石井のような逸材は、そうはいない。(柴田真宏)

    ◇

 全柔連の吉村和郎・強化委員長 「人が休んでいたときでも練習していた男。面白い人材だったし、人に刺激を与えることでも惜しい人材だった」

 総合格闘技「戦極(せんごく)」を主催するワールドビクトリーロードの國保尊弘取締役 「戦極には2人の柔道の金メダリスト(吉田秀彦と滝本誠)が出場している。ぜひ、3人目のゴールドメダリストとして来てほしい。いま、総合格闘技に来ることを視野に入れて練習しているのなら、すぐにでも出てほしい」

 総合格闘技DREAMの主催会社FEGの谷川貞治社長 「石井とは一切交渉していないし、相談もされていない。一般論としては、石井はヘビー級の大型新人という気がする。あれだけの身体能力があれば、人の数倍は(格闘技への)適応力がある。DREAMに来てくれるなら、日本の格闘技界の宝として大切にしたい」

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