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インド代理出産:女児、お父さんのいる日本へ 親権者不在のまま、人道的に渡航許可

 ◇祖母ときょうにも出発

 【ジャイプール(インド北部)栗田慎一】40代の日本人男性がインド人女性に代理出産を依頼し7月に女児が生まれた問題で、約3カ月にわたってジャイプールで女児の世話をしてきた祖母(69)=男性の母親=が31日、現地で記者会見した。女児は依然、親権者不在だが、人道的観点からインド政府が女児に「渡航許可証」を、日本大使館が日本の滞在ビザを発給したことで日本への出国が可能になった。祖母は日印双方の関係者に感謝の念を示した後「さあ、いっしょに(日本へ)帰ろうね」と、腕の中で寝息を立てる女児に語りかけた。

 女児は誕生時は体重約2800グラムだったが、現在はもう約6キロ。祖母によると「当初は気候の違いからミルクの温度調整に失敗し下痢させてしまった」ものの、その後は元気に育ってきたという。

 会見中、女児がむずがって泣き出したが、祖母がゆりかごのように腕を揺らして歌を歌うと安心したように眠った。祖母は「額の辺りが、おじいちゃんとお父さんに似ているの」と目を細めた。

 また「インドの人々や裁判所、政府、日本大使館などには、この子のために本当によくしていただいた」と感謝。「みんなから優しくしていただいた。だから、みんなに優しくしてあげられる子に育ってほしい」と、女児に語りかけるように話した。

 祖母は代理出産について「子供のできない人はやったらいいと思う」としながらも「外国でも、日本でできるようになっても個人的には嫌です」と、複雑な心境をのぞかせた。将来、女児に出生の経緯を伝えるかどうかは「お父さんが考えると思います」とだけ述べた。

 祖母と女児を定期的に診療してきたインド人小児科医は「祖母は(3カ月の滞在で)体重が10キロほど減った」と打ち明けた。祖母は会見で「通じない言葉、なれない食事には苦労した。毎日不安で、精神的につらかった。でも、この子が元気だったので私も頑張れた」と笑顔を見せた。

 会見には地元ジャーナリスト約40人が詰め掛け、インド国内での関心の高さをうかがわせた。祖母と女児は、1日にも日本へ向け出発する予定。

毎日新聞 2008年11月1日 東京朝刊

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