「さて・・・今度は本物かな?」

俺は地図を片手に洞窟にいた。なぜなら!ここに『伝説の剣』があると書いてあるのだ!

 

笑うなよ。そりゃ、いきなり何言ってんだこの人って思うかもしれないけどさ。

こんな3行でさ・・・。

でも!確かなスジの情報なんだ!

「うぅ、ワクワクするなぁ!」

俺は洞窟をひたすら進んでいく。まぁ、このお宝ってのも、金に変えるだけなんだけど。

ウチは父さんと俺しかいない。んでもって父さんはイロイロあって今は職探ししてる。

だから、俺は趣味のトレジャーハントを生計に生かしてるってわけ。

今まで、結構なお宝見つけたんだぜ?50万するやつとか。

 

 

・・・その金見せたら、父さん泣いてたし。

 

 

「・・・次はこっちだ」

俺は右に曲がる。

「・・・あっ!」

目の前に大きなトビラが。

「こんなの、宝と俺との間の壁としては薄すぎるぜ!!」

ドゴォォッ!!!

俺はトビラを蹴りあけた。

「・・・これは・・・」

俺は、その部屋にある、よくSFとかで脱出ポットとして使われそうなカプセルに入った、綺麗な剣を見つけた。

「これが・・・お宝・・・!いやっほーっ!!あたりだぜ!しかも、メチャクチャ高価そうだし!!これで今月は牛鍋が食える!」

俺はさっそくカプセルを『強引』にあけた。

ガチャ・・・

「おぉ・・・重たい。お宝の重質!うぅん!サイッコー!」

ゴゴゴゴゴ・・・

「あれ?」

何か変な音が・・・そう。不安にさせるような音が・・・。

グォォォォ!

「あ〜れ〜!」

いきなり現われた闇に吸い込まれた!

(こ、こんなノリでどこかへ飛ばされちゃっていいのか〜!!!)・・・

 

 

 

『Connecting・Fate』

 

 

 

「ん・・・?」

俺は目を覚ます。

「隊長!目を覚ましました!」

「うむ・・・」

ガッチリした男が俺の目の前にたった。

「?」

俺は身動きができないことに気付く。縄で縛られているようだ。

「まず、君はどこの国の者だ?」

「・・・日本だけど」

そう答えると、男は訝しげに俺を見た。なんで鎧なんか着てるんだ?

「日本?知らないな。別の言い方とかはないのか?」

「ジャパンとか・・・英語だけど」

「ジャパン?ジパングとにているな・・・」

「ジパング?そういえば、ジパングって呼んでたヤツがいたなぁ」

確か、マルコ・ポーロくらいにまでさかのぼるんだっけ?

だが、その言葉は相当の動揺を与えたようだ。

「ジパング!?ジパングから来たというのか!?」

「だから、日本!」

「来たのか!?」

「・・・ああ」

俺は渋々こたえた。そうでないと終わりそうもなかったし。

「・・・そうか。なら、殺すか」

「えええええぇぇぇ!?」

なんでそうなる!?

「悪いな。恨みはないんだが・・・」

「嫌だぁぁぁ!こんな始まったばかりで死ぬなんて嫌だァァァァ!」

俺の叫びも虚しく、俺の腹に剣が食い込んだ!

「ぐっ・・・!」

俺の意識が遠退いていく・・・。

「た、隊長!大変です!」

兵士が息を切らせて部屋に駆けこんできた。

「なんだ!?」

「例の二人組です!単独で来たため、警戒に気付きませんでした!」

「なんだと!?」

「もうすぐこの関所に到達します!」

「急いで迎撃だ!かならず討て!ソイツらはあの国の最強戦力の要だ!」

「了解です!」

「隊長、この少年は?」

「戻ってから処理する!放っておけ!」

「はっ!」

 

 

・・・・・・・・・(・・・あれ?)

 

 

俺は目をさます。俺の体からは、剣がぬかれていた。

傷がない・・・

「なるほど。夢か!」

・・・床に、大量の血。俺の服も血で赤く染まっている。

「・・・ウソん」

(と、とにかく生きてて、だれもいないんだし・・・とりあえず体を自由に・・・あ!)

俺は、部屋のすみっこに例の剣を見つけた。

ジョリジョリ・・・

パスッ。

「よし!切れた!」

縄が切れて、体が自由になる。つい、う〜んと背伸びしてしまう。

「・・・しかし、アイツら一体なんの集団だ?中世の騎士みたいな格好して・・・そういえば、テレビでそういうのを趣味にしてるやつがいるって見たけど・・・まさか、人を本当に刺すなんて・・・」

このさい、刺されて助かったのはなぜかは放っておく。命があれば儲け物だ。

「とにかく、逃げないと。また殺される」

俺は逃げ場を探す。なんだか右の方からへんな金属音が聞こえてくる。

(つまり、あっちは戦ってるってことか・・・さて・・・裏口みたいのはないのかな?)

俺はう〜んと唸る。下手に部屋を出て、また捕まって殺されるのは勘弁してほしい。

{おい}

「ん?誰だ?誰か来たのか?」

{おまえの手にもってるヤツだ}

「・・・剣がしゃべった?ヤバいなぁ。俺も相当キテるな」

{殺すぞ?}

「・・・マジ?」

{マジ}

「どうせ俺が動かさなければ動けないくせに」

{う・・・意外に冷静だな。おまえ}

「ところで、アンタは?」

{・・・}

「急に黙るな!!」

{・・・俺は、この世界の剣だ}

「は・・・?」

{ちなみに、おまえの言っている日本というのは、この世界にはない}

「・・・」

{つまり、ここは異世界ということだ}

「メルヘンというか、ファンタジーもそろそろ飽きてきたな」

俺は頬を抓る。痛い・・・。

{現実を見ろ。おまえの体は、この部屋は・・・全て現実だ}

「説明は後で聞くよ。まずは死にたくない」

俺は第一に己の命を優先した。助かるのなら剣だろうと、すがりたい。

事情などその後で聞けば十分間に合う。

{そうだな。俺も下手なヤツらに使われたくない}

「生意気な。んで、どーすりゃいい?」

{まずは、俺の知り合いのヤツに会いにいく。そのためにはここを脱出しなければいけないんだが・・・}

「うんうん」

{悪いが、ここは知らないな。初めて見る}

「あ、そ・・・折っちゃおうかなぁ?」

俺は剣を曲げようと力を入れる。

ミシミシ・・・。

{ほ、本当だ!イタい!やめてくれ!!}

「じゃぁどうするのさ!」

{と、とりあえず、ここから出ていくまでは俺が守ってやる}

「どうやって?」

{それは戦いになってみればわかるさ。そうだな・・・あそこのトビラを開ければどうだ?}

「わかった」

俺はそのトビラを開ける。

(そういえば・・・金属音がしないな。戦闘終わったのか?)

ガキャ・・・

ドアノブが遠退いた。ドアがあいたのだ。

「・・・」

俺は、その開けた人物と目があってしまう。綺麗な女性だ。

「うわー、女性だ。珍しい」

「・・・む?」

「あ、すいません。通るんですよね、どうぞ」

俺は道をあける。

「・・・」

訝しげにこっちを見ながら通る女性。長い黒髪が印象的だ。

すると、その後ろから別の女性が出てきた。

「・・・?」

「ほえぇ・・・両方美人だ」

「あら、ありがと」

丁寧に握手してくれた。

「何かのお仕事で?」

「はい。そうなんですよ」

「頑張ってくださいね。それじゃ」

俺は去ろうとする。

ガシッ・・・

「?」

なぜか、俺がさっきの黒髪の女性につかまれた。

「あ、あの?」

「・・・おまえ、何者だ?」

「あ、大川啓太っていいます」

「・・・かわった名前だな。どこから来た?」

「えっと・・・ジパングです」

さっきのヤツらの話にあわせる。ちょっと不安だった。

そしてそれは見事に命中。やっぱり、女性も驚いていた。

{おい、バカ!!}

「え?」

{はぁ・・・話しておけば良かったか}

「ねぇ、なんの話?」

「悪いが、死んでもらう」

「えぇぇぇ!?またそれ!?」

{マズい!その女死ぬぞ!?}

「え?俺じゃないの!?」

どう考えても、このままでは俺が死ぬはずだ。

{おまえの、こっちでの力が解放される!}

「・・・?」

訳のわからない事で焦り始める剣。

「じゃぁな」

「わ!待った待った!!」

「ぬ・・・?」

女性が剣を止めてくれた。

「なにも、遊びで人を刺すことはないんじゃない?」

「遊びだと・・・?」

いきなり女性の顔が変わった。

「え?俺はてっきり趣味かなんかだと・・・」

グイッ!

俺を掴んでいる手に更に力がこめられた。

「貴様は・・・遊びで命のやりとりをできるというのか?」

「え?あの・・・」

そんな真顔でにらまれても困るんですけど・・・

とりあえず、気に障ったみたいだ。

「ご、ごめんなさい」

「・・・では死ね」

「って待てってば!」

今度は、剣が止まることはなく・・・

グサッ!!

ブシュゥウッ!!・・・

「あぁ、カワイイ子だったのになぁ」

「ふん、敵は敵だ」

二人は正反対の性格のようだ。黒髪は啓太を捨てる。・・・

 

 

 

「オイ、待てよ」

 

 

 

冷たい声がその場を包んだ。

「なに・・・?」

「え!?あの子・・・!」

啓太は立ち上がっていた。腹に傷はない・・・。だが、決定的に違う。

そう・・・目の色が青い。

深い青・・・。

{あぁ・・・発動しちまった}

「おい、これが発動たらなんたらって言ってたやつか?」

{ああ。そうだ、それがおまえの力だ}

「そうか。なんだか・・・体が自分のみたいじゃなく、軽いぜ。しかも・・・あの女をブチのめしたくてしょうがねぇ」

{はぁ・・・}

「しばらく、ただの剣になっててくれや」

{はいはい・・・逆らうと折られかねないし}

「おい女」

「なんだ?」

「遊びで命のやりとりをやれないと言ったな?」

「ああ」

「なら・・・なんでそんな簡単に俺を殺した?」

「・・・」

「なんだか知らないが、ジパングっていうとてめぇらはずいぶん嫌うらしいな」

「・・・それがどうした?」

「・・・アンタらは、素性がしれないヤツでも、とにかく殺す・・・そういう目をしてやがる」

「・・・っ!」

女の顔が一瞬こわばった。

「どうしてそうなったかはしらねえが・・・そんなテメーに命を語る資格はねぇ!!人を殺すのに平気な顔をしていられるやつはなァ!ゲスっていうんだよ!!」

俺は剣を持って女を襲う。

キィィンッ!

相手も抜刀した。

「速いな・・・」

「くっ・・・」

女に焦りの顔が浮かぶ。俺の意外な速度と剣技に驚いている。

それは俺もだが・・・。

「・・・くっ!」

俺を押し返してきた。

「はぁぁぁぁ!!」

女が切り掛かってくる。

「・・・遅い」

ザパァァッ!!俺は一瞬で女の横を通り過ぎる・・・。

ブシュッ!!

「なっ・・・ぐっ」

女はかた膝をつく。脇腹が綺麗に裂かれている。

「さて・・・どうするかな」

「えい!」

ゴツッ!

「え??・・・あれ・・・?」

俺の意識は一瞬で飛んでしまった。

「ふぅ、危ない危ない」・・・

 

 

 

 

「・・・」

俺は黙っていた。なんで気付いたら牢獄にいるんだ?

大体・・・

なんすか?このパラパラ漫画みたいな急展開は。

もうついていけないんだけど。

「くっそー。話し相手の剣もいないんじゃつまんねー!」

「おい、出ろ!」

見張りっぽいのが俺を呼んだ。

「え?なに?」

「王がおまえに会うそうだ」

「・・・王様?」

俺はとりあえず外に出る。・・・連れていかれたのは、まるで中世に帰ったかのようなお城。その謁見の間というところだ。

「・・・」

王っぽいのが椅子に座ってる。

「そなたが・・・来訪者か」

「あの」

「勝手に口を聞くな!」

ゴツッ!

「ぐっ・・・」

殴られた。

くそっ・・・。

「やめろ。今は彼と話がしたいんだ」

「はっ!」

王の隣には、例の女二人がいる。・・・そういうことか。

「君は、あの関所で何をしていたんだね?」

「・・・わかりません。ただ、気が付けば捕まっていて・・・」

「捕まっていた?」

「んで・・・日本から来たって言ったら、なんだか変な話になって、ジパングからってことに・・・」

「ジパング・・・むぅ。そうか」

王様も難しい顔をする。

「・・・そういえば、俺の持っていた剣は?」

「ああ、あるが?」

「・・・アイツ、知り合いに会うって言ってました。だから・・・力になってあげてください」

「・・・ほぅ」

その言葉に、場がシーンとする。

「あ・・・あの・・・?」

「お、スマンな。剣が喋れるのか」

「・・・」

「いや、それ以前に・・・自分より他の者を心配するその精神・・・素晴らしい」

「・・・それで、あの・・・俺はどうなるんですか?」

「ふむ・・・本来なら一生牢獄暮しだが、そなたの武は聞いておる」

「・・・」

「そこで、どうだ?一緒に戦うというのは?」

「・・・どうして戦ってるんです?」

俺は答えずに逆に質問した。

「うむ・・・簡潔にいえば、隣の国が攻めてくるのじゃ。この国は土地に恵まれているゆえにな」

「・・・」

(本当に簡潔だな。すごく短いぞ?)

「そこで、国民の安全を守るために戦っておる」

「・・・逆・・・じゃないんですか?」

「!」

「あの関所の人たちは、『攻めてきた』と言っていました。本当は、あなたたちが侵略してるんじゃ・・・」

「貴様!王になんてことを!」

「よい。知らないだけじゃ。・・・防衛は当然しておる。だが、早期決着のために反撃もしておる。それだけじゃ」

「・・・でも、その結果として生まれたのが、人を殺しても苦しまない・・・そこの人みたいな人を生んだだけじゃなんですか?」

おれは目線で俺を容赦なく殺した女に気付かせる。

「・・・!」

「・・・そうかもしれぬな。私はふんぞり返って、こう言っているのだからな・・・奴らを殺してこいと」

王は暗い顔になってそう言った。

「・・・」

「だからといって、国民全てを犠牲にはできぬ」

「・・・そうですか」

「・・・どうじゃ?」

「・・・俺が一緒に戦えば、少しは自由になるんですか?」

「・・・少しはな。信頼に足る人物だとわかれば、無制限となるが」

「・・・わかりました」

「そうか!」

王がパッと明るくなる。どうやら・・・戦況は悪いみたいだな。

「でも、それは殺人鬼になるためではありません。自分の世界に帰る術をみつけるためです」

「・・・わかった」

「では、縄をときます」

 

「・・・はぁ」

俺は、なんだか落ち着かない部屋にいた。

なんであんな冷遇だったのに、こんな高級な部屋に・・・?

フカフカベットに、鏡台やらなにやら・・・。

「失礼するぞ」

「むっ」

俺はとっさに身構える。例の女だ、黒髪の・・・

「・・・そう構えるな」

「・・・」

「今日から、仲間なのだから」

「・・・悪いけど、人殺しと仲間になりたくない」

「・・・そうだな」

「・・・けど」

「え?」

「君はその言葉に少なからず怒ってた。それって、自分だって好きで殺してるわけじゃないって・・・思ったんだよね?」

「なぜわかるんだ・・・?」

女が心底驚いた顔をして俺をみていた。

「さぁてね。だから・・・少しなら、君と仲間になってもいいかなって思えた。それで、何の用?」

「ああ、自己紹介をな。明日一緒に出撃だから」

「・・・えええええ!!?」

「いきなり重役となったんだ。それなりの働きをしてもらうぞ」

「・・・」

俺がげんなりしているのを無視して勝手に自己紹介を始めた。

「私の名前はメシフィア・プルースト。この国の遊撃団長だ」

「ふぅん」

遊撃ってなんだ?

「・・・ちなみに、おまえは何という役についているか・・・わかってるのか?」

「別にいいよ、知らなくても。興味ないし。あ、そうそう。んじゃ、俺は啓太でいいから」

「わかった」

「なんて呼べばいい?」

「・・・好きでいい」

 

「・・・プルちゃん」

 

「・・・やめろ」

 

「メーちゃん」

 

「・・・殺すぞ?」

 

そう言って剣に手をかけるメシフィア。

「おっかしーなー。ちゃんづけで呼ぶと結構おもしろいって父さん言ってたんだけどな・・・わかったよ。メシフィア」

「それじゃぁな。明日は9時に門に集合だ」

「はいはい。じゃね」・・・

 

 

 

 

 

「うぅ・・・ふわぁ・・・」

「間抜けな声をださないでほしいな。団員にも影響する」

「す、すまねっす」

俺はなんとかあくびを引っ込めた。

まったく・・・この狂暴女はつっこむ時、かならず剣に手をかけてやがる。

「あ、そうだ。ホラ」

俺は剣を渡された。

「あっ!」

{よぉ}

例の剣だった。

「てっきり折られて溶かされたかと思ったよ」

{そう簡単に終わってたまるかっての。しっかし・・・おまえも大変なコトになったな}

「全くだ」

「・・・誰と話している?」

「うわっとと。なんでもない」

この声はみんなには聞こえないっぽいな。

「そろそろ相手の要塞につくぞ」

「・・・はぁ」

俺はどうも足が重い。

そりゃ・・・これから人を殺さなければいけないんだから・・・。

{おい、あの力発動させておけ}

「ええ!?どうやってやるかわからないよ」

{俺に青い玉がくっついているはずだ}

「あるねぇ」

{それを触れ}

「はいはい」

 

コォォォォ・・・

 

啓太の瞳が深い青へとかわっていく・・・

「うぉ、本当だ」

体の隅々まで力が沸きあがる。

{ま、こんなもんだ}

「へぇ・・・あー、でもむなくそ悪ぃ・・・」

{仕方ないさ。それが戦う者に常にまとわりつく枷なのだから}

「・・・はぁ」

「ついたぞ。あれだ」

目の前には、大きなダムみたいな要塞があった。

「・・・デカッ!!」

その大きさに驚いてしまう。

「あれを落とせば国境沿いはこちらが制覇したようなものだ。確実に落とすぞ」

「簡単にいうけど・・・どうやって?」

「簡単だ。敵の隊長を倒せばいい」

俺はそれを聞いて、最も楽に落とせる方法を思いついた。

「・・・最短でいく」

「なに?」

「俺は勝手にいかせてもらうぞ。遊撃団に入った覚えもないしな」

「・・・死ぬなよ?」

「ああ」

俺はダッと駆け出す。

「皆!いくぞ!!」

メシフィアの掛け声と共に遊撃団が攻撃を始めた!

 

 

 

 

 

「邪魔邪魔邪魔邪魔ぁ!」

俺は一直線に進んでいく!

「うぉぉぉ!」

敵が切り掛かってきた!

トンッ!

ドスッ!!

「なに・・・?」

敵の剣は俺のいた地面を叩いた。

ドンッ!

「うわっと・・・?」

俺はソイツの頭を蹴って更に遠くへ飛ぶ。

「ぅぉぉぉぉ!!」

今度は3人だ・・・。

キィン!!

パシッ!

俺は右の人の剣を受けとめて流し、後ろへ飛ばす。

すぐさましゃがんで左の人の足をかけて倒す。

そして正面の人の剣を左へ飛んでかわし、その人を後ろから体当たりして吹き飛ばす。

 

 

ダッダッダ・・・

要塞の中へと侵入した。どうやら兵士はすべて出払っていたようだ。

「・・・えっと。どこだどこだ?」

俺は隊長室を探す。正確に言うと、要塞長だが。

「適当な部屋に入るか?」

{それはマズいだろう。もし兵が残っていたらどうする?}

「だってこのままじゃラチあかないし」

{うぅん・・・どうするかなぁ・・・}

「じゃぁここ!」

俺はバッと部屋をあける。

 

 

すると、鎧をつけていない男どもが一斉に俺を睨んだ。

 

 

「大当たり〜・・・」

{逃げるぞ!}

「待てー!!!!」

「うわわわわ!」

俺は一気に逃げ出した。

適当な部屋をあける。おあつらえむきに、そこは倉庫だった。

「よし・・・この箱に」

俺はその箱に入る。

 

ダッダッダッダ・・・

 

「・・・やりすごしたか?」

{そうみたいだな・・・全く、おまえがバカだから}

「まぁ、見つかるのが早かっただけだ。いずれはきっとこうなってたし」

「誰だ?」

「!!」

俺は瞬時に身を固める。

「・・・」

「・・・おまえは・・・誰だ?」

女だ・・・しかも、なんだかずいぶん御大層な鎧をつけてまぁ・・・

あれ?なんでそんなヤツが戦いに参加してないんだ?

まさか・・・

「あなたが要塞長さん?」

「そうだが・・・?」

なんで倉庫にいるかは放っておく。

「・・・悪いけど、降伏してくれ」

「ほほぅ・・・すると、おまえは表で戦っているヤツらと同類か」

「・・・言い方がなんか引っ掛かるけど、そうだ」

「・・・やめておけ。貴様等ではこの要塞は落とせない」

「・・・どうかな?」

「なに?」

「君を倒せば、頭を失った団体は崩れていく」

「はは。君が私を倒すのかい?」

「・・・そうだけど」

残念だけど、自信はない。

なんせ、戦闘なんてシロートだし、なにより女だろうが男だろうが、絶対的に人を斬ることになれていない。

・・・なれたくもないが。

「いいだろう。全力で相手をしてやる。上へ行こう」

「・・・」

俺は黙ってその人についていく。階段を登り・・・広い場所に出た。

「ここが要塞のいちばん上だ。あの階段の上に、旗がある」

「倒せば、それを下げていいわけね」

「まぁ・・・無理な話だが」

「そんなバカなって話は、世の中にごまんとあるよ」

「・・・いくぞ!」

ブワッと気迫が真正面からぶつかってきた。つい気圧される・・・

これが本物・・・!

「せいっ!」

「ぐっ!」

キィン!

なんとか受けとめたが、重い・・・!どんどん顔に近付いてくる。

俺は剣を右斜め下におろしていき、そのまま剣を流す。

キィィン!

「っ!」

地面を叩いたはずの剣が、すぐさま脇腹めがけて飛んできた。俺はすかさず剣で防ぐ。

「くっ・・・」

「どうした?守ってばかりでは勝てないぞ?」

「・・・わかってるさ。でも・・・人を斬るのは嫌なんだよ・・・」

「・・・貴様には戦って守ろうとするものはないのか?家族は?国は?」

「・・・ないんだよ」

「なに?」

俺はギギギと剣を押し返す。

「俺が守りたいものなんてーのは、自分の命しかねーんだよ!家族なんかいるかボケッ!!昨日来たばかりでいきなり牢獄へ入れられた国に忠誠なんか誓えるかっての!!」

キィン!!

「っ!」

女の剣が、一杯右へ飛んだ。俺は回転して回りこみ、剣を右手に持ちかえ、その勢いを殺さず切り付ける。

シュッ・・・

 

 

 

 

 

「・・・なぜ止めた?」

俺の剣は、女の首筋で止まっていた。

「俺の勝ちだ。旗を下ろす」

「・・・なぜ殺さない?」

「俺は人を殺すために戦ってるんじゃない。だったら、人は殺さない方がいいに決まってる。それが、法律でも憲法でもない、俺の中の正義だ」

「・・・」

俺は旗を下げる。すると、ウォォォォォ!!という歓声が聞こえた。

どうやら、要塞は落ちた、ということらしい。

「・・・さて、君には捕虜になってもらうよ」

「・・・そうはいかない」

女はまた構えた。切っ先が俺を向いている。

その目は戦闘意欲を失っていなかった。

「・・・」

「あの国は・・・非常に貧しい。だから、そっちの国との同盟を申し入れた。しかし・・・そちらは応じなかった。それはなぜだかわかるか?」

「・・・わかるよ。そっちの力をつけさせないためと、食料が減るから・・・だろ?」

「・・・そうだ。どこの国からも救いがないいま、侵略するしか生きる道はないんだ」

「・・・」

「だから・・・決して負けられない!」

俺に斬り掛かってくる。

「・・・」

「せいあっ!!」

キィン!

俺は受けとめる。剣はさっきよりもかなり重たい・・・

 

悪いけど・・・

「どんなに正当化しても、侵略はしちゃいけねぇよ。侵略が、悲しみを生むだけだってくらい、知っているはずだ」

「だが・・・そちらが戦って国民を守るように、こちらも戦って国民を守らなければいけない!」

「・・・」

ダメだ。この信念は崩せない・・・どうする・・・?

「・・・やめよう。もう」

「なに・・・?」

「君は負けた。降伏しろ。それに・・・仮に、こちらの国が勝って、そちらが支配されたとしても、絶対に今よりいい生活にしてみせるから」

「・・・ウソだ」

「・・・だよなぁ」

自分で言ったのに、ついそう思ってしまう。

あの王様からして、絶対にそんなことはしない。

「・・・おまえも男で、戦う人ならば、いい加減覚悟を決めろ!」

「・・・嫌だっつってんじゃん。なんでこんなくだらないコトで人を斬らなければいけないの?」

「・・・」

「すぐに仲良くってのは無理なんだろうけど・・・戦争を知らない奢りなんだろうけど・・・それでも嫌なんだよ。俺は・・・絶対に」

「信念のないヤツはひっこんでろ!!」

グググ・・・

剣がじりじり押されてくる。

「俺の信念は・・・」

パキィンッ!!

「人を殺さねーことだよ!!」

「なっ・・・剣が折れた・・・?」

「・・・戦って人を殺すのも力なら・・・人を殺さない力だってあるはずだ」

「・・・」

女は折れた剣を見ながら俺の顔もみていた。

「だから・・・降伏してくれ」

「・・・剣がないのではどうしようもない・・・か」

「・・・」

俺は黙って縄でしばりあげる。

「・・・ふぅ」

俺は汗をぬぐうと、ふっと力が抜けた。

「あ・・・れ・・・?」

俺はそのまま倒れていく・・・。

 

 

 

 

 

「はっ!!」

「気が付いたか?」

「・・・メシフィアのおばさん?」

ボゴッ!

思いっきり頭を殴られた。寝起きなのに・・・。

「誰がオバサンだ!?」

「あ・・悪い」

俺は目をあけたばかりだと、シパシパして人の顔にはシワが見えるのだ。

「どうだ?体は」

「別になんともない・・・ってなんで俺着替えてるの!?」

「汗でびっしょりだったからな。着替えさせた」

「・・・メシフィアが?」

「そうだが?」

「・・・もうお婿にいけない」

「お婿?」

「いや、このギャグは通じなかったか。それで、俺は一体・・・?」

「要塞の中で倒れていたんだ」

「ああ・・・」

「しかし、よく生きていたな」

「え?」

「おまえが降伏させた女はあっちの国ではナンバー4と言われている女だ」

「・・・別にどーでもいいよ。彼女が生きてさえいれば」

順位が何位だろうと、生きていればそれでいい。

「・・・彼女に傷ひとつなかった。どうしたんだ?」

「・・・俺は人を斬らない。それだけだよ」

「・・・その甘さ、いつか命を落としかねないぞ?」

俺に何かを伝えようとしているみたいだが、俺の答えは決まっている。

「いいよ・・・人を殺すより何十倍もマシだ」

「・・・まぁいい。今日のトコロは休め。明日おまえに表彰があるからな」

「・・・辞退できないの?」

「できないな。なんせ功労者だから」

「・・・わかった。看病してくれて、ありがとう。メシフィア」

「ああ。それじゃな」

俺はしばらく天井を見つめていた・・・。

「もう一眠りしよう」

考えるのは、後でいい・・・。

 

 

 

 

 

「では、その栄光をここに讃える」

「・・・」

俺は黙って賞状を受け取る。ちっとも嬉しくない。

「おぬしならやってくれると思っていたぞ」

今すぐこの賞状を破りたくなるが、我慢した。

「はい・・・」

「元気がないな。どうした?」

「・・・いえ、なんでもありません」

「そうか。では、しばらく休暇をやろう。城下町でも見てくると良い。そこで、守りたい何かが見つかることを祈っているぞ」

「・・・はい」

 

 

 

 

 

俺は部屋に帰って賞状を投げると、剣に話し掛けた。

「なぁ」

{なんだ?}

あの女の顔が浮かんで、のどまで来ていた言葉が下がってしまった。

「・・・やっぱなんでもない」

{あの女の信念か?}

「・・・あそこまで国のタメを思ってた女を・・・国をなんとも思ってない俺が降伏させた・・・明らかに・・・おかしいよな」

{・・・おまえは一昨日ここへきたばかりだ。仕方ないさ}

「・・・」

{城下町でも言ってこい。気晴らしになるぞ?}

「・・・ああ」

 

 

 

「あれ?メシフィア?」

メシフィアが城の外へ出ていった。俺は気になって後をつける。

 

 

 

 

 

 

「・・・ここは?」

俺は看板を読む。どうやら、孤児院のようだ。

「・・・メシフィアが、なんでこんなところに・・・?」

俺は中を覗く。すると、メシフィアが封筒を女の人に渡していた。中にはどっさりとお金が。

「・・・」

女の人はメシフィアにお礼を言っているみたいだ。

(なんとなく・・・わかったかな?)

話が終わって出てくると、メシフィアは子供に囲まれた。

「・・・」

「どうです?」

「うわっ!」

例の二人の時の女の、メシフィアじゃないほうがいた。

「あのメシフィアを見て」

「・・・優しそうですね」

メシフィアの笑顔は、見たことがないほど眩しかった。

そして・・・孤児院の子供たちも。

「でしょう?あれが・・・メシフィアの本当に守りたいものなんですよ、それじゃ」

「・・・あれが・・・か」

俺はそのまましばらくその様子を見ていた。

「お兄ちゃん、どうしたの?」

「・・・え?」

いつのまにか、俺の近くに一人の子供がいた。

「ウチに何か用なの?」

「あ、君もここの?」

「うん。いまお買い物に行ってたんだ」

「お、偉いねぇ。ところで、あのメシフィアってお姉ちゃんいるじゃない?」

「うん!」

「あの人って、いつもここにくるの?」

「うん!そうだよ!お姉ちゃんは、ここにいたんだって。それで、今はこの国で一番強いって言われてるんだよ!スゴイでしょ!」

「・・・そうだね」

(へぇ・・・メシフィアって・・・孤児だったんだ・・・)

「それで、お兄ちゃんは?」

「あ、ああ・・・俺は通りすがりだよ。メシフィアの知り合いってところ」

「そうなんだ!じゃぁ入って!」

「え?」

「お姉ちゃんの知り合いなら、いいの!」

「・・・」

俺はそのまま孤児院へと入れられてしまう。

(っ!)

ふっと昔の光景とダブった・・・

 

 

 

「お姉ちゃん!次はボク!!」

「はいはい、順番ね」

「お姉ちゃん!」

「あ、・・・え?」

俺の姿を見た途端にやわらかかった表情がかたくなった。

「よっす」

「なんでケイタが?」

「・・・イロイロありまして」

「お姉ちゃんの知り合いって言ってたよ!」

「そう。ついてきたのね?」

「・・・あははは」

俺は笑ってごまかした。

「まぁいいわ」

「・・・あ、自己紹介しないとね」

俺は子供たちの視線に気付いた。ここは一発、かましてやるか!

「えっと、王国の雇われ侍、大川啓太と言います。ちなみに、メシフィアの恋人ですから、これからよろしく!」

 

 

「「「「「えええええ!!?」」」」」

子供たちが一斉に叫ぶ。これだから人をからかうのはやめられない。

 

「ちょ、何言ってるの!?」

「軽い冗談だってば」

「お姉ちゃんの恋人だって!」

「ねぇねぇ、お姉ちゃんのどこが好きなの!?」

「あわわわ?」

ヤバい・・・相手は子供だった。本気にされてしまったぞ?

「どこが好き・・・と言われても・・・さっきの笑顔、かな?」

「っ!!」

その言葉に顔を赤くするメシフィア。相当見られたのが恥ずかしかったらしいな。

「お兄ちゃん遊んでー!」

「おう!なんでもこい!!」

 

 

 

 

 

「ふぃ・・・」

子供たちは全員遊び疲れて寝てしまった。

「元気な子たちだったなぁ」

「全く、変な冗談かまさないで」

「・・・でも、さっきの笑顔ってのは本当さ」

「え?」

「メシフィアでもあんな顔するんだなって・・・なんだか、守りたい物があることが、どれだけ重要か・・・わかった気がする」

「そうか・・・」

「だから・・・俺も何か見つけないとな」

「頑張って」

なんだか冷たい言い方。でも、どこか優しさを感じた。

「・・・さてと」

「もういくの?」

「・・・ああ。子供たちにはよろしく言っておいてくれ」

「・・・わかった」

「メシフィア」

「うん?」

「・・・サンキュー」

「・・・」

俺は城へと帰る。

 

 

 

 

 

今日、俺は出番がない。メシフィアは関所の防衛に行ってしまった。まぁ、初心者の俺に気を使ってくれたんだろうけど。

 

『まだ初陣を飾ったばかりだ。少しは休め。しばらくしたらとことんコキ使われるのだからな』

 

「・・・ふぅ」

{どうした?}

俺のため息に反応して、剣が語りかけてきた。

「なぁ剣よぉ・・・メシフィアは強いんだな・・・」

{ああ。なんせ国のナンバー1らしいからな}

「・・・そうじゃなくってさ。そんな立場になっても大事なコトを忘れていないっていうか・・・」

{・・・正確には、思い出させた・・・じゃないか?}

「え?」

{少なくとも、最初に会ったメシフィアはおまえを簡単に殺した。でも、今は違う・・・それは、おまえとの出会いがあったからじゃないか?}

「・・・違うよ。俺が人を殺さない方が良いって言うのは・・・俺に覚悟がないからなんだ」

{・・・}

「その人の命を断つってことは・・・それだけの重みを背負うコトになる。その人の夢、理想、信念・・・それが・・・俺は恐いんだ」

{・・・そうか}

「そうして・・・人の屍に足を置くことが・・・俺にはできないんだ・・・」

 

ガタガタッ!

 

「ん?何かあったのかな?」

ドアの外でざわめきが聞こえる。

{行ってみるか}

「そうだね」

俺は剣を持った。

・・・そうだ。

「ねぇ、剣っていうのは呼びにくいから、なんか名前ないの?」

{カノンだ}

「カノン?大砲?」

{意味は・・・そのうち教えてやる。神剣・カノン。それが名前だ}

「んじゃ、これからはカノンってことで。よし!」

俺はドアを開けた。すると、傷を負った兵士が倒れていた。

「ど、どういうことですか!?」

「おお!そなたは城にいたのだな!」

「こんな傷を負ってるなんて・・・急いで治療室へ!」

「は、はい!オーカワ様!」

別の兵士が兵士をおぶって消える。

「どうしたんですか?タダごとじゃないみたいですけど」

「実は、メシフィアの守っていた関所が落ちた」

「!!」

目の前が一瞬ブラック・アウトした。

なんだって・・・?

「つ、つまり・・・メシフィアは・・・?」

「いや、死んではおらん。だが、兵士の報告によると、捕虜となっているようだ」

「・・・そもそも、メシフィアは簡単には負けないはず・・・」

あの鬼神のような強さはこの大陸・・・まだよく知らないが。の中でもあれだけ強い人は数少ないんじゃ・・・?

「情報によると、孤児院の子供が数人人質としてとられたそうだ」

「!!」

あの孤児院の子が・・・!?

「昨日の夜に、スパイらしきものが誘拐したらしいのだ。それを見て、メシフィアは・・・」

そこから先は言うまでもない。

「・・・卑怯な・・・」

「・・・行ってくれるか?もはや、おぬししかおらぬ」

「・・・はい!」

俺は飛び出す。いてもたってもいられなかった。

 

 

 

メシフィアの安否・・・それ以上に、誘拐して人質にするなんて卑怯なコトをした、相手を許したくなかった。

「カノン!なんとか急いでいく方法はないのか!?」

{あるぞ}

「なにぃ!?」

俺は城下町を出たところで急に止まった。

「そーいうことは早くいえ!!」

{関所とは、おぬしが捕まったところだろう?}

「そうみたいだね」

{なら、ワープができる。青い部分に触れて、関所をイメージしろ}

「了解!」

俺はカノンの青い部分に触れながら、関所をイメージする・・・。

 

 

ブゥゥン!!

 

 

「!!」

気が付くと、その関所の近くの林にいた。

コソコソしながら様子を伺う。

「・・・門番が多いな」

{ああ。まさか10人もいるとは}

「・・・やっぱり・・・今度ばかりは人を斬らないと・・・いけないのかな・・・」

{・・・いきなり気落ちか}

俺の気分の落下速度に呆れるカノン。

「・・・相手はメシフィアも倒すような怪人・・・適うかもわからない相手に殺さないは・・・無理なのかも・・・」

{・・・迷っていると、メシフィアも子供も死ぬかもしれないぞ?}

「!!」

そうだった・・・。

{迷っていて、大切な物を失ったと気付く場合はたくさんある。そして、確実に後悔する・・・。ならば、やるしかないだろう?}

「・・・ふぅ・・・はぁ・・・ふぅ。よし、行こう!」

俺は何度も深呼吸して、気持ちを抑えた。

{おう!}

俺は林から駆け出る!

「ぬっ!敵だ!迎撃しろ!!」

「邪魔だぁぁぁ!!!」

向かってくる人たちの真横を通り過ぎる。ブシュゥッ!!

「・・・こ、殺した・・・?」

俺の体には、返り血がたくさん・・・いや、大丈夫だ。動けない程度の傷だ。

「・・・」

俺は右手を握り締めて、足を動かした。後悔は後だ!まずは・・・助けるんだ!